第4話 悩みの種
「おはよっ」
//寝起きの人に声をかけるように
「君、ドライヤーしとったらベッドに持たれたまま寝てったんやに?」
「やでブランケットかけて寝かしておいてあげたん。ちょっとでも疲れを癒してほしかったから。て言っても10分くらいしか寝てないんやけどね」
「ほんま寝とる時の表情赤ちゃんみたいやったに?」
「よく眠れ待ちたかー? オムちゅ交換しないと行けませんねー。お腹ちゅいちゃったかなー?」
「俺は赤ちゃんじゃないって言われても、寝とる時の表情は赤ちゃんそのものやったし説得力ないわ」
「……あ、赤ちゃんはさ、ドライヤーの音がお母さんのお腹の中で聞いた血液が流れる音に似てるから安心して眠っちゃうみたいなんやけど……」
「あ、あのさ、君、疲れてるみたいだしゆっくり休んでほしくて……」
「君が赤ちゃんやないってのは理解した上でなんやけど……」
「んっ。きょ、今日だけは抱きついてきていいよ」
//SE 両手を広げる音
「え、ちょ、ちょっと⁉︎ 『何やってんの?』みたいな目で見つめんといてくれん⁉︎ 私はただ君に疲れを癒してほしかっただけやのに……」
//涙目になりながら
//SE 聞き手が話し手に抱きつく音
「……ふふっ。そうそう。最初からこうして抱きつかれておけばええの」
「私の心臓の音聞こえると安心してまた眠ってまうかもやけどね」
「こうして抱きついてると本当に赤ちゃんみたいに見えてくるわ」
「どう? 少しはこれで疲れ取れそう?」
「ならよかった。今日君を家に呼ぼうって思い付いたんは私が君を癒してあげたいと思ったからやでさ」
「あ、あとはまあこのまま君が自分の家に帰っちゃったら? 明日には予備の補聴器とか? 新しい補聴器買ってくるかもしれへんし?」
「そうなると近づく口実がなくなってまうから……」
「……」
//恥ずかしく申し訳ない感じ
「な、なんでもない! 今のは忘れて!」
//焦って聞き手から離れる
「と、とにかく、普段からそんなに元気なタイプではないんやろうけど、いつも以上に元気が無いように見えたし放ってはおけやんやろ?」
「まあとりあえず安心たわ〜。君に元気がないと私も元気なくなってまうしさ」
「それにしても君、撫でがいのある頭してるね」
「なんかこう、ずっと撫でてたくなるというか……」
「ん? どうしたの?」
「え? クラスメイトと上手く話せない?」
「……そっか。君、昔から人と話すのは苦手やったもんね」
「だから私が一緒に帰ろうって誘おうとしても1人で先に帰っちゃってたんや」
「大変やったなぁ……」
//SE 頭を撫でる音
「でも私と話す時は普通に話せるんやし、緊張してるだけやと思うんやけどなぁ」
「……こ、こんなことするの、君にだけなんやからね」
//SE 頬にキスする音
「キ、キスしてあげれば元気出るかなって……」
「ほっぺにキスするくらいなら付き合ってなくてもするよ。ほら、外国の人だって、出会ってすぐ抱きついてほっぺにキスしたりしてるでしょ?」
「あれ、顔赤くない?」
//SE 聞き手の額に話し手の額が当たる音
「も〜暴れんといてよ。危ないやんか」
「まあとりあえず夏はなさそうやね」
「……元気出して。私が付いてるから」
//そっと抱きしめる音
「って言っても簡単には無理やろけどさ」
「君が誰かと話すのを得意にはしてあげられんけど……」
「ずっとそばにいることはできるから」
//恥ずかしさと真剣さが入り混じるように
「これまでもずっと一緒におろうとしたんやに? でも君が逃げ回るから話しかけることもできんかったんよね」
「でもこれからは私がずっとそばにいる」
「学校で1人になって居場所がない時は私のところに来ればええし、家で暇してる時はいつでも電話で呼びつけてくれてええよ。そしたらすぐ飛んで行くから」
「呼ばれたらまたこうして抱きついて頭撫でてあげるし、ほっぺにキスだってしてあげる。それで君が元気出るならお安い御用だよ」
「やから安心して、気楽に学校に来てほしいな」
「『なんでそこまでしてくれるんだ』って言われても……。君、自分自身の魅力に気付いてないの?」
「確かに内気で人と話せないっていう欠点はあるけど、それ以上に誰にでも優しくできるし」
「顔も自分が思ってる以上にかっこいいと思うに? 髪型とかしっかりしたらイケメンの部類に入ると思う」
「私は好きやけどなぁ。君のこと」
「ち、違うで⁉︎ す、好きっていうのは好きになってもおかしくないっていうだけのことで……」
「--あ、ま、まだ髪の毛乾ききってないね! ドライヤーの続きするね!」
//SE ドライヤーの音
「……君はさ、好きな人とかいるの?」
「……へぇ。いないんだ。そっかぁ。そうなんやぁ」
//嬉しそうに
「べ、別に⁉︎ ただ純粋に気になったから聞いただけやに⁉︎」
「え、私⁉︎ 私は別に好きな人なんておらんで⁉︎」
「か、かわっ……。べ、別に私は可愛ないよ。」
「私の話なんてどうでもいいの!」
「そんなことよりさ、君に近づきながら話す体勢が結構えらくて疲れちゃって……。ベッドに寝転がらへん?」
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