第3話 ドライヤーと声の音
//SE 扉が開く音
「ドライヤー持ってきたで〜」
「お風呂気持ちよかった?」
「今日が偶然ママもパパも家におらん日でよかったわ。おったら来づらかったやろ?」
//SE ベッドの前に座る聞き手に近づく
「あ、でもおらんかったらおらんかったで気まづいか」
「2人きりになってまうでね」
//耳元で囁くように
「ふふっ。まあ緊張せんと気楽にしとってくれたらええよ」
「少し顔色よくなった? ちょっとは疲れが取れたみたいで安心したわ」
「あれ、ちゃんと髪の毛拭いたん? 結構濡れとるやん」
「ちゃんと拭かんと風邪ひいてまうに?」
「ドライヤーする前にタオルで拭いとくね」
//SE タオルで頭を拭かれる音
「自分でやるって、そんな余裕ないやろ? ええよ。これくらい私がしてあげるで」
「なんかあれやね、いくら幼馴染とは言っても男の子が自分の部屋におるのってなんか変な感じやわ」
「--ちょっ⁉︎ その話は掘り返してこんといてくれん⁉︎ 小さい頃に一緒に入ったお風呂の記憶なんてあってないような物やん!」
「そ、そりゃ裸見られてるって事実の方が私の部屋に君がいることよりもよっぽどまずい事実ではあると思うけど」
「……」
//恥ずかしそうに
「よ、よし! じゃあドライヤーしてあげる!」
「いいのいいの。ドライヤーってずっと腕上げとかんとあかんで結構えらいやろ? 疲れが溜まってる君にそんなことさせるわけには行かんから。私が乾かしてあげる」
「ふふっ、やった」
「コロッケのふぅーふぅーもそうやったけどさ、私がお姉ちゃんごっこにハマっとったで君の髪よう乾かしとったよね」
//SE ドライヤーの音開始
「年齢が同じやのに姉ちゃんごっこっていうのも辺な感じやとは思うけど」
「どう? 幼馴染にドライヤーしてもらう気分は」
「恥ずかしくなんてないやん。私と君の仲なんやし、気にしすぎやに」
「それこそもう裸も見せ合っとんのに、ドライヤーしてもらうくらいで恥ずかしがらんといてよ」
「まあ私は君とならもっと恥ずかしいことしてもいいと思っとるけどね」
//揶揄うように
「ふふふっ。そんなに驚かんでもええのに〜」
「でも嘘じゃないよ? 私、君となら……」
「ね、ねぇ知ってる⁉︎」
//一つ前の発言を濁すように
「ドライヤーの音ってホワイトノイズって言って、泣き叫んでる赤ちゃんに聞かせてあげると安心して眠ってくれるんだって」
「一回赤ちゃんで試してみたいよね。本当になるのかどうか」
「ま、まあ赤ちゃんなんてまだまだ先の話だし⁉︎ いつになるかなんて分からんけどね⁉︎」
「……」
//焦りながら聞き手の反応を伺う
「……ん?」
//SE ドライヤーの音が止まる
「おーい、聞こえてますかー。おーい……」
「君は赤ちゃんじゃないですよねー。じゃあドライヤーなんてしながら眠るはずないんですけどー……」
「え、もしかして本当に寝ちゃってる?」
「ドライヤーの音めっちゃおっきくてうるさいやろうに、それでも眠たくなっちゃうくらい疲れとったんやね」
「ボロボロになるまで頑張れるのは君の良いところやけど、ボロボロになるまで頑張りすぎるてまうんは君の悪いところでもあるんやに」
「とにかく今日もよくがんばりました。今は何も考えずに、ゆーっくりねてね。おやすみなさい」
//SE ブランケットがかかる音。
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