第2話 コロッケの味と昔の記憶

「2人でこの商店街くんのも久しぶりやね」

//SE 商店街の屋根に雨が打ちつける音


「昔はよく2人で遊びに来とったよね」


「見て見て。ほら、あそこにある駄菓子屋さんとかめっちゃ懐かしない?」

//SE 肩を叩く音


「なんか昔の記憶が蘇ってくんなぁ」


「……」

//感慨深い感じ


「今日はそこの肉屋でお肉買ってきてってお願いされとんのよ」

//SE 肉屋を指差す音


「そこの肉屋にもよく行っとったよね。従業員のおばちゃんにコロッケとかもらってさ--っておばちゃん⁉︎」

//SE おばちゃんの声がかすかに聞こえる


「えー久しぶりですね! ほら見て! めっちゃ手振ってくれとるんやけど! 懐かしいなぁー! ちょっと私おばちゃんと話してくる!」

//SE 話し手が肉屋の方に走って行く音


「お久し◯りです‼︎ 覚えとっ◯くれたんですね〜!」


「でしょで◯ょ? 自分でもこ◯なに美人になるなんて思ってなかったし」


「冗談に決◯ってるじゃないですか〜」


「はい! 昔よく2人で来◯ました! まさか覚えとってくれとると思ってま◯んでしたよ〜」


「え、彼◯? 違◯ますよ〜。まあ近い将◯そう◯ったら嬉◯いなぁ〜、なんて思っ◯りはしてますけどぉ〜」


「はいっ! 頑張ります!」


「え、コ◯ッケくれるんですか? 高校生にもなって申し訳◯いですけど……。お言◯に甘えていた◯きますっ!」


「あ、あとお母◯んから豚のこま切れ買ってくるよ◯お願いされたので、それも200グラムお願◯します!」


「い、いいんですよぉ〜、持っ◯帰るのは男やなくて豚のこま切れで!」

//困った感じで


「はい! 次はカッ◯ルになってから来ますね〜!」


「これ、見て! おばちゃんがくれたん! ほら、君もちゃんとお礼して!」

//SE 話し手が聞き手の元に戻ってくる足音


「ふふっ。久しぶりやったけどやっぱ優しいおばちゃんやったな〜。コロッケ貰っちゃったし」


「ふ、普段は買い食いなんてしてないもん! だからそんな急に太ったりしやんし」


「まあ仮に食べたとしてもその脂肪は全部胸に行くでええけどね!」


「ほら、見てよ。私の胸、大きくなったと思わん?」

//SE 胸を寄せる音


「ほらほら〜。そう目を逸らさずに〜」

//肘でグリグリされる音


「ってかさ、私の体重気にするんって好きな人に太られたら困るからちゃうん?」


「どしたん黙り込んで〜。まさか図星だったりして〜?」


「……」

//聞き手の反応を伺う


「……え、な、何そ、そのっ。そんな急に顔赤くされると流石に反応に困るんやけど」


「えっ? おばちゃんとなんの話をしてたかって? そ、それはまあ……内緒、かな」

//イタズラっぽく耳元で囁く


「内緒ったら内緒。別に悪口言ってたわけやないから安心して。むしろ逆っていうか……」

//声が少しずつ小さくなっていく


「な、なんてもない!」


「そ、それよりおばちゃん、私たちのことカップルに見えたみたいやに?」

//イタズラっぽく耳元で囁く


「あっれぇ? そんなに顔赤くしてどうしたんかな〜? もしかして恥ずかしいんかな〜?」


「ってごめんごめん。ほら、冷める前にコロッケ食べよ?」 

//SE コロッケと袋が擦れる音


「これ食べたら元気100倍やに」

//耳元で囁くように


「ってか傘も持ってカバンも持っとったら手塞がってて食べれやんやん。一旦そこのベンチに座って食べよ!」

//SE ベンチに座る音


「はぁ疲れたー。てかまだ結構熱いねこのコロッケ。ふぅー、ふぅー」

//SE コロッケを冷ます息が若干耳にかかる。


「え、『何してるんだ⁉︎』って、冷ましてあげてるんだけど?」


「ふぅー、ふぅー」

//吐く息が耳にかかる


「別に遠慮せんでもええよ。私がちゃんと冷ましたるで」


「あっ、ちょっとなんでコロッケ取り上げるん⁉︎」


「それくらい自分でできるって……まあそれもそっか。もう高校生なんやしね。君と一緒におったら昔よくお姉ちゃんごっこしとったん思い出しちゃって……。つい昔みたいにふぅーふぅーしちゃった」


「君が猫舌やから、コロッケ食べる時は毎回私がふぅーふぅーして冷ましとったやんね」


「え、覚えてない? ……ふふっ。まあそういうことにしておいてあげる」

//本当は覚えていることに気付いている


「それじゃ食べよっか」


「あーんっ……んっ、ふっ……熱っ」

//アツアツの物を食べるように


「うわっ、このコロッケの味懐かしーっ! これ食べたら余計に昔のこと思い出してまったんやけど!」


「コロモはサックサクやし中はアッツアツでめっちゃ美味しいわぁ」


「そういえば昔から本当の兄妹みたいってよく言われとったよねぇ」


「まあ私は兄妹じゃあ物足りんって思ったったけど」


「……」

//聞き手の反応を伺う


「さぁ、どういう意味でしょうか」


「ふふっ。誰かが今の私たちを見たらさ、おばちゃんみたいに兄妹やなくてカップルやって思うんが普通やろね」


「……ねぇ、今からうちこやへん?」

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