耳が悪い僕の耳元で方言幼馴染がわざとらしく囁くお話
穂村大樹(ほむら だいじゅ)
第1話 びちょ濡れの君
//SE 雨の音
「え、ど◯たんこんなと◯ろでそ◯なビチョビ◯ョんなって」
//SE 大雨の中を車が走る音
「大◯夫? ちょっと動◯んといてね」
//SE 水溜まりの中を歩いて近づいてくる音
//SE ハンカチで顔を拭く音
「あー……。ハン◯チじゃ全然拭き取れそうにないなぁ」
「……」
//困った感じ
「なんでそんなビ◯ョビチョんなったん? 普通雨降っとるからってそ◯なビチョビチョんなら◯くない? なんかあったん?」
「え? 何◯れ」
「ゔわっ。も◯かして"補聴器"壊◯とんの?」
「うわ〜。そ◯は最悪やわ……。それ壊◯とるってことは私の声かなり聞き取りず◯らいんとちゃう?」
「やっぱそや◯な……。もちろん予備の補聴器なんて持ってないよね?」
「そっか……。なんにも聞◯えんまんま1人で帰るのも危な◯やろうし……」
「……」
//恥じらう感じ
「しゃーないで耳元で話したってもええよ?」
//SE 腕にギュッとしがみつく音
//耳元で囁くように
「だって遠くで話してたら聞こえづらいんやろ? やったら近づいて話すしかないやん」
「え、近すぎる?」
「……もしかして私が君にしがみつくと濡れちゃうから、そうならないよう配慮してくれとるん?」
「変わってないね。昔から」
「……」
//優しく微笑むように
「でも大丈夫やに? まだ濡れてない部分の方が多いけど私も大雨の中歩いてたからもう結構びちょびちょっ--」
//SE 車が水溜まりに入りしぶきを上げる音
「……」
//びちょ濡れになり思わず固まる
「うわぁ〜〜最悪やぁ〜〜。靴の中までビッチョビチョなんやけどぉ〜」
「君だけやなくて私までビチョビチョになるとかあり得やんくない?」
「あっ、でもこれでもう君がビチョビチョなせいで私まで濡れちゃっても関係なくなったね。もうどっちもビチョビチョやしっ」
「えっ、これでも近づいたらあかんの?」
「じゃあ私が近いか、声が聞こえないか、どっちの方が困るん?」
「……」
//若干の怒り気味で
「でしょっ。だから君は大人しく私に近づかれといたらええの」
//SE 腕に強くしがみつく音
「それで、君はなんでそんなビチョビチョやったん? 傘も持っとるし雨に降られただけやったら普通そこまでビチョビチョにはならんくない? 今みたいに車に水かけられたん?」
「え、そんなベタな展開2回連続で起こることある⁉︎」
「ちょっと何その呆れ顔っ。別に君が水に濡れとるって意味のベタベタとありきたりとかって意味のベタを掛けたわけちゃうんやけど‼︎」
「でもまっ、君に近づけるんは私得ではある◯やけど……」
//少し小さい声で
「って今の聞こえとった⁉︎」
//SE バッと腕から離れる
「嬉し◯てつい本音がスラス◯と……」
「ってごめ◯‼︎ 離◯たら聞こえづら◯やんね‼︎」
//SE 再び腕にしがみつく
「もう離れやんから」
「……」
//真剣に
「何照れくさそうにしとるん? 昔はよく2人で遊んどったんやしそんなに恥ずかしくもないやん」
「というかそんな恥ずかしそうにされるとこっちまで恥ずかしくなるんやけど」
「昔はこんなに恥ずかしくなることなんてなかったのになぁ……」
「……」
//恥ずかしそうに
「でも久しぶりやね。こうやって2人で一緒に帰るん。君、いっつも1人で先に帰っちゃうから……」
//若干間が空く
//SE 傘に雨が打つ
「『俺といたら迷惑』って、そんなわけないやん‼︎ むしろ私は毎日一緒に帰りたいくらいやのに……」
//話し手が聞き手に詰め寄る音
「ってまた私何か言っとった⁉︎」
//SE バッと腕から離れる
「よ、良かったぁ。聞こえとらんくて」
「あ、ごめん。また離◯ちゃっとるね」
//SE 三度腕にしがみつく
「……君さ、なんか元気ないことない? 嫌なことでもあったん?」
//顔を覗き込むように
「……」
//不安そうに
「『別に』って、絶対嘘。何かあった時の顔しとるやん」
//SE 歩みが止まる
//真剣な表情で聞き手を見つめる
「私ね、前から気になっとったんよ。君の表情が毎日少しずつ暗くなっていくん」
「私たち幼馴染なんやし何話してくれてもいいんやで? 君が困っとんなら力になりたい」
「……」
//真剣に
「……ごめん。別に無理して聞きたいわけやないからさ。話したくないんやったら無理せんでええよ。また話したくなった時に話してくれれば」
「幼馴染って言っても私たち、話すのかなり久しぶりやしね」
「なんかまた雨酷くなってきた? ねぇ、ちょっとそこの商店街寄ってかん? お母さんにおつかい頼まれとってさ」
//SE 雨音が強まる
「丁度えらくなってきたとこやったし、雨宿りがてら1回休憩しよ?」
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