取材で聞いた話
正直、学校の怪談ってどれも似たりよったりなものじゃない?音楽室に飾られてるベートーヴェンの肖像画がどうの〜とか、理科室の骨格標本がどうの〜とか。どこの学校にもあるよね、そういうもの。うちの母校の小学校にも、そういうものがあってさ。トイレの花子さんも、もちろんいて。うちの母校の場合、珍しいタイプの花子さんがいたと思うんだよね。
私にも理由は分からないんだけど、トイレに行く前に、なぜか「こっくりさん」をやらなきゃいけないの。うちの母校では、こっくりさんで花子さんを呼び出して、トイレに行ってもいいか聞かなきゃいけないっていう伝統があって……。誰が最初にやりだしたのか、本当に分からないんだけど、そういう決まりだったんだよね。それで、花子さんが「トイレにきてほしくない」って答えたら絶対に会いに行っては駄目で、花子さんが「トイレにきてもいいよ」って答えたら絶対に会いに行かなきゃいけないってなってたんだよね。まぁ、アポ取りしといてやっぱり行きませんじゃ、花子さんじゃなくてもお
そうそう、言ってなかったね。うちの母校の小学校、小学校のわりには規模の大きい学校だったからさ、北校舎と南校舎があってね、校舎同士が廊下でつながってたの。上から見ると、アルファベットのHみたいな――アルファベットって大文字の方ね、大文字のHみたいになってて、花子さんが出るトイレは南校舎の二階にあるトイレなんだけど。花子さんにアポ取りするためのこっくりさんは、別にどこでやってもいいらしかったんだけど、アポ取りしてから五分以内にトイレに行かなきゃいけないっていうルールがあったからさ、みんな、必然的にトイレの近くにある教室でこっくりさんをするようになってたのよ。あ、言っておくけど、こっくりさんはこっくりさんで「十円玉から指を離しちゃいけない」みたいな、よくあるルールで
それでさ、もし「トイレにきてもいいよ」って返事がきて、トイレに行くとするじゃん?トイレに行った後の礼儀作法は、他の学校にもあるような「一般的な作法」でいいのよ。トイレ(個室)の戸をノックして、声をかける――みたいな。そんな感じでいいのよ。
私もね、何回か友だちに誘われて、花子さんのアポ取りをしたことがあったのよ。でも、ほとんど駄目で。十円が全く動かないもんだから、適当にこっくりさんを終わらせて、さっさと帰ってたんよ。ただ、一回だけさ、十円玉が「はい」の方に動いたから、トイレまで行ったことがあったんだよね。
あの時のメンツはね、全員同じクラスの友達で、私・
「トイレにきてもいいってなったけど、花子さんに話しかける人、決めてなかったよね。誰にする?」
「あー、あたしが行くよ、笑美ちゃん。何回か、別の子とこっくりさんしたことあるけど、十円玉すら動かずに終わったからさ。花子さんに会いたい気持ちがちょっとあるんだよね」
「ありがとう、
そんな話をみんなとしつつ、トイレまで行って、私が花子さんに話しかけたんだけどさ。最初は無音だったよ。そりゃそうなんだけどさ。もし誰か(生きてる人間)がいたらまともな返事が返ってくるでしょ。なんにも音――声すら返ってこないから、返事ないねーなんて言いながら、もう一回、個室の戸をノックして花子さんに話しかけたんだよね。
そしたら、個室の中で、なにか聞こえてきて。その場にいた全員が「耳鳴りかな?」って疑うレベルで、ボソボソと個室からなにかが聞こえてきて。なんだろう?って、みんなで耳を澄ますと、クスクスと笑う女の子の声だったのね。てっきり、別のクラスの子が偶然トイレに入ってて、それを知らない私たちと遭遇したんだと思ってさ。驚き半分、安堵半分で「ちょっとーやめてよー(笑)」なんて四人で言いながら、個室の中の子に声かけたのよ。でも、相手は相変わらずクスクス笑うだけで、顔を出すわけでもないし、なにか喋るわけでもないし。トイレ中にノックしちゃったのは申し訳なかったんだけど、笑い声だけだと、ちょっと不気味なのね。私たちの間で変な空気が漂っちゃったから、個室の中の子には「トイレ中にごめんね」って謝罪をしつつ、このまま家に帰ることを伝えて、本当に家に帰ったのよ。
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