男友達から聞いた話

 実体験の怖い話ってめったにないんだけどさ、俺、一回だけに会ったことがあるんだよ。小学校の高学年の時、下校中に友達の雨森あめもりと二人で道を歩いてたら、知らん男(当時で三十代前半ぐらいの見た目だった)に果物ナイフっぽい刃物で襲われかけて。運よく、俺らがいた場所が住宅街だったから、なんとか近くの家に逃げ込んで事なきを得たんだけど。その日さ、その不審者に襲われたことも怖かったけど、朝からちょっとだけ不思議なことがあったんだよね。心霊系になるのかどうかは分からないけど、よかったら聞いて?

 その日はさ、朝、目が覚めた時からずっと耳鳴りがひどくてさ。ほら、よくあるキーンって鳴る金属音みたいなやつ。普段は耳鳴りなんて起きないのに、目が覚めてからずっと「なんか五月蠅うるさいなぁ」なんて思ってて。でも、耳鳴り以外で変わったことなんてないからさ、普通に学校に行ったの。同じクラスの友達には、世間話として耳鳴りの話をしてたんだけど、そのかんずっと耳鳴りがまなくて。気になるっちゃ気になるけど、熱があるわけじゃなかったから、まぁいいかって思って普通に授業を受けたり、休み時間に友達と遊んでたりしたの。それでさ、なんだかんだ昼休みになって、雨森と一緒に校庭に出た時だよ。どっからともなく猫の声がしてきたんだよね。結構、大きい声(しかもだみ声だった)でみゃあみゃあ鳴くからさ、ビックリしちゃって。雨森に聞いたんだけど、は?って返されて。それはそれで驚いちゃって。聞こえない?って反論したんだけどさ、アイツはアイツでそんなもん聞こえんの一点張りだし。まぁ、あの時はそもそも耳鳴りがひどかったからさ、俺の調子が悪すぎるんかなー?って。子どもなりに納得するしかなかったんだけど。

 その後、結局、普通に五~六時間目の授業を受けて普通に帰るんだけど、帰る途中で雨森と二人でに襲われかけちゃうんだよね。あ、そうそう、話してるうちに色々と思い出してきたわ。たしか、下校時間になった時だよ。帰る準備が終わって、雨森と校庭に出た時だよ。校門の方に、見たことのない三毛猫が一匹だけ座ってて。首輪をつけてなかったから、たぶん野良猫なんじゃないかと思うんだけど(首輪がついてないタイプの飼い猫だったらごめん)、俺らの方をすっごい見るの。ガン見ってああいうのを言うんだろうな、って思うほどのガン見をしてくるわけ。だから、直感的に「昼休みに聞いた『あの声』はアイツのだな」って思ったのよ。


「なぁなぁ、校門のところに猫がいるの分かる?」


「はぁ?また?変なこと言わんといてくれん?猫なんて見えねーよ」


「あぁ、ごめんごめん。もしかしたら耳鳴りのせいで頭おかしくなったかも」


 そんな会話を雨森としたんだけど、あれ結局なんだったかなー?っていまだに思うんだよね。あれから結構な年月が経ってて、今の俺、たぶんと同い年(同い年というか同世代)ぐらいになってるからさ。たぶん二十年ぐらい経ってるのよ。でも、いまだに謎。そうそう、耳鳴りはだけだったし、猫もだけだったんだよね、見かけたのが。あれ、本当になんだったんだろうなーって思うんだよね。

 あ、待って待って、不審者がどうなったか話してないよね?普通に逮捕されて、たしか……医療刑務所だっけ?普通の刑務所じゃなくて、訳アリの犯人が行く刑務所。あそこに収容されたんじゃなかったかな?なんか、俺らのことを人間じゃなくてに見えてたっぽくて、その動物に対して殺さなきゃってなってたんじゃなかったかな?俺らは俺らでめちゃくちゃ怖い思いしたから、犯人には償ってほしいんだけど、俺らを人間には見えなかったって普通じゃないからさ。そういう「特別なとこ」に入れられるのはしゃーないんじゃない?まぁ、あの時は死人が出なかったから、そう思えるのかもしれないんだけど。こんなとこかな、実体験の怖い話って。

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