学校の怪異
佐伯眞依
HN『猫ちゃん』さんによる、ブログ記事
ある休日のこと。趣味のひとつである、動画投稿アプリでの動画視聴をしていた時のことだった。私は動画の中でも「怖い話を朗読する動画」を視聴するのが好きで、この日もそういう系の動画を見ていたのだが。ある動画で語られていた話が、私が過去に体験した話と似ていたため、ふと自身の小学生時代のことを思い出すのだった。
そもそも、どういう内容の動画だったのかというと、とうに成人した主人公が自身の小学生時代を回想しながら話を進めていく話である。簡単に言えば「学校から帰宅してすぐに学校に忘れ物をしていることに気づいた主人公が、帰宅して早々に学校まで走っていったら校舎の中で奇妙な体験をした」という、正直なところ怖いかどうか微妙なラインの怖い話なのだが、私にも似たようなことがあったなぁ……と、動画を見てふと思ったのだ。
あれは確か、私が小学校二年生の時だったと思う。今の私はとうに成人しており、社会人になってだいぶ年数が経っているため、あの時のことが少し曖昧になってしまっているのだが(非常に申し訳ない)。あの時の私も、朗読動画で語られていた主人公のように、学校から帰宅してすぐに忘れ物をしていることに気づき、わざわざ学校まで忘れ物を取りに行ったのだ。小さい子が一人で学校まで戻って大丈夫なのか?と思う方がいるだろうが、幸いにも自宅と学校との距離が非常に近かったため、家にいた親に事情を話し、自分一人で学校まで急いで行ったため心配する必要はないのである。
学校に着いてから、まだ職員室に残っていた先生方に事情を話して校舎に入れてもらい、帰る時にも職員室に顔を出すという約束をしつつ(たぶん『勝手に帰るな』という忠告も込めた約束だったのだろうと解釈している)、私は一人で教室に行ったのだが。教室の中に入った途端、理由は分からないが、なんかこう――ほんの少しだけ模様替えをしたような違和感があるのに気づいたのだ。誰もいないが、誰もいないこと以外はいつもの教室であるため、子どもなりになにかの間違いだろうと感じた私は、さっさと忘れ物を持って家に帰ろうと自身の席まで行ったのだが、やはり、なにか妙な違和感を覚えるのだ。別に、たいしたことのない、普通の机だ。机の中をのぞくと、私が忘れたものが普通に入っているし、ぱっと見、いつも私が利用している普通の机なのだ。もしかして私自身になにか問題があるのかと心配になり(風邪でも引いて体調が悪いのかと子どもなりに思った)、急いで忘れ物を手に取り、教室の出入り口に向かったのだが、やはりなにかがおかしいのだ。
なぜか、教室の出入り口から先にいけないのだ。出入り口の戸は、私が教室に着いた時にはすでに開いていて(たぶん換気のために職員が開けたのだろうと思っている)、私は戸を開けっぱなしにした状態で教室に入り、開けっぱなしのままなっている戸から出ようとしているのにも関わらず、なんかこう――目には見えない壁があるような閉鎖された感覚に襲われてしまって廊下に出られないのだ。どうしよう……と悩んでいたら、後ろから急に声をかけられた。
「もう!
声の主は、同じクラスのさっちゃんだった。私の苗字が
「うちも忘れ物をして、猫ちゃんより先に教室にきたんよ。そしたら、猫ちゃんが後からくるもんだから、声かけたんよ。でも、猫ちゃんはうちを無視してさっさと帰ろうとするし。やめてほしいわ、ほんとに」
「ごめんね、さっちゃん。私、もしかしたら体調が悪いんかもしれん……。さっきから、なんか分らんけど変なのよ。でも、声をかけてくれてよかったわ。さっちゃんありがとう」
小さいなりに適当な嘘をつきつつ、さっちゃんと仲直りをしながら各々の家に帰ったのだが(もちろん学校を出る前に職員室に寄った)、さっちゃんの「無視しないでよ!」の一言以降なにもなく今に
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