第6話 演習場(立ち入り禁止区域)

 あれから一週間経ち、授業で基本スキルを学びつつ放課後には弾を撃ち続ける日々、ちなみに的はなんとか貫けるようになった、そして今日は演習場での訓練だ、演習場は案外近くにありここは山全体が演習場だそうだ、山を5階建ての家ぐらいの高さの壁で囲まれている。

 全員集まるまで待っていると最初に櫻さんが来た。


「おはようございます九郎くん」


「おはよう櫻さん」


 ニコニコしながら櫻さんが挨拶してくれた、あれからちょっとは距離が縮まった気がする。

 しばらくすると詩織もやって来た。


「おはよう櫻、ついでに九郎も」


「あぁ」


 詩織はあれから櫻さんと親友ぐらい仲がいい、お前は距離を縮めすぎだ!と言いたいくらいだ。


「何が「あぁ」よ!ちゃんと挨拶してるんだから挨拶しなさいよ!」


「あぁ」


「あー!もうムカつく!櫻!あんな男は女の敵よ!敵!」


 それはそういう事をした奴に言うセリフだろ、後櫻さんを巻き込むな!


「フフ2人とも仲が良くていいですね」


「「仲良くない!!」」


これじゃ仲良くみえるじゃねーか!


「フフフフ」


 櫻さんが笑ってるのを見て俺も詩織もどうでも良くなった。

 すると後ろからコツコツと足音が聞こえる、振り返るとやっぱり先生だった


「全員揃っているな」


「「「はい!」」」


「今日の授業は演習場での実技訓練だ、ここは演習場と書いてあるが実際には立ち入り禁止区域だ、魂生こんせいがこの区域内で繁殖しているから気をつけろ、それと目標討伐数は5体とする」


 前の授業で習った、魂生はテロ組織や国家が生物に対して魂の解放をするという悪趣味な実験により生まれた、魂生の強さは兵級、下士官級、尉官級、佐官級、将官級に区分される。

 ゲームでいう魔物みたいなものだ、そして繁殖力が高く、厄介なのが魂生は魂生を食べる事で強くなるため、全てを駆除するのが難しく定期的にある程度殺さなければならない。


「入ってからは一切油断をするな!手助けはしない!目標討伐数まで出る事はできないと思え!死にそうな時以外は助けないからな!分かったな!」


「「「はい!」」」


 これだけ念入りに注意喚起をするという事は相当危険な場所だと分かる、立ち入り禁止区域の時点である程度は覚悟していたけどそんなになのか。


「では演習場に入る!すでに警戒しておけ!」


「「「はい!」」」


そして演習場を囲っている壁をくぐる。


「スゲー」


 その先には普通の山の森というより海外にあるジャングルに近いような気がする、実際に行ったことはないけど、とにかく圧巻の景色が広がっていた。


「すごいね詩織ちゃん」


「そうね櫻」


 いきなり目の前の草むらからカサカサと音が鳴ったそれと同時に3人は戦闘態勢に入る、一応先生は少し離れた所で見ているらしい。

 すると角の生えた兎が出てきた。


「「可愛い!」」


 何言ってんだ!明らかに目が威嚇してるだろ!

 そしてもの凄いスピードで櫻さんに向かって跳ぶ。


「危ない!」


 櫻さんの前に立ち武器の短剣で角を受ける、何とか攻撃を耐えた。


「結構な力がある、2人とも戦闘態勢に入ってくれ」


「分かったわ」


「分かりました」


 2人ともさっきは可愛いと言いつつも今はちゃんと戦闘態勢に入った。


「2人とも身体強化もするぞ」

 

 身体強化とは授業で習った基本スキルの一つだ、魂力を身体に循環させる事で身体を強化できる。

 すると兎がぴょんぴょん跳ね出してあちこちにある木と木の間を高速で跳び回っている、跳ぶ回数が増えるごとにスピードが上がっている。


「準備オッケーだよ九郎」


「此方も準備完了しました九郎さん」


 準備が完了したその瞬間、兎が俺の方に向かって跳び、その兎の角が俺の頬を掠め血が垂れる。どうやらあの兎は俺を狙ってるらしい、そしてまたさっきと同じように木と木の間を跳び回っている。


「俺の後ろに隠れてくれる」


「何でよ」


「的が1つに絞れるから」


難癖つけてくるから簡潔に理由を言った。


「分かったわ」


「分かりました」


 2人とも承諾してくれた、そして短剣を鞘に戻し兎がこっちに跳ぶのを待つ。


「さっさとこいよこの間抜けな兎が!」


 そう煽ると伝わったのか、すぐに俺に向かって跳んできた。


「くらえ!『衝撃波インパクト』!」


 兎の横顔に向かって殴った、そして兎に対してカウンターする形で倒した。


「何今の?九郎あんた何かしたの?」


「何であんなに吹き飛んだんですか?」


「あれは放課後先生に習った基本スキルの衝撃波だ」


 簡潔に説明すると、触れた場所に魂力を流し込み体の内側にも衝撃がきて絶大なダメージを与えられる、比較的銃弾より簡単で覚えやすかった、そういうと。


「今日から私も放課後残ろうかな」


「私も今日から放課後残ります」


 そうだった、2人とも俺とは違って軍人になる為に入学してるんだった。


「それより先に進もう」


 そして俺たちは森の中に入り、残りの4体を詩織が2体、櫻さんが2体とも倒して演習場を出たら先生が待っていた


「目標討伐数はクリア、見た感じまだ荒いが全員センスはある、それでは今日はまだ早いが解散だ」

 

 やったー!これで帰れると思い力を抜くとドッと疲れた、だが帰ろうとすると。


「また帰ろうとしてるな」


「今日ぐらいは勘弁してください!」


「だめだ、他の2人はやる気なのにお前は情けない」


 2人はやる気満々な表情でこちらを見ている

 そして俺は服を掴まれ引き摺られながら、地獄という名の模擬戦闘室に入った。




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