第2話
「まぁ一度見てみませんか」
少年はそう言うと足を二度踏み鳴らした。床に映像が映る。
「なんで、どうして」
「気づいてあげられなくてごめんね」
泣いているのは両親。良い思い出など一つもなかった両親。貧しくて、子どもより自分を優先し常に顔色を伺う日々だった。そんな両親が泣くのか…?
「あなたと和解したかったようですよ。仕事もみつけ、自立の道を進み落ち着いたらあなたに連絡しようとしていたようです。もう少し生きていれば、違う未来があったのですよ」
少年はまた足を二度、踏み鳴らした。
「あいつはやればできるやつだった。だから厳しくしてしまった。あいつがいなくなって初めて必要な人材が分かったよ」
今度は会社の上司だ。顔を見ると、ひやりと汗をかいてしまう。必要な人材?ふざけるな恨んでも恨みきれない位、私は壊されたというのに…
「あなたに対する態度が会社で問題となったようですよ。今では反省し、あなたが必要だと気づいたようですね。まぁあなたは許せないでしょうが…彼もあなたによって、変わろうとしているのでしょう」
なんなんだ。今まで憎んで、憎んで仕方なかった奴らが掌を返したように嘆き悲しんでちる。
「あなたがどれ程苦しかったか、理解してもらえたのでしょう。あなたがもう少し生きていれば、両親との仲は縮まり、働く場所もあったかもしれない。このように、先の未来に期待せず自ら終わらせる方がいるんです。あなたは特にもったいなかったですね」
少年は私の目をじっと見て、静かに告げた。
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