命再生法

第1話

もう全て終わりにしたい。残業してもこなせない仕事量、人格否定の言葉を浴びせられる日々に心のバランスを崩してどれ程になるだろう。

もう無理だと退職したものの、新しい仕事はみつからず貯金の残高も底をつきそうだ。

早く、早く、早く楽になりたい。

私は目をつぶり、紐に首をかけた…

…ふと目を覚ます。失敗か？

「こんにちは。あなたは無事に成功しましたよ」

声をかけてきたのは少年だった。白い肌に金色の髪。昔読んだ絵本に出てきた天使によく似ている。ということは天国か？でも少年はスーツを着ており、会社を少し思い出して何とも言えない感情が沸き起こる。

「ここは、天国でも地獄でもありません。ちなみに私も天使ではありませんよ」

心が読めるのか？私はぼーっと少年の顔を見ていた。

「私は案内人です。近年、あなたのように自らの命を断つ方が多く、天国も地獄も満員なのです。これにより、神が『命再生法』というものを制定いたしました。一度のみ、生き返る権利があり、生き返った後は二度と自ら命を断つことができません」

『命再生法』？そんなもの必要ない。もう生きたくないから、自ら…

「まぁ皆さん最初はこのままでと、おっしゃるんです。ですが、少しあなたがいなくなった世界を見てみませんか？普段ならなかなかない機会ですよ」

いなくなった後の世界？そんなもの見たって未練などないのだが…