ライトノベル年表

1975年 集英社がコバルト文庫を創刊。同時期に朝日ソノラマ社が朝日ソノラマ文庫を創刊。この年がライトノベル元年となる(この時代は主に女子向けからスタート。ただし男子向けも朝日ソノラマ文庫から小説版『宇宙戦艦ヤマト』が発刊しているため男子向けラノベも同年をスタートとみなす)

1976年 横溝正史氏が朝日ソノラマで『幽霊鉄仮面』を発刊

1980年 コバルト文庫にて異色のSF作品『星へ行く船』(新井素子著)が発刊

1981年 赤川次郎氏がコバルト文庫から『吸血鬼はお年ごろ』を発刊。累計970万部突破

1982年 『幻獣少年キマイラ』が朝日ソノラマで登場。ライトノベルでかつ継続シリーズで同一著者の中では最古参となる。『銀河英雄伝説』登場。累計1200万部突破(第19回星雲賞日本長編部門受賞)

1983年 『吸血鬼ハンターD』登場。海外分含め累計1700万部突破(発刊継続中)

1984年 『ぼくらの七日間戦争』登場。ラノベ初の累計2000万部突破。後に映画化

1986年 『アルスラーン戦記』登場。31年かけて完結。累計部数820万部

1987年 『創竜伝』登場。『アルスラーン戦記』と並行連載し33年かけて完結

1988年 『ロードス島戦記』登場。累計1000万部突破

1989年 ゲームノベルにしてライトノベルである小説版『ドラゴンクエスト1』大ヒット

1990年 「ライトノベル」という概念が誕生(なお、この年をライトノベル元年とする研究者もいるが無理がある。一説によるとニフティーサーブの掲示板にて「『ロードス島戦記』は『ライトノベル』である」という語を使ったのが発祥とも言われている:諸説あり)。同期時には『スレイヤーズ』も登場。累計2000万部突破

1992年 『十二国記』登場。累計1200万部突破。ラノベと一般文芸との境があいまいになった

1993年 『電撃文庫』創刊。ライトノベル専門雑誌『ザ・スニーカー』創刊。この年を持って「ライトノベル」の語が社会でも固定化する(それまでラノベは「ヤングアダルト」や「ジュブナイル文学」と言われていた)

1994年 電撃文庫が第1回『電撃ゲーム小説大賞』を公募。ライトノベルの公募の時代が本格化する。『魔術士オーフェン』登場。累計1400万部突破

1995年 『タイム・リープ あしたはきのう』刊行

1996年 出版市場額がピークを迎える

1997年 深夜アニメが一般化する(ラノベとのメディアミックスも始まる)

1998年 『ブギーポップは笑わない』登場。セカイ系作品がラノベにも浸透。一方でコバルト文庫から『マリア様がみてる』シリーズが発刊し百合ブームも登場した

2000年 この頃からオタクが社会から許容される

2002年 萌えブーム登場。一方で『陰陽ノ京』が発刊

2003年 『涼宮ハルヒの憂鬱』が登場。ハルヒシリーズは累計2000万部突破。宮部ゆみき氏が『ブレイブストーリー』を発刊(2008年ミルドレッド・L・バチェルダー賞受賞作品)

2004年 『とある魔術の禁書目録』登場、累計1800万部。この年から正式にライトノベル市場額が把握されるようになる

2005年 携帯小説ブーム到来。セカイ系ブーム消滅

2007年 朝日ソノラマ廃業。朝日ソノラマの版権が一旦親会社である朝日新聞社出版部へ移動

2008年 朝日新聞社出版部が朝日新聞出版社として子会社化し朝日ソノラマの後継企業となる

2009年 ラノベ市場の第一ピーク年にしてラノベ市場最高額を記録した。『ソード・アート・オンライン』登場。オンラインゲーム世界が舞台の小説が本格化。累計2600万部。『陰陽ノ京』がメディアワークス文庫創刊と同時に移動しライト文芸へ移動

2011年 『ビブリア古書堂の事件手帖』登場。ライトノベルから分離するジャンルとなる「ライト文芸」を出版各社が発表しライト文芸ジャンルが正式に誕生した。

2012年 文庫版ラノベ市場額がピークを迎える。異世界転生バブル発生。『十二国記』が新潮文庫nexへ移動しライト文芸にジャンル変更、『薬屋のひとりごと』発刊。累計2400万部売上

2013年 『安達としまむら』発刊。後に大学入試問題にも採用される作品となる

2014年 『転生したらスライムだった件』発刊。漫画を除くと推定累計部数2000万部にして世界展開で大ヒットしたラノベとなる

2015年 集英社コバルト文庫が集英社オレンジ文庫に名称変更。同時にジャンルもライトノベルからライト文芸にジャンルを変更。これにより今まで集英社コバルト文庫で発刊していた『吸血鬼はお年ごろ』シリーズもライト文芸に変更となった(33巻目から集英社オレンジ文庫での発行となる)。なおこの年以後累計1000万部以上突破する新作ライトノベルは発刊されていない(2023年現在)

2016年 ラノベ市場の第二ピーク年。『ゴブリンスレイヤー』が発刊し累計900万部突破

2018年 異世界転生バブル崩壊

2019年 初めて1997年以来下落し続けた出版市場額下落が止まり反転した(電子漫画市場額の拡大による)

2022年 『タイム・リープ あしたはきのう』がメディアワークス文庫へ移動

2025年 ライトノベル登場から50年(半世紀)経過


※1:我が国は1974年に高校進学率90%超を達成し「青年時代」を誰もが享受できるようになった。筆者はそれが1975年に「ライトノベル」(=青年用軽文学)が誕生した素地だったと考える。なお、1973年10月に発生した第1次オイルショックにより1974年は戦後初のマイナス成長年となった。ゆえに1974年というのは高度成長期が終焉した年でもありいろんな意味で社会が変化した年と筆者は考える。

※2:横溝正史氏(1902-1981)は『八つ墓村』(1949)や『犬神家の一族』(1950)などであまりにも有名な推理作家だが晩年はなんとライトノベル作品を発刊していた。1995年にはスニーカー文庫でも複刊している。確かに1967年に横溝正史氏がポプラ社で『幽霊鉄仮面』を発刊しているが2回もラノベのレーベルで発刊している以上、『幽霊鉄仮面』はライトノベル作品である。つまり『幽霊鉄仮面』は児童文学→ラノベという経歴をたどっているのだ。なお横溝正史生誕120年記念復刊として角川書店から2022年に『幽霊鉄仮面』を複刊している。

※3:筆者は『グインサーガ』シリーズをライトノベルとはみなせなかった。仮に『グインサーガ』シリーズをライトノベルに含む場合は1979年登場にして累計3600万部を誇る我が国を代表し同時に史上最高の売上額を記録したライトノベルとなる。著者の栗本氏は2009年に死去したが五代ゆう氏、宵野ゆめ氏が遺志を引き継ぎ『グインサーガ』シリーズの執筆は続行している。

※4:コバルト文庫は女性向けなのでSFジャンルが売れること自体が異例です。

※5:『銀河英雄伝説』は徳間デュアル文庫でも発行されたのでラノベである。

※6:『ぼくらの七日間戦争』は角川文庫なので一般文芸の文庫から登場したがライトノベルとみなす。のちに児童文学レーベルのつばさ文庫版でも発刊する。

※7:1984年はそのほかにもコバルト文庫で『なんて素敵にジャパネスク』(氷室冴子)がヒットし累計890万部も売り上げている。『なんて素敵にジャパネスク』は後に児童書版としても発売されることとなった。1984年は『宇宙皇子』も発刊され累計1000万部突破を記録している。そう考えると1984年という年は「ラノベ躍進年」と言っていいのではないかと考える。

※8:『アルスラーン戦記』はカッパノベルスからの発刊であるが拙著はライトノベルとみなす。『創竜伝』はYA!ENTERTAINMENTへ移動したのでラノベである。

※9:小説版『ドラゴンクエスト1』より前に1988年に『イース 失われた王国』(飛火野耀著)が角川文庫から発刊されていることが分かり小説版『ドラゴンクエスト1』はゲームノベライズとして初ではないことが分かった。なお拙著の言う「ゲームノベライズ」とコンピューターゲームのノベライズの事を意味する。

※10:1989年にはファンタジア大賞が創設され第一回の準入選作品がかの『スレイヤーズ』である。しかしラノベの公募が一般化するのは電撃大賞の登場まで待つことになる

※11:なお1990年は他に特筆すべきことがある。『炎の蜃気楼』(コバルト文庫)が人気となり「歴女」ブームを起こした。かつ『炎の蜃気楼』は「BL」ジャンルで異例のベストセラーという偉業を成し遂げた。累計発行部数680万部。

※12:1988~1996年は『ロードス島戦記』や『風の大陸』や『十二国記』のほかにも『卵王子カイルロッド』、『魔術士オーフェン』、『クリスタニア』といった本格ファンタジーラノベ全盛期時代とも言ってよい。

※13:『マリア様がみてる』シリーズは本編が2012年に終了、スピンオフ作品である『お釈迦様もみてる』も2013年に終了しギリギリオレンジ文庫に移動出来ずに終わってしまったためにライトノベル扱いとなった。2作品合計で累計560万部突破。

※14:『ブレイブストーリー』はスニーカー文庫でも発売されていたのでライトノベルとみなす(後につばさ文庫でも発刊された)

※15:朝日ソノラマの廃業に伴い『キマイラ』シリーズ及び『吸血鬼ハンターD』シリーズも朝日新聞出版へ移動となった。なお『キマイラ』シリーズは角川文庫でも後に発売された。

※16:筆者はライトノベルとライト文芸は別物と考える。

※17:当然のことながらアニメノベライズならすべてライトノベルとは限らない。例えば幼年向けアニメのノベライズの場合は「児童文学」となる。

※18:『安達としまむら』は2022年の東海大学・国語の入試問題に採用された

※19:旧コバルト文庫で発刊された作品のすべてが「ライトノベル→ライト文芸に移動」したわけではなく『なんて素敵にジャパネスク』(故・氷室冴子著)のように児童書版でのリメイクもあるので注意。ただし集英社オレンジ文庫でも『なんて素敵にジャパネスク』を再販した場合は『なんて素敵にジャパネスク』を筆者はライトノベルからライト文芸にジャンル変更したものとみなす。また旧コバルト文庫のみでの発行物の場合は拙著は「ライトノベル」とした。なおコバルト文庫は2019年から電子版のみの販売となったがその電子版もオレンジ文庫での再出版があまりにも多いので拙著は「2015年に集英社コバルト文庫は集英社オレンジ文庫に名称変更し、ジャンルも同時に変更した」ものとみなした

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