あとがき

あとがき

 どうだっただろうか。これでもかと常識を覆す内容だったと思う。でも私は基礎統計しか出してない。つまり創作論を書いてる人って恐らく基礎統計すら読めてない&見てないんだろうなぁと。

 また「ラノベ元年は1976年であり女子読者層からラノベ市場が拡大した」という当たり前の歴史にも驚いたことだろう。残念なことに男子ラノベ読者勢は80年代に一大市場を築いたコバルト文庫や朝日ソノラマ文庫の存在すら忘れているのであろう。よって歴史を捏造したことに関してもここでもう一回抗議をする。もう一回言うがラノベ元年は『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ』が出た1990年~1991年ではない。ちなみに「男子向けラノベ元年」とは筆者は同じ1975年に創刊した朝日ソノラマ文庫版・小説版『宇宙戦艦ヤマト』と推測する(アニメ版の外伝になる)。その後『宇宙皇子』(1984)や『ぼくらの7日間戦争』(1984)や『アルスラーン戦記』(1986)や『風の大陸』(1988)と言った大ヒットラノベ作品が男子向けでも登場する。1989年には『小説版ドラゴンクエスト1』がハードカバー本で登場する。『小説版ドラゴンクエスト1』が日本初の大ヒットとなったゲームノベライズ本にしてラノベ本である。だから「1990年がラノベ元年」とか言ってしまう人はラノベ年表すら見てないのだろう。おそらくこういった人たちは「氷室冴子」や「正本ノン」や「田中雅美」や「久美沙織」や「夢枕獏」といった偉大なラノベ作家群の名前すら頭から抜けているのだろう。1980年代ともなるとラノベ市場はもうそれなりに大きかったのだ。だからまとめサイトなんて信じるな。

 これらの事実を考えるとラノベ市場とは1980年代に急伸し、出版不況と共に一旦は低迷した。そこで打開策として2002年に萌えブームで反転したものの性的に過激だったためアンチも発生したことで2010年以降は凋落した。そこでさらなる打開策として2012~2016年に異世界転生プチバブルを起こしたが全盛期の市場額にまでは到達せず2018年に異世界転生プチバブルが崩壊して2022年にはとうとう2007年頃の市場額にまで戻ったというのが真相と私は考える。つまりラノベ市場推移というのは三つの山があった歴史のはずである。


 なお毎年ラノベ文庫市場は-15億から-20億円も下落しているのでよっぽどのミラクルヒットが起きない限りピーク時の約10年後にラノベ市場は半減する。たとえラノベ単行本市場が横ばいで推移したとしてもラノベ文庫本が壊滅的な以上よっぽどこのことが無い限り「市場半減」予測は覆らない。


 まもなくライトノベルというジャンルは50年という歴史を迎える。もう誕生して半世紀を経ることになる。この50年のラノベの歴史が今……最大のピンチを迎えている。


 で、このあとがきってほぼタイトルしか見てない人に警告するために書いたようなもんだけど「ほらみろ、2026年になったけどラノベ市場は半減してないぞ」って僕に反論して来たらそれはそれで「ちゃんとこの創作論読んだ?」って言い返したい。だってそうなった場合はごくごく一部の高級ラノベ本がごくごく一部の人に売れてるからラノベ市場の崩壊を防いでいるだけという結果になっただけだよ。大多数の人はラノベを見捨ててしまった後の状態なんだ。で、より高級路線を突き進んでラノベ市場を維持するようになったら、それもう一般ラノベ読者はもう本という紙媒体ではラノベを読めなくなるって意味だよ? かといって廉価版のラノベ文庫市場は崩壊した後だし、ラノベ電子市場は全く言っていいほど浸透してない。つまりこのタイトルの内容が外れてもバッドエンドなのよ? その後に待ってる市場ってどういう姿だと思う? 想像して。そして書籍化作家のスタートはもっと地獄になるんだよ? 


 私はね、そういう不健全な状態はどう見ても長くは持たないと思ってるのよ。そして私からお願いがあるんだ。子供(厳密には女子中・高・大学生と男子中学生)の手にラノベ文化を返してほしい。そういう願いも込めてこの創作論を執筆した。そうしないと本当にラノベの書き手が居なくなるよ。だってよく考えてみて? 中学生・高校生のお小遣いで1冊1500円もするライトノベル本買える? 高校生や大学生のバイト代で稼いだお金で1冊1500円もするライトノベル本買える? これに消費税を払うんだぞ?


 お願いです。価格も中身も子供の手にラノベを返してあげてください。そうすればラノベ市場も復活するから。

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