子供の頃の思い出

Unknown

子供の頃の思い出

 2023年6月18日の日曜日。久し振りに自分の車を運転して出かけた。その際に流れる風景を見て気付いたのだ。俺が子供の頃から通っていたバッティングセンターが潰れ、完全に更地になっている事に。


 俺は郷愁の念に駆られた。


 あのバッティングセンターは子供の頃よく父と一緒に行ったからだ。休日、父の運転する車の助手席に乗り、ぼーっと左側の車窓の景色を眺めていた。その際に俺は、電線に透明の小人を走らせて遊んでいた。車の中ではEXILEかGLAYのCDが流れている。バッティングセンターで父にバッティングを教えてもらいながら打ちまくり、帰りの車の中では疲れて眠っていた。バッティングセンターにあった自動販売機のアイスクリームがうまかった記憶がある。チョコミント、チョコクッキーあたりが好きだった。


 俺が大人になって引きこもりニートになってからも、時々あのバッティングセンターには足を運んだ。やっぱり野球をやっていた頃に比べると全く打てなくなっていた。


 初めて父とキャッチボールをしたのは6歳くらいの時だった。父がボールとグローブを俺に買ってきたのだ。父の夢は、息子とキャッチボールすることだった。のかもしれない。


 チームに所属して本格的に野球を始めたのは9歳の頃だ。友達に誘われて始めた。そこから高校まで野球をやった。自分でも俺は野球部に向いてる性格じゃないと思っていたが、やってて楽しいと感じたスポーツは野球だけだった。


 精神科病院に入院していた時、俺はよく自分の部屋でプロ野球を見ていた。あれは2020年の春〜夏のことだ。あの時はコロナが流行り出した年で、プロ野球の開幕がかなり遅れた。普通は3月の下旬に開幕するのが、6月の中旬くらいだった気がする。


 子供の頃の俺の夢はプロ野球選手だった。父親と巨人戦をテレビで見ていた時、「将来はプロ野球選手になりたい」と言った記憶がある。父は「ヤンキースの松井秀喜みたいなバッターになれ」と笑いながら言った。俺ならなれそうな気がした。でもなれなかった。


 そして現在。俺は、作業所や単発バイトの日を除いて、毎朝アパートで大谷翔平の試合を見ている。


 大谷をつまみに飲む缶チューハイがこの世で1番うまい。俺の幸せの一つだ。


 人間、絶対に叶わない夢もある。そもそも俺は野球が上手くない。中学時代は副キャプテンで4番バッターだったが、高校では、ほとんど試合に出た事がない。


 今からジャニーズに入れと言われても無理だし、ハーバード大学に入れと言われても無理だ。パイロットになれと言われても無理だ。それと同じでプロ野球選手になるのも無理なのである。


「精神障害者」である俺が常人として生きるのも、おそらく不可能だ。というか、常人になる気は全く無い。俺は俺のまま生きて、俺のまま死んでいきたい。誰に左右されることもなく。


 叶わぬ夢は沢山ある。


 叶いそうで叶わない夢も沢山ある。


 例えば、俺は今すぐ彼女を作って一緒にカラオケに行きたいが、俺のことを好きになってくれる女の子はネット上にしか存在しません! ざんねん!


 だが、それでも幸せは存在する。本人が幸せだと感じたら幸せなのだ。


 穏やかな日々を送ること。それも大きな幸せのうちの一つだろう。


 明日の朝も俺は大谷翔平をつまみに缶チューハイを飲むだろう。そして細やかな幸せを感じるのだろう。


 この日本という国で俺みたいにだらだらしながら生きられるのは超幸せなことだ。


 日本の近隣国で言えば、北朝鮮の貧困層に住む農家なんて本当に悲惨だ。暇な人は調べてみてくれ。ロシアやウクライナとはまた違った辛さが北朝鮮という国にはある。


 日本は豊かで自由な国なのに自殺者が多い。悲しいことだ。たぶん日本は豊かだからこそ「こうでなければならない」みたいな意識が強いんだと思う。それに日本人は他人の目や世間体を本当に気にする。そもそも義務教育でそういう思想を植え付けるから、仕方ないと思う。


 自分は自分以外には絶対なれないんだから、どんなに失敗だらけの人生を送る羽目になっても「それが自分なんだ」って思った方が良い。


 他人にどう思われたって、それで死ぬことはないんだ。だったら他人にどう思われようが関係ねえだろうが。たった一度の人生、全てを燃やし尽くして自分の好きに生きろよ。輪廻転生なんて信じない。この人生に全てを賭けろ。燃えカスすら残らないほど燃えてやれ。来世に繋ぐバトンなんて、今世で燃やし尽くせ。俺達の心は死んでも、魂はまだ死んでないはずだ。


 俺は、発達障害に苦しんだ。精神障害者手帳と年金を貰っている。これが俺なのだ。恥じる事はない。自分を嫌いになるのはやめよう。


 俺の読者さんには、統合失調症に苦しんだ人もいるし、発達障害の人もいるし、パニック障害だった人もいるし、摂食障害だった人もいるし、躁鬱の人もいるし、引きこもりの人もいるし、解離性障害の人もいるし、他にも心を病んでいる方は多いし、シングルマザーの人もいるし、風俗で働いてた人もいたし、ほんとに色んな過酷な運命を背負った人がいる。


 本人からすれば死にたくなるくらい辛かった(辛い)と思うんだけど、俺からすれば「仲間が見つかってよかったな」って感覚だ。


 だから、あなたが病気であることや障がい者であることに感謝している。この世に仲間がいることが嬉しい。あなたが自殺に失敗して今日も生きてくれていることが本当に心から嬉しい。


 嫌味に聞こえたらごめん。でもこれが俺の本音。


 仮に、この世の全員が健常者だったら俺はこの世で独りぼっちだ。


 俺は、あなたが俺を観測してくれるから生きていられる。誇張なしで本当にそう思う。


 たかがネット上の儚い繋がりかもしれない。でも、みんな俺の仲間だ。みんなファミリーだ。いつか桜の咲く季節にみんなでビールでも飲もうや。花見しよう。来年の春まで生きよう。何も良いことなくても。


 俺は障害者だろうが健常者だろうが同情しない。全員を平等に扱う。俺は下手に同情されるのが1番苦手なんだ。だから、俺のことは同情しないでくれ。同情するくらいならバカにして笑ってくれ。


 女の子には、優しく頭を撫でられるよりも、激しくビンタされたい。あんたがいつも自分の体を傷つける分、いっそ俺のことを傷つけてほしいんだ。俺はMだからビンタされても笑うだけ。


 俺はそういう人間だ。


 なんか、今回は感動的な内容だな。全米大号泣間違いなし。ハリウッドで映画化決定。


 関係ないけど、俺がもし大学生だったら映画サークルに入ってみたかった。精神病院が舞台の、アングラな映画を作ってみたい。俺本人が精神障害者のメンヘラだから、そういう奴らを傷つけるような内容には絶対ならないと思うんだよな。


 俺の好きな映画の一部に、「カッコーの巣の上で」と「17歳のカルテ」っていうのがある。どっちも精神病院を舞台にした映画だ。


 やっぱり小説も映画も、気が狂ってる作品が1番おもしれえ。これはアカギっていう麻雀漫画のセリフの引用だが、「狂気の沙汰ほど面白い」






 終わり

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