第31話 終結


 着替えて鏡を見ると半分だけ白髪になっている。なんかカッコ悪いな。

「そんなことはどうでもいいか」


「転移」


「うおっ!団長じゃないですか?」

「こっちが心臓止まるかと思ったぞ!」

 ここは天幕の中らしい。

「身体は大丈夫なのか?」

「まぁまぁですよ、敵を蹴散らすくらいやってみせますけど?」

「そうか、キースがやられてな。いま治療中だ」

「そこに連れて行って下さい!」

「あぁ、最後に会いたいだろうからな」

 走って救護班のところへいくと、片足のないキースが笑っている。

「へへ。やられちゃったっすよ」

「エクストラヒール」

 包帯が破られ足が作られていく。

「え、えぇ?」

「ゴフッ!」

「お前!血を吐くほどの魔法を使うんじゃない!」

「ハル……」

「キースは大丈夫だな!ウェイドは?」

「あいつは頑丈さだけが売りだからピンピンしてるよ」

「あぁ、ハル、ありがとうっす」

「いいんだ、あっちが戦場だな!」

「やめろ!これ以上はいいから!」


「俺がこの戦争を止めてやる」

「ハル、お前」

「創造魔法、フライ!」

「おい、ハル!」


 俺は空を戦場に向けて飛んでいく。


「見えた、こっちが劣勢じゃないか!」

「古代魔法、タイダルウェーブ」

 大津波が敵を大勢巻き込んでいく。

「賢者様だ!」

「賢者様がきたぞ!」

「勝つぞこの戦!」

 劣勢だった王国兵が盛り返して来る。


「ガフッ!」

 持ってくれよ俺の身体!

 次はあっちか!

「古代魔法、タイダルウェーブ」

 

『うおぉぉぉおぉぉぉ!』

 押し流された敵軍に向かっていく王国兵達。

 これで、こちらが有利になっただろう。

「ふぅー。下に降りるか」

 フラフラと下に降り膝をついてしまう。

「お前何やってんだ!行くぞ!」

 ウェイドが俺を担いで天幕の方へと走って行く。


「す、すまないな」

「ふざけんな!俺達は勝手に戦争してんだよ!だれも渡り人のためじゃねぇ!」

 そうだよな、でも俺もやっぱこっちの人間なんだよ。

「団長連れて来た!」

「すぐに寝かせろ!馬鹿野郎!無茶しやがって」

 団長が机をベットとして使わせてくれる。


「有利になったろ?」

「あぁ、おかげさまでな!」


「ウェイド!この戦勝つぞ!」

「当たり前だ!」

 外に出ていく団長達はカッコよかった。


「さて、少し休んだらあと一仕事残ってる」


 外は沢山の魔法が飛び交い、剣の音が遠くから聞こえて来る。


「ハル!帝国が白旗をあげたぞ!」

「やったな!」

「あぁ!賢者様がいる俺らには勝てないと言う事だ!」


 白旗をあげるくらいなら最初からやるんじゃねえよ。


 だめだ、まだやることがあるのに目が霞んできやがった。


「団長、まだ、やることが」

「今は休め、これから戦後処理の話し合いだ」


 くそっ!一発殴りたかったな…


「ご主人様、アーン」

「アーム」

 またこれかよ?

 日常に戻ったが俺はまたベットの上でレーナにアーンを強制されている。


 帝国は無条件降伏、皇帝は失脚し奴隷落ちだ。一発殴りたかったな。

 王国は帝国を取り込んで大きくなった。がまだ戦争の傷跡はあちらこちらであるみたいだ。

「くそ!また取り逃がした!」

「最近は盗賊多すぎるっすよー」

「あいつら調子に乗ってるんだ、賢者がでてこないからってよ」

「うるせーよ!こっちは飯中だぞ」

「そうですよ、アーン」

「アーム」

 こいつら飯中でもお構いなしに上がって来やがる。


「だってお前はここにしかいないだろ?」

「俺たちが遊びに来るしかないっすもん」

「だな」

「遊びに来てんのかよ!」

「土産にお前の国の飯をくれ」

「俺がもらう方!ほれ!」

「おっ!ハンバーガーだ!」

「これ美味いんだよな」

 


 あの後のことは聞いた話しかない。俺は家に戻されるとベットでまた一週間寝ていたらしい。その間も団長達は動いていたらしく、敗残兵を逃さないようにしていたが、多くの敗残兵が盗賊化して国は荒れているらしい。


「さっさと盗賊捕まえに行ってこいよ!」

「飯中なんで!」

「静かにして下さいっす」

「だな」

「お前ら「アーン」アーム」

 だめだ、飯中は怒れないじゃないか!こいつら分かっててきてるな!


「んじゃ、ごっそさん」

「また来るっす!」

「だな」

「もう来んな!」

 やっと団長達が帰って静かに飯を食う。

「楽しいんですよ、ご主人様が元気になっていくのが」

「分かってるけどさ」

 本当めんどくさいっつーの!

「私は嬉しいですけどね、またこうやって世話が出来るのが」

「飯も自分で食えるんだけどね」

「アーン」

「アーム」

「私無しでは生きていけないんですから」

「……そうですね」

「イヤーん」

 頬に手を当てて真っ赤になるレーナが怖い。



「俺、復活!」

「ご主人様?無理はダメですよ?」

「はーい」

 ようやくレーナからオッケーをもらって家の中で普通に生活できるようになった。

「ふぃー、ソファーも久しぶりだな」

 あいつらがいたからソファーも狭かったけど、いまじゃ独り占めだからな。


 あいつらちゃんと頑張ってっかな?


「さて。俺も頑張るかな!」

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