第30話 ありがとう


 とりあえず場所を確認してレーナと一緒に「転移」

 ドラゴンの真ん前に出た。

「デス」

 ドラゴンは眠るように倒れている。

 バックにしまえると言うことは倒したんだろうな。

 また金品が溜まっているのでそれも根こそぎマジックバックの中に入れ、

「レーナ、手を」

「は、はい」

「転移」

 ギルドに戻って来た。

 鼻血は出て来てない。さすが魔力がSになっただけあるな!

 受付で、ドラゴン討伐依頼の完遂を報告すると、受付からギルマスに変わった。

「今回はこちらで解体できるのかな?」

「してもらえるならですけど、傷もないドラゴンですよ?」

「なに?ならオークションだな」

「ギルドにもオークション利用料として10パー貰うがいいかな?」

「それでいいですよ?」

「ならオークションまでそのドラゴンは持っていてくれ、というか一回見せてくれるか?」

 解体場に向かいドラゴンを出すと、歓声が湧き上がる。

「さすが、賢者様!」

「スッゲェな!」

 ギルマスも度肝抜かれたようだ。

「こりゃ国が買い取るかもな」

 竜の血なんかも薬になるとかで高値で売れるのでこんな傷のないドラゴンがいったいいくらになるかわからない。オークションは国が主催しているので今回のようなことは事前に王様に連絡しなければならないらしい。

「はぁ、これはオークションにならないかもしれないな」

「しゃーないよ。またあれば捕まえて来るから」

「あぁ、そのときは頼むよ」


 家に帰り、ドラゴン討伐の話で盛り上がる。実物は出さないから話だけだがみんな目をキラキラして聞いていた。

 俺のレベルも、


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 近藤 春こんどう はる21歳

 レベル90

 力 S

 体 S

 速 A

 知 S

 魔 SS


 スキル 創造魔法

 ユニーク 書庫の管理人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 これだけあればこいつらを帰すことができるんじゃないか?一回教会に聞きに行こう。


 西の帝国の動きも気になるが、別に関係ないだろ。と思っていたが。

「帝国から書簡が届いた。戦争になるぞ」

「なんで書いてあったんだ?」

「宣戦布告だ。そちらの勇者達を返せば問題にはしないとな」

「馬鹿な!渡り人だって人間だ。物ではないぞ」

「分かってる。だから戦争だと言ったのだ」

「くっそ、馬鹿なのか?帝国は」

「馬鹿なのだろうな」

 戦争だと!そんなの起こさせるわけにはいかない!

「俺が言って帝国の偉い連中を皆殺しに」

「それはいい!そこまでお前がすることない。こらは王国と帝国の戦争だ」

 


「俺達も戦うよ!」

「そうだよ!俺達のせいだろ?」

「ダメだ、お前達は帰るんだ」

「そんな…」

「お前達が帰るまで俺も手伝いに行けない。一回教会に行くぞ」

 教会に行ったら今度こそ帰って来れないかもな。

 レーナとミクスは団長に任せるように言ってある。団長ならなんとかしてくれるだろう。


 教会はいつもより厳かに見え、俺達が来るのを待っていたようだ。

「祈らせてもらうよ」

「はい、どうぞ」

 寄進は百万ゼル。ここは変えないでおく。


 膝をつき、四人で祈りを捧げる。


「ようやく来たか、なかなかレベルを上げて来たみたいだな」

 もう少し上げたかったけどそうも言ってられなくてな。

「我が支えてやる。おまえは三人の魂を帰すことだけに創造魔法を使え」

 あぁ。健太郎、冬夜、明那、お前達は無事帰れよ。


「転移」


 魂が戻っていくのが分かるようだ。


「「「ありがとう」」」




「ご主人様!」

「主!」

 二人が駆け寄ってくる。

 俺は前方に倒れ込んでしまったが意識はある。

「ご、ご主人様。髪が白くなってます」

 あぁ、それだけで済んだのか?神に感謝だな。

「だがら大丈夫っでいっだだろ」

「大丈夫じゃないじゃないですか!」

「無理ばっかして!主!」

 他の三人は影も形もない。

 ここにいた痕跡が無くなっている。

「ふぅ、ゴブっ!あはは、生きてるだけで大丈夫だ」

「血が!もう!ミクス!連れて帰るわよ」

「当たり前だ!死ぬなよ!主!」

「ヒール、ごれで、大丈夫」

「大丈夫じゃない!」


 帰してやれた。それだけで満足だ。


 俺はもう帰れないからさ。


 俺の分まで生きてくれよ?


 幸せにな。



「だっ!」と夢から目が覚めて横を見るとレーナが涙ぐんでいる。

「ご主人様!」

「主」

 二人とも近くに来る。

「あぁ、大丈夫だ」

「本当ですか?」

「あぁ、どれくらい寝てた?」

「一週間ちょっとです」

 今回は少なかったな、神様のおかげかな?

「ハイヒール、よっと、これで大丈夫だな」

「またそんな」

「まだ寝てなよ!今起きたばっかりだろ!」

「そんなに寝ていられないよ。戦争はどうなってる?」

「そんなこと関係ありません」

「主は自分の仕事をこなしたばっかりじゃないか!」

 そうだ、俺のやれることはやった。

「だが、まだやれることがある」

「ご主人様……戦争は始まってます」

「そうか」

「帝国が攻めて来て戦になっています」

「やはりな、もう準備してたんだろう」

「戦争は拮抗していますのでいまはゆっくりと」

「できない。俺の大事な友人が戦っているからな」

「私達は大事じゃないんですか!」

「そうだよ!主!私達もみてよ」

「負けたら終わりだろ?お前達の事も考えているに決まってるだろ」

「じゃあもう少しでいいんで休んでください」

「あぁ、じゃあすこしだけな」

 俺はベットに横になると、二人は出ていく。

「分かってるじゃないか」


 ありがとう。


「さてと、着替えて出陣だな!」

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