第23話 勇者


「なんで言わなかった?」

「言ったところでっすよ」

「まぁな、王様が言い出したんだから」

「なぁー!俺は賢者じゃねぇっつーの!」

「しょうがねーっす」

「だな」

 一般人を賢者と呼ぶなよ!目立ってしょうがないだろ!


「はぁ、もういいや」

「人間諦めが肝心っす」

「そうそう」

 喋りながら家に着く。

「んじゃまたくるっすね」

「またな」

「おお!ありがとう」

 外から帰ると、

「「お帰りなさいませ、ご主人様」」

「ただいまぁぁ、もしかしてレーナ達も賢者って知ってた?」

「知ってましたよ?」

「あれだけ盛大に公表してたらみんなしってるよ」

 あぁ、そうですかい。


「んじゃ知らないのは俺だけだったか。まぁいいか。部屋にいるからね」

「かしこまりました」

「分かったよー」

 部屋に入って、エアコンに付与をして行く。いちおう動くか確認しながらだから遅いけど、いかに効率よくやれるかタイムアタックをしてみる。どんなに頑張っても1分半の壁は破れなかった。

「クソっ!惜しかった!」

 腕の時計で1分31秒!惜しい!


 そんなことをしているとエアコンはすべて出来上がってしまった。今度はドライヤーで挑戦だ。


「ご主人様ー。お夕飯が出来ました」

「はーい!ちょっと待ってて」

 ちょうど最後のドライヤーの試験をしてバックに入れる。

 ドライヤーだと1分ぐらいだった。


「はい、あーん」

「レーナ、食べれるからね」

「食べてもらえないんですか?」

 そんな顔されたら食べないわけには行かないだろ。

「あーむ」

「美味しいですか?」

「うむ、美味いぞ」

「キャー」

 ほらミクスなんて白目剥いてるし、笑い堪えてやがる。


 飯も終わりやっと解放された。

 部屋に戻って何か新しく作ろうかと考える。

「うーん、何も浮かばんなぁ」

 創造魔法が使えれば車とか洗濯機なんかをつくるんだが。いまの創造魔法はもとの魔法だけで魔法でなんでもできるわけじゃないんだよな。

 (仮)なんだから魔法を創造するくらいできるがなんの魔法にするかだな。流石に『デス』は使用できるが燃費悪そうだし。

 タイヤの素材のゴムが出来れば自転車なんかもいいかもな。あ、馬車はゴムタイヤだったな。乗り心地悪くなかったし「ゴムあったんだ」って思ったの忘れてたよ。

 なら自転車だな。忘れないうちに図面を描いとくか。

「他には台車とかもわすれずにと」

 付与魔法が要らないから鍛冶屋の親父に全部ぶん投げとけばいいだろ。

 マジックバックもそのうち劣化版でもつくるかね。


「ふははは……」なぜ笑いながら起きる?

 いい夢でも見てたのかな?隣に眠るレーナと目が合うとニコリと、

「おはようございますご主人様」

「お、おはよ」

「おっはよーございます主」

「おうおはよ」

 反対で眠るミクスも起きていたようだ。

 は、恥ずかしい。


 朝ごはんを食べた後、ミクスを連れて外に出るとキース達が待っていた。

「ん?どしたの?キースにウェイドも」

「おはよう。賢者殿、勇者が参られたので王城へお越しください」

「ウェイド硬いっすよ、てか、朝から悪いけど勇者が来たから一緒に来てくんない?」

「まぁいいけど、なんで?」

「同じ渡り人を見たいんじゃないか?」

「あーね、分かった。ミクス、と言うわけだからお供はいいや」

「はーい!んじゃ洗濯でもしてますね」

 ミクスは着替えに中に入って行った。

「この格好でいいか?」

「王に会う時は剣帯を」

「あぁ、そこら辺はいつも通りね」

「そーゆーことっす」

 俺たちは喋りながら王城を目指す。

「普通馬車じゃね?」

「馬車より歩いたほうが速いっすよ」

「あー、言えてるな」

 朝の混雑はどこも一緒で仕入れや店の準備で忙しそうだ。

「んで?勇者は見たの?」

「一般の俺らが見れるわけないっしょ」

「普通に見れなかった」

「マジかぁ、どんなやつだろう?」

 もう城の中に入ろうとしたところで団長と交代だ。

「団長おはよっす」

「おはよう、賢者殿」

「笑いながら言われてもねー」

 団長も笑いながら賢者っていうし、自分で賢者ですっていうのもなんだかな。

 玉座の前の扉で剣帯を渡すと、そこからはいつもの光景だ。

「王よ、賢者殿が参られました」

「よし。通せ」

 扉が開くと中程まで行き片膝を立て首を垂れる。

「よく来た賢者殿、面をあげてくれ」

「昨日ぶりですね、王様に女王様」

「うむ、エアコンの調子はいいぞ!」

「ドライヤーも、ほらこんなに髪がサラサラ」

 女王様はよほど気に入ったのか髪を触り続けている。

「して、帝国から勇者の一行がやってきておる。場所を提供するからそこでゆるりと話すが良い」

「え?はい、わかりました」


 場所を移して豪華な部屋に入っていくと、三人もの勇者一行がいた。

 みんな着ているものがボロボロになっているのでここまでくるのが大変だっただろう。

「初めまして、僕は那月健太郎なつきけんたろうです」

 黒髪のサラサラとした髪でこれぞイケメンって顔の俺より少し低い背丈の男の子。

「初めまして、私は矢幡明那やはたあきねよ」茶髪のロングヘアを束ねたちょっとキツそうな顔のちっぱい女の子。

「初めまして、俺は貴先冬夜きさきとうやだ」長めの髪で片目が隠れているがちょっと冷たそうな雰囲気をだしている男の子。


「あ。初めまして近藤春って言います。よろしくね」

 俺が一番年上だろうな。

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