第24話 帝国


「さて、とりあえず座ってもいいかな?」

「どうぞ」と隣をあけてくれる冬夜君。

「ありがとう。で?君たち全員渡り人なんだ?」

「そうです。気付いたら森の中に三人でいて、そこからなんとか帝国にいって」

「俺と一緒だな。俺なんかパンツ一丁だったよ」

「僕達も同じようなもんです」

 顔を赤くする明那ちゃんとあせる健太郎君。

「それで単刀直入に聞きたいんですが、僕達は日本に帰れますか?」

 本当にズバリ聞いて来たな。

「分からない、が正解かな?教会で祈ってみた?」

「祈ってないです」

「なら分かってないか。俺は日本で死んでることになってる」

「「「えっ」」」

「交通事故で死んでるんだ。確認もして来た」

「日本に行ったんですか?」

「行ったというより行けた、が正解かな」

 ハンバーガーセットを出してやり、

「食べながら話そうか」

「ハンバーガーだ!」

「なつっ!」

「やった!」

 やっぱりこの歳の子にはハンバーガーだろ。にしても三人一緒かぁ。

「自分が何をしてたか覚えているかい?」

「もぐもぐ」

「んぐっ!私達が学生だったのは覚えています」

「あぁ、ゆっくりでいいよ。そうだね、俺もそうだよ、会社員だったのはなんとなく覚えてる。で、教会に行くことがあったから祈ってみたら、神様?かな?と喋れて、死んだからこっちに来たって言われたよ」

「そんな!じゃあ僕達は」

「まだ、分からないじゃない!教会に行ってみましょうよ!」

「だな、それよりいまはハンバーガーだ」

「「えぇっ」」

 冬夜君は久しぶりの日本の味に満足しているようだった。


「俺からも聞いていいかな?」

「どうぞ」

「何故?勇者なんだ?」

「そ、それは恥ずかしいんですが僕のユニークスキルがブレイブハートだからですかね」

「……まじか、そんな事で?」

「そんな引かないで下さいよ」

「まぁ、最初はだれでも引くわよね」

 ブレイブハート、勇敢な心か、勇者にピッタリだが、

「それはどんなスキルって言えないか」

「いえ。聖剣召喚が出来ます」

「えぇ、もろ勇者じゃん」

「あ、あはは」

「そう言うおっさんは?」

「おっさん?俺はまだ二十一だぞ?」

「じゃあえーと、ハルさんは?」

「書庫の管理人」

「うお!賢者っぽい」

 冬夜君が笑いながら言う。

「言うな!それを!俺は認めてない」

「それは魔法が使えるんですよね?」

 明那ちゃんがそう言うから、

「このバックも自分で作った、マジックバック」

「うお!マジで!すげえ!」

 冬夜君の食いつきが凄い。

「後二人のユニークは?」

「私が聖女」

「まんまじゃん」

「俺がトリックスター」

「詐欺師?」

「違うから」

 うーん、本当の事だろうけどね。

「たぶん聖女はまんま癒しに特化で、トリックスターは場を荒らしたりする魔法というか技みたいな?」

「「当たってる」」

「そりゃ、あたるでしょ」

 どうみても、未成年だよな?

「僕達は十七になります。そして、帝国で魔王を倒したら帰れると」

「それを信じたのか?」

「最初はですね。それから王国に賢者がいるって聞いて帝国から出て来たんです」

「俺のトリックスターの技でね」

 ほう、なら追われてるほうなのかな?


「帝国からは追われてます」

「だろうね」

「魔王なんているんですか?」

「いないって聞いたぞ」

「…やっぱり」

 健太郎は神妙な顔つきで頼んでくる。

「僕達のことを匿って下さい」

「それは王国に属するってことになるぞ?」

「帝国は俺たちを騙してた、それなら王国にいたほうがハルさんもいるし」

「私達もう行く当てがないんです!」

 しょうがないか。

「王様には俺が頼んでやるよ。それよりハンバーガー冷めちまったかな?」

「いえ、いただきますって。二人とも食べちゃってるし」

「あははは、またジュースでも出そうか?」

「「ごちになります」」

 

 さてと、帝国かぁ。


「と言うわけで帝国は嘘をついてこの子達を騙していたわけです」

 玉座にすわる王様は怒っていた。

「渡り人様を騙すなんて不届者は成敗せんといかん!」

「ですよね!俺も協力するんで戦争になったら言って下さい」

「分かった!帝国に抗議の手紙を出す!こちらには渡り人様が四人もいるのだし、そう簡単には手は出して来ぬだろうがな」

「ありがとうございます」


 玉座の間を離れ、団長と話をすると、

「帝国のやり方は不味いな、魔王なんて聞いたことないのにそんな事で騙すなんて」

「他の渡り人の知恵かもしれないな」

「あぁ。それもありえるな」



 

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