第21話 賢者


 あれ、ここは?

「ご主人様!」

「主!」

 あぁ、俺は倒れたんだっけ?

「どれくらい寝てた?」

「三ヶ月も目が覚めないなんて」

「三ヶ月で済んだのか」

「え?!」

 あれだけ動いて魔法使って三ヶ月なら上等だな。死ななかっただけマシだ。

「う、動くのはまだ無理そうだな」

「はい!動かないでください」

「主人の世話は私達でやるから」

 ありがたいがこれ以上は大丈夫。

「ヒール」

「うん、多少は動けるな」

「無理はダメです!」

「いや、トイレくらいは自分で行きたいからさ」

「わ、わかりました。それ以上はダメですよ?」

「分かったよ」

 レーナとミクスが二人ともいなくなると、

「ステータス」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 近藤 春こんどう はる21歳

 レベル46

 力 B

 体 B

 速 C

 知 B

 魔 A


 スキル 創造魔法(仮)

 ユニーク 書庫の管理人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 やっぱり対策して来たな。

「(仮)ってなんだよ」

 笑える。

「最初からんなもん渡すなよな」

 一応さっきお金はレーナに渡したし、ちょっとゆっくりするか。


“ドンドン”

「入るぞ」

「団長?キースにウェイドまでどうした?」

 三人とも汗だくだ。

「馬鹿野郎!倒れてたんだから心配するだろ!」

「そっすよ!いまやっと起きたって知らせてもらったっす」

「お前は無茶をするからな」

「あはは、すいません」

 ありがたいなぁ、こんな友人がいてくれて。

「ふぅ、で?どうなんだ?」

「魔法の使いすぎみたいなもんです」

「魔力枯渇で三ヶ月も意識不明はやりすぎだろ!」

「すいません」

「あはは。ハルっぽいっすね」

「笑い事じゃないけどな」

 いや、ほんと調子に乗ってしまった。

「ほんと、すいません」

「いや、大丈夫ならそれで良い」

「ほんとっすよ、意外に元気そうですし」

「だな」

 三人は仕事中だったらしく急いで帰っていった。


「ご主人様あーん」

「自分で食べれるよ?」

「いいんです。あーん」

「あーむ」

 レーナの過保護が爆発中だ。誰か助けてくれ。ミクスも笑って見てるだけだし。

「はい、あーん」

「あーむ」

 赤ちゃんか!俺は!トイレまで着いてこようとするからな。

 

「笑い事じゃないですよ?」

「ははは、良いじゃないか」

「プレイだと思うっすよ!」

「ノーコメント」

「「「あははは」」」

 団長達は見舞いだと言ってしょっちゅう来る。

「他人事だと思いやがって」

「倒れるお前が悪い」

「っすね」

「奴隷にとっては主人が死ぬなんて最悪だからな」

「そっか、俺が死んだら路頭に迷うのか」

「それならいいが、死ぬ時もあるからな」

「うお!マジかよ」

「犯罪奴隷の場合は絶対死ぬ、そう言う契約だからな。あとはいい主人だった時、後追いで自殺することがある」

 二人いるから大丈夫だろ。

「お前は大丈夫だと思っているだろうが、レーナの取り乱しかたはやばかったぞ?」

「あー。なんとなく想像がつく」

 いまでアレだからな。

「まぁ、お前は死ねないな」

「へーい」

 死ぬ気は無いけどね。


「あ、そう言えば勇者が来るらしいな」

 勇者?

「あぁ、言ってたっすね」

「帝国から勇者がこっちに向かってるらしい」

「なんでまた」

「渡り人に会いにくるんじゃないか?」

「はあ?」

 俺に会いに来る?

「他に渡り人っているの?」

「聞いたことないな」

「帝国に勇者、こっちに賢者みたいな」

「賢者?」

 賢者ってあの賢者?

「いろんな知識でものを作ったお前が賢者のようだってな、城の中じゃそう呼ばれてる」

 うわぁ、いやだな。

「そんなふうに言われるのはちょっと」

「だろうな」と団長は笑う。

「賢者かぁ、凄いっすね!」

 キースが真面目な顔で言う。

「馬鹿にしてんだろ?」

「あったりー」

「てめぇ!キース」

「「あははは」」



「ご主人様?ご主人様!」

「うぇっ!」

「良かった、また意識不明になったりしてなくて」

「いやレーナ、いつものように起こしてくれよ。これじゃ身が持たない」

 ここ最近はこの起こし方だ。

「だって、怖いんですもん」

「もう歩けるようになったし大丈夫だよ」

「まだ安静にしてて下さい!」

「わかってるから家から出てないだろ?」

 家からも出してもらえない。

「はい!まだダメですからね」

「はーい」

 俺はいつになったら出られるんだ?


「おはよう主!今日も元気そうだね」

「ミクスもレーナに言ってくれよ」

「無理無理!私だってまだ心配してんですからね」

「はぁ、これじゃ軟禁だよ」

「我慢して下さいね」

 家の中を動けるようになったのは良かったので、最近はまた書庫に出入りしている。


「『書庫を開く』」

 真ん中にドンとある一冊の本を軽く読む。

「日本のページになるととたんに持ち出し禁止のマークがつくんだよな」

 これが(仮)になった原因だろうな。

 読める事は読めるので読んでみる。

 雑誌なんかも入ってるから暇つぶしには最適だ。

「ご主人様ー?」

「『書庫を閉じる』」

「どうした?」

「いえ、いないから探してたんです」

「ちゃんと家の中にいるってば」

「はい!絶対ですよ」

 レーナがヤンデレ化してる?

 おいおい洒落にならねーよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る