第17話 囮


 討伐隊はAランクパーティーとBランクパーティー二チームで編成された。

「Aランクのガーディアンズだ。先行して巣まで案内してくれ」

 ニタニタして気持ち悪いやつだな。

「はい」

 俺たちは森の中に入っていき、巣があるところまで案内する。

「ここです」

「案内ご苦労、Bランク二チームは裏から回ってくれ」

「じゃあ、俺らはこれで」

 帰ろうとするが、

「待ってくれ、後方支援を頼む」

「それじゃあ話が違います」

「いや居てくれるだけでいいんだ」

 Aランクチームリーダーが無理を言ってくる。

「こちらも危ないんですよ」

「俺がリーダーだ!ちゃんと守れる!」

「くそっ!」

 ここまで来て仲間割れはごめんだ。

「分かりました、でも期待しないでください」

「分かってる」

 ニタニタと笑うリーダー、二度と案内なんてやるもんか!

「レーナ、ミクス、危なくなったら逃げるぞ」

 小声でレーナとミクスにそう告げる。

「「はい」」


「3.2.1.ゴー!」

 閃光弾で合図が出されると、全員巣に入っていく!

「うおぉぉぉおぉぉぉ!」

 突っ込んでいくが、オークが多いな。

『ウガアァアァア』

「な、なんだこの数は!?」

「おい!ヤベェぞ!」

「うわあぁぁぁ!」

 オークの数に対して人が少なすぎる。にしてもAランクかよ?弱すぎだろ?


「おい、逃げるぞ!」

「「はい」」

 俺たちは走った。

「テメェら逃げんじゃねぇ!」

 リーダーが追いかけてくる。仕事しろよ!

「無視だ無視」

 無視して逃げた。

「覚えてやがれ!」

 あれでAランクのリーダーかよ。

 

 ようやく森を抜けてひらけたところに出ると、Bランクのチームも逃げて来たみたいだった。

 あとはAランクとBランクのチームだけだが、帰って来たのは数人だった。



「テメェ勝手に逃げてんじゃねぇーよ!」

「は?俺は案内役だぞ?逃げるに決まってるだろ」

「俺が残れっていったら残るんだよ!」

「話にならないな」

 ギルド受付でAランクのリーダーと揉めるが受付からの援護もあり俺が正しいと言うことになった。

「テメェ絶対許さねぇからな!」

「は?しらねーよバカ」

「なんだとてめぇ!」

 流石に剣を引き抜くとはバカだ。俺が構えると、

「やめろ!!」

「ギルマス!」

 ようやくギルドマスターのお出ましかよ。

「話は聞いてる。Aランクチームの中でなんでお前だけ帰って来たんだ?」

「い、いや、これはこいつが」

「こいつは案内役だ。案内さえ終われば帰る約束のはず。なんでいたんだ?」

 Aランクチームのリーダーは青い顔をしている。

「こいつが残れって、リーダー命令だとかで」

 俺が言うと、

「嘘だ!こいつが残りたいって」

「違うだろ?お前が囮にするために残そうとしたんだろ?」

「違う!」

 囮にするために残したのかよ。

「お前は冒険者資格剥奪だ」

「なんでだよ!仲間もみんな死んだんだぞ!」

「それはしょうがない、お前達が裏で汚いことをしてランクを上げてるのもわかってる」

「えっ!そ、そんなことはしてない!」

「オーク如きに遅れをとるAランクチームがどこにいるんだ?」


 いや、人が死んでるんだぞ?そんなことのために俺たちは案内させられたのか?

「Bランクチームのクマドリとシラハも同じ理由で冒険者資格剥奪だ」

 急に話を振られたBランクチームはビックリしている。

「俺らは関係ないだろ?」

「この際だから言っとくが冒険者ギルドの膿を出そうと思ってな!お前達がやって来たことは犯罪だぞ?」

「な、なんだよ!オークの巣の討伐に行ったじゃないか!」


「そうだ、普通ならやれるランクのな」

 俺らはとばっちりじゃねぇかよ。

「ふ、ふざけんじゃねぇ!」

 剣を振り翳してギルマスに襲いかかるが逆に刺されて倒れるリーダー。

「く、くそ……」

「こいつらは弱いランクのチームを囮にして依頼を達成して来たクズだ。クマドリは全員いるな?さっさと逃げたわけだ?シラハは四人いたはずだが、二人か、妥当なところだろうな」


「さっきから聞いてりゃ俺らは囮か?」

 流石の俺も頭に来たぞ。

「渡り人だろ?それに案内役だ、それくらい大丈夫だろ?」

「ふざけんなよ?こっちは命懸けだぞ?」

「あぁ、すまなかった。報酬はちゃんと払うからな」

 ギルマスは何事もなかったように話を進める。

「クマドリとシラハは冒険者資格剥奪の上、審査官に取調べされるからな」

 クマドリとシラハの六人は他の人に取り押さえられている。


 こんな事のために俺らは使われたのか?

「待てよ」

 無詠唱のアイスコフィンでギルマスの足を封じる。

「むっ!なんだ、まだ何かあるのか?」

「俺の話は終わってない!渡り人だろうが人間だ!」

 アイスコフィンは肩まできている。

「わ、分かった。すまなかった」

「すまないで済むと思ってるのか?」

 顎まできたアイスコフィンにギルマスが焦る。

「悪かった!俺が悪かったから」

 アイスコフィンを解くと膝をつくギルマス。

「悪かった、だが、Cランクのお前なら大丈夫だと思ったんだ」

「仲間がいるんだ、そんなことは関係ない!」

「すまなかった!この通りだ」

 頭を下げるギルマスにようやく溜飲が下がった。

「次は無いからな?」

「分かった」

 Bランクチームのクマドリとシラハはその後、審査官に取調べを受け、今までの悪事がバレ奴隷落ちになった。

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