第13話 家


 宿の風呂に入ってまったりしているとキースが入って来た。

「なんだよ、入ってるだろ?」

「いつものことだろ?早く上がれよ?ウェイドが待ってる」

「けっ!風呂もゆっくり浸かれないなんて」

 軍隊方式らしく風呂はさっさ入ってすぐ出る物らしい。

「キースはマジックバック使ってるか?」

「おう!便利だなあれ!金の計算も要らないし」

 思うだけで欲しいだけ出せるのだ。なければ出せないけどね。

「ウェイドも気に入ってるみたいだぜ!」

 それなら良かった。

「団長が一番気に入ってるんじゃないか?夜中に拭いてるからな」

「そうなのか!」

 キースが洗い終わって俺と交代して俺は外に出る。ウェイドが入っていく。

 しかし団長が気に入ってくれたのは嬉しいな!


「風呂上がりにキンキンのエールを飲みたいな!」

 下に降りていくと団長がカウンターにいたので横に座る。

「エール一つ!あ、団長、マジックバックの調子はどうですか?」

「いいに決まってるだろ?こんなに便利な物を俺たちだけ使ってるのが心苦しいがな」

 団長はやっぱり団長だなぁ。

「やっぱりほかにも色々と作った方がいいですか?」

「ハルにしか作れないのにそんなに増やしてどうするんだ?」

「それもそうですね」

 俺一人だけしか作れないのにあれこれ作ってもしょうがないか。

「はいよ、エールね」

「はーい、ングングっカー!美味い!」

「ハハハ、ドワーフみたいなやつだな」

 ドワーフって酒飲みで小さくて鍛治が上手い?

「ドワーフ?いるんですか?」

「そっちの世界にはいないのか?」

「いないっすよ。もしかしてエルフとかも?」

「いるぞ?獣人もいるだろ?」

「あっちの世界は人間だけの世界ですからね」


 そうか、気づかなかっただけでいるんだな。

「団長はエルフ派ですか?人間派ですか?」

「何をバカなことを言ってるんだ?どちらも同じだ」

「え?」

「エルフだ獣人だというが、元は人間だからな。差別する奴はいるが」

「へぇ、そうなんすね」

 ングングとエールを飲み干すとおかわりをお願いした。


「間違っても差別するなよ?」

「はーい!でも会う機会が無いですがね」

「冒険者やってればそのうち会うさ」

「そっすか、って最近は冒険者やれてないんですがね」

「それはすまないと思ってるよ。貴族は見栄を大事にするからな」

「本当っすよ、あんなギラギラなカバン誰が使うんだって話っすよ!」

 ピカピカのギラギラしたカバンに実用性は無い。

「だろうな。でも、それでも欲しいのが貴族なんだよ」


「ようやくひと段落って感じですもんね」

「だな。ようやく貴族には行き渡った感じだな」

「もうお金は一杯貰いましたからね」

「そうだろうな。羨ましい限りだよ」

「お、団長もお金には興味があるんすか?」

「生きていくには何でも金がいるだろ?」

 団長はエールを頼むと、

「今日までだ。ハルはキースとウェイドに任せて団長の仕事に戻らなくちゃいけないからな」

「な、初めて聞いたっすよ」

「俺も今日は聞いた。楽しかったよ」

「あははこちらこそ」

「さて、飲むぞ今日は!」

「あははは、飲みましょう!」


 その後、キースとウェイドが来て飲みまくった。


「うぅ、キュア」

「俺っちにもかけてくれっす」

「キュア、ついでにキュア」

「すまないな」

 キースとウェイドの二人だけ、団長は戻ったらしい。

「寂しくなったが、三人で頑張ろう!」

「「おう!」」

「今日は休みだから家を探しに行きたいな」

「家買うっすか?」

「金はある!」

「そりゃ、あるでしょうよ」

 呆れたキースにウェイドは普通に、

「屋敷でも買うのか?」

「なわけないでしょ、普通の家」

 普通の家なら多少高くても良い物件がいいな。

 また今更かと思うが、とてもじゃないが宿に飽きた。楽で良いんだが、落ち着いて眠れないし、風呂にちゃんと入りたい。


「なら、商業ギルドにいくっすね」

「あぁ、ギルド経由が一番だろうな」

 と言うことで商業ギルドに向かう。

 中に入ると受付がいくつもあり、それぞれ区切られている。

 並んでいると俺の番になり、

「家が欲しいんですが」

「どのような物件が条件ですか?」

 受付のお姉さんの匂いにクラクラしながら、

「風呂付き、部屋は三部屋以上で二階建てくらいかな?」

「そうなりますと、少々お待ちください」

 お姉さんは奥に入っていくと資料を持って帰って来た。

「そうなりますと、この辺りがいいかと思います」

 一枚目は風呂付きの四部屋あり、二階建てだがトイレが外、二枚目は風呂付き、五部屋にリビング、キッチンダイニング付きでトイレも二つついてる。三枚目は豪邸になったので却下。

「二枚目が良いですね。どこかのクランハウスですか?」

「そうですね、クランハウスとして使われていたみたいです」

「内見したいです!」

「じゃあ、いまから案内いたします」


 案内人は別の人に代わり、案内してくれる。

「おぉ!良いじゃないか!」

「手入れはきちんとしてあります。家具は有りませんのでご注意下さい」

 中を見ていくと広さも申し分なく、風呂も大きくてゆっくり浸かれる。部屋も五部屋中一部屋はデカくてその他は大体同じ大きさだ。


「ここにします!」

「ありがとうございます、それではまたギルドのほうで案内いたしますので」

 クランハウスだっただけ有り冒険者ギルドにも近いし、大通りも近い。

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