第12話 王様


「そうだ。マジックバック作ってあげましょうか?」

「アイテムバックのことか?」

「あれより高性能ですよ」

 二人で鞄屋に行き俺が財布にしているような革のバックを買う。

 マジックバックをその場で作ってあげ契約もすると、

「これは国宝物じゃないか!これは…いまからでも王様に」

「いったところで信じてもらえませんよ?」

「何故だ?」

「作らないからですよ。あの人達は対応を間違えた」

 一回バカにされたら意地でも作るものかよ。

「……俺に黙っとけと?」

「嫌なら俺は帝国にでもいきますよ」

 苦虫を噛み潰したような顔をする団長。


「分かった、だが王様には忠告くらいは良いだろ?」

「それはいいですよ」

 忠告したところで遅いんだけどね。

「くっ!いますぐ、だが、宿に戻るぞ」

「はいはい」

 団長は俺を担いで宿に戻るとキースに俺を託して蜻蛉返りで王城へ。


「なんかやったの?」

「べつに?あっ、ここに血を垂らして」

「へっ?ここにか?」

 キースにもマジックバックをあげる。

「なんだこれ?!すげえぞ!」

 そしてウェイドにも。

「これは凄い」

「だろ?これを見抜けなかった王様には作ってやんない」

 キースとウェイドは遠くを見ている。

「ヤバいもんもらったな」

「そうだな」


 その頃、王城では団長がことの重大さを王様に報告していた。

「なんと!そんなに有用なやつだったのか?」

「これは私がもらったマジックバックですが、契約で私しか使えません」

「なんと!それでは証明できないではないか」

「いえ、この剣を仕舞えます。取り出すのも一瞬です」

 王の前で剣を出し入れしてみせた。

「さっきの渡り人を呼んで参れ!」

「それがバカにされたと思われたようで別の国に行くなどと」

「ワシが謝る!連れて参れ!」

「王が謝るなど」

「渡り人には常識は通用せん!大丈夫じゃ!」

「それではすぐに連れて来ます」

 団長は走った。


「なんですか?俺はバカにされたんですよ?」

 団長を見るなり俺は口を出す。

「悪かったと、はぁ、はぁ謝ると仰ってる」

「王が?いいんですか?」

「我が王はそこら辺の王と違う!」

「はぁ、わかりました、一回だけですよ?」

「ありがとう」

 団長は汗をかいておりそれでも急いで戻ろうとする。

「ヒール」

「回復魔法?!」

「これで大丈夫ですか?」

「あぁ、ありがとう」

 呆気に取られた団長はゆっくりと宿を出る。俺もそれに続いてでると、二人で王城へ向かう。


「すまなかった!ワシの目が悪かった」

「私もすいませんでした」

 女王まで謝っているので許してやるか。

「いいですよ、わかってくれたなら」

「いや、そなたは凄い能力をもっているのだのぅ」

 王様の横には鞄が置いてある。

「それではそのカバンをマジックバックにすればいいですか?」

「おお、してくれるか?」

 わざとらしいがしてやる。契約はしないでおく。

「ほぉ!なんと不思議なバックじゃ!」

「私のもしてくださいまし!」

「はいはい」

 女王のバックもマジックバックにしてやる。こちらも契約なしだ。

「まぁ、なんて不思議なのかしら!」

「褒美を取らす!何が欲しいのじゃ?」

「魔導書が欲しいですね」

「分かった魔導書じゃな」

「城の一室を使うと良い。良きものがまた出来ればよろしく頼む」

「はい、わかりました」

 団長と、魔導書の山を持って来てる二人の騎士と四人で一室に入ると、魔導書を読み始める。

 全て読み終わるのに一週間もかかってしまった。『時魔法』『空間移動魔法』『古代魔法』をスキルとして取得した。

 これ日本に帰れるんじゃね?

 と思ったが、記憶が曖昧で何故か思い出せない。

『時魔法』はマジックバックの完成品として時間停止をかけた。これで中の物の時間は止まったままだ。

 王はこれに喜び、色んな物に付与させられた。宝物庫にある宝箱、騎士団の荷箱、さらにいろんな貴族からもお願いされ、お金をもらってやってあげる。

 それだけで一財産築いてしまった。

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