第9話 ボッテム


「悪い待たせたな」

「ぜーんぜん、次はどこいく?」

「うーん、アンナのオススメはあるか?」

「あるよ、でも歩くよ?」

「おう、いいぞ」

 テクテク歩くアンナの後ろ姿は頑張って生きてる感じがして好きだな。

 のんびりとテクテク歩いて街並みを眺めてる。ちょっと寂れて来た気がしたがアンナが歩くのをやめないのでそのまま着いていく。

「ここ!私のお家で教会です」

「おぉ、教会かぁ」

 そう言えばここの神様になんで俺をこの世界に呼んだのか聞きたかったんだよな。

「パンも売ってるし聖水も売ってるよ」

「じゃあパンを貰おうかな、あと寄進は受け付けてるのかな?」

「たぶん受け付けてるよ。マリア様ぁー」

 アンナは教会の子供か、しっかりしてるよ。

「あら。こんなところまでご苦労様です」

 若い頃はマリアって名前が似合っていただろうな。

「冒険者のハルっていいます。ここに寄進出来ますか?」

「寄進ですか?はい、喜んで」

「あと神様にもお祈りを出来るでしょうか?」

「もちろんですとも」

 マリア様は拝んでくれる。

「じゃあ、中にどうぞ」

 後について歩いていくと立派な教会だった。所々補修してあるが、昔はさぞ立派で綺麗な教会だっただろう。

「これ寄進です」

「あらこんなに、ありがとうございます」

 百万ゼルを渡すと涙を滲ませるマリア様。

 神の像の前に膝をつき聞いてみる。



 真っ暗闇だ。

「また真っ暗で何も見えないぞ?」

「それはしょうがない目がないのだから」

「口はあるのに?」

「口もない、心で喋っている」

「じゃあ、なんで俺をこの世界に来させたんだ?」

「貴方は死にそうだった、そう願っていたのでここに連れて来た」

 そうか、おれは死にかけたんだな。

「俺になにか目的はあるか?」

「ありません。ご自由にどうぞ」

 そっか、なにもないなら自由に生きよう。

「ユニークスキルのことは?」

「それはその人次第ですから」

 教えてくれないのか。

「ありがとう神様!この恩は忘れない」

「そんなことより早く戻りなさい」



 目を開けると眩しくて目が慣れるまで時間がかかった。

 立ち上がるとマリア様がやってきて、

「神様と何をお喋りになられたのですか?」

「あ、あぁ、俺は渡り人ってやつで、なにか目的はあるのかってきいたらないんだとさ」

「そ、そうですか。初めて神像が光ったので何があったのかと」

「ははっ!これで俺は晴れて自由だ」

「神のご加護がありますように」

「ありがとうございます」

 マリア様にアンナのとこに案内されてパンを買った。あと、案内料で千ゼルを渡すと目が飛び出るほどビックリしていたな。

 

 帰りは一人である。

 この街は綺麗だなと思いながら夕暮れのはどうを歩いている。まぁ、ボッテムみたいな奴がいることはあるけど、そんなのはどこに行っても変わらないだろう。


 さぁて、自由にしろって言われたが、何ならニートになりたい気分だな。金までに入ったし。


錬金術でポーションでも売って暮らすかな?教会で買ったパンを齧りながら今後の展開を考えてみる。

 そうすると家が欲しいな。


 ギルドに相談か?ここに暮らすか?

 んー、色々考えることがあるなぁ。



「外に出てみるか!」

 このアポーンの街で住むのもありかな。

「あ、あいつだ!捕まえろ!」

 ん?あいつはボッテム?

「なんだ?」

「おい!お前の持ってるバックを買い取ってやる!よこせ!」

 相変わらず口の聞き方がなってない親父だな。

「やだね。しかももう俺しか使えなくしたし」

「んー!な、ならそれはどこで手に入れた?」

 手に入れたんじゃなくて作ったんだよ。

「そこの角にある鞄屋」

「なに!いくぞお前ら!」

「「はい!」」

 鞄屋のおっちゃんごめんね。

 っとにボッテムがいなかったら最高の街なんだけどなぁ。



「見つけたぞ!嘘つきやがって」

 ボッテムが追ってきやがった。

「はぁ、買ったのはあそこで間違いないんだ」

「な、ならどうやったんだ!」

「企業秘密に決まってるだろ?それに命の恩人にすることかよ」

 助けてやった恩を忘れやがって。

「そんなもん謝礼を受け取っただろ」

「まぁ確かに貰った。だけど普通のことだろう?」

「う、うるさい!そのバックを寄越せ!」

「だからダメだって言ってるだろ」

「えーい!奪い取れ」

 ライトニングで痺れさせると、すぐに白目を剥いて倒れる手下の人達。

「ぼ、暴力だぞ!」

「お前こそ強盗だろうが」

 そこにちょうどよく四人の警備兵が訪れた。

「何があったんだ?」

「こいつがわしのものを盗んだんじゃ」

「はいはい、言いがかりも程々にしとけよ?」

 さすがに頭に来るぞ。

「まぁ、兵士長のところに連れてくから大人しくお縄につけ」

「へいへい」

「な、わしもか」

「そこの寝てる奴らは担いで来い」

 警備兵は門の所に行き兵士長に俺らを託すと去っていった。

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