第8話 クリュナ商店


 鞄に空間拡張を掛け直すとやはり広がった。スキルの横の数字はレベルみたいなもんなのかな?


 盗賊からの盗品もある事だし、売っぱらいにいくか。

 のらりくらりと街を歩くのは初めてだ。

 でっかい商会があるなぁとみたらボッテムだった。こんなとこより他に売ろうと歩みを進めると『クリュナ商店』と書かれた店を発見!

「ちわー、クリュナいる?」

「わ!ハルさんじゃないですか、どうしたんです?」

「訳ありものを売りたいんだけど」

「あ、盗品ですね?いいですよ!買います買います!」

 マジックバックから残ったものを出していく。

 クリュナは値段をつけて奥にしまっていく。ここらへんは手慣れてるな。

「はい、全部で八十五万ゼルで買い取りでいいですか?」

「いくらでもいいよ!ちゃんと儲けろよ?」

「はい!これでも利益は考えてますから、それよりもマジックバックですよ!それは売らないんですか?」

「これは…まぁクリュナならいいか、マジックバックにしたいバックを持ってこい」

 クリュナは後ろに下がって肩掛けバックを持って来た。

「んじゃ、やるぞ」

 空間拡張、重量軽減、探知に認識を付与し、出来上がり。

「あ、ありがとうございます!」

 契約魔法も使うということで、血を一滴目立たないところに垂らして契約魔法を使う。

 俺が触っても中に手は入らなかった。

「うぉー!私だけのマジックバックだぁ!」

 クリュナの喜びようが笑える。

「で?おいくらでしょうか?」

「いくらにすれば売れると思う?」

「げっ!そんなのいくらでも買いますよ!」

 クリュナが変顔になって抗議する。

「嘘だ、百万ゼルでいいよ」

「本当ですか?!やった!」

「クリュナには世話になったからな」

「うー、嬉しいです」

 百万ゼルを貰うと財布に入れる。

「え?もしかしてそれも?」

「マジックバックだ」

「ズルい!私も欲しいですそれ!」

「落としたら最悪だぞ?」

 ベルトに付けてるから落としようがないけど。

「私も同じ様にしますから!お願いします!」

「はぁ、持ってこい、今度も百万ゼルな!」

「分かってます!こ、これでお願いします」

 またマジックバックを作って契約もした。

「いやった!これで盗まれることも無いぞー!」

「盗まれたことあるのかよ?」

「そりゃ最初の頃はありましたよ」

 それなら大事なのはわかるな。

「んじゃ俺は帰るわ」

「またよろしくお願いしますねー」

 クリュナは笑顔で手を振ってくれた。


 俺も宿に帰ったら契約しとこう。


 街ブラは続く。

 今度はどこに行こうかと迷っていると、裾を掴まれる。

「ん?どうしたの?」

「どこを探してるの?案内してあげる」

 あぁ。よくある案内屋か。

「んじゃ。美味い飯屋はあるか?」

「こっち」

 案内屋の嬢ちゃんはテクテクと迷いなく歩いていく。


「ここが美味しいって噂の店」

「噂かぁ。食べてみようぜ?」

「でも、」

「俺の奢りだ」

「やった」

 店に入ると落ち着いたいい感じの店で、客もそれなりに入っている。

「二人ね」

「かしこまりました」

 先に案内され、メニューを読むがよく分からない。案内屋も同じ様だ。

「おススメを二人分」

「かしこまりました」

 出て来たのは鶏肉のソテーにスープにサラダ、そしてエール。宿と同じようなもんだな!

「美味い!」

 と一言いうとモグモグ食べる案内屋。

「俺はハル、お前は?」

「んグッ、あ、アンナ」

「そうか、ゆっくり食べろよ」

 俺も食べてみるが俺は宿屋の方が好きな味だな。

 腹一杯食べたみたいでアンナは満足そうだ。

 お会計は二万ゼル、高いな!

 外に出ると、

「アンナここよりいい店を紹介するからここはやめとけ」

「美味いけど高かったね、ご馳走様でした」

「錆猫の居眠り亭ならここより安くて美味い。けど昼はやってないからな」

「了解!」

 アンナは歯の抜けた顔で笑った。


「次はどこ行きたい?」

「錬金術の動具売ってるとこ、ボッテム以外で」

「うーん、わかったよ」

 アンナはまたテクテクと歩いていく。

 それを後ろからついていく怪しい俺。

 日本だと犯罪かな?不審者?

「着いたよ」

「こ、ここかぁ」

 いかにもな古い建物で『錬金術タッコイ』と書いてある。

「失礼しまーす」

「あ、どうぞ」

「あ、どうも」

「錬金術師の方ですか?ここにはどんな用で?」

 タッコイは頭に丸い帽子を被った丸メガネの男だ。

「錬金術を少々嗜んでいるんですが、道具が欲しくて」

「なら、これとこれとこれは必需品ですねぇ、ご予算は?」

「まぁまぁありますが」

「じゃあこれとこれ、これも追加しとけば、うーん、これもあった方がいいかなぁ」

「うん、全部わかるな」

「そうですか!ならこれだけあれば大丈夫ですね、まけて九十万ゼルです」

「はい、ありがとうございます」

 マジックバックに全てを入れる。

「な、アイテムバックですか?」

「アイテムバック?」

「錬金術で作るバックの一つですよ」

 あぁ、あったな、使い勝手が悪くてダメな奴。

「まぁ、そんなとこですね」

「凄いですね!また来てくださいね!」

「はい、ありがとうございました」

 ふぅ、まぁいい店だな。店主がちょっと変わってるけどな。

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