第7話 盗賊


 森に差し掛かったところで、索敵に反応があった。

「クリュナ!止まれ!」

「はい!」

 荷台から降りて前に行くと、男達が待っていた。

「へっ、今日はダメだなぁ」

「挟み撃ちできなかった」

「手前で止まりやがって!」

 すぐ前に四人、奥に六人か、なんとかなるかな。

「お前達盗賊か?」

「おう!盗賊よろし」

 無詠唱でウインドカッターを二つ飛ばして近くの四人に当てる。

「こ、こいつ魔法使い」

 ファイヤーボールを今度は放って奥にいる三人に怪我を負わせる。

「無詠唱だと!散れ!」

「ライトニング」

 雷魔法を使いしびれさせる。剣を抜き生きてる奴等にトドメを刺す。

「い、生命だけは、」

「お前達のアジトはどこだ?」

「こっちの奥のほうに」

 縛り上げて放置し、死体を一まとめにしてマジックバックにいれる。

「なにそれ?」

「マジックバックだ。それよりも少し離れた所で待機しててくれるか?」

「わ、わかったわ」

 俺は縛り上げたやつを連れてアジトに行く。ここからそう遠くなかった。洞窟にこやをつけた様な所だ。

「ここです!」

「じゃあな!」

 そいつにトドメを刺して、アジトに乗り込む、いい感じに寝ている所だった様でトドメを刺していくと盗ったものが置いてある部屋で全てをマジックバックにいれる。

 奥に行くと捕まっていた商人や女がいたので助けに来たといい、牢から出す。

「と、盗賊は?」

「全員殺したよ」

「私の手で殺してやりたかった」

 涙を流すものや放心してるもの、自分の持ち物を探すものなど様々だが、

「この場に残るか街に行くか選択してくれ」

 全員が街に帰るというので女には服を返してやり、男を先頭に歩いて街道に出る。

「あ、帰ってきた!」

「またせたな、ちょっと遅くなるがいいか?」

「いいよいいよ、女の人は荷台に乗れるかな?」

 女を荷台に乗せるが、

「わしはボッテム商会だぞ?乗るのが当たり前だろ?」

「いや、歩いてもらう。いやなら一人でかえるんだな」

 ブツブツ文句を垂れながら歩いてついて来る。途中グラスウルフが出て来たがすぐに片付けマジックバックにいれる。そろそろ満杯だな。

「なんじゃそれは!買うぞ!」

「売らないよ!」

 またボッテムだかなんだかの商会のやつがうるさくてしょうがないがさっさと街に向かう。


 街に着くとすぐに門兵が寄って来て事情を話すと全員が門の中で取り調べを行われた。

「さすが渡り人だな。こんだけの盗賊を倒すなんて」

 床には死体が転がっている。実は少しアドレナリンが切れた頃ちびったのは誤魔化せた。

「こいつらは賞金首だから賞金が出るぞ」

「そうかい、やっと肩の荷が降りた」

「こいつらのアジトにあったものは?」

「あるけどどうすればいい?」

「本当は全部お前のものだが、買い取りたい奴もいるだろうから一応出してくれるか?物だけでいい」

「はいよ」

 金はそのまま貰っていいんだな。物だけ出して並べていく。

「そのバックどうなってんだ?」

「マジックバックってやつさ」

「へぇ、そんなのがあるのか、一個欲しいな」

 そんな話をしながら全部出し終わる。


 別室で待機させられて、暇だからお金を数えてたら二百万も溜め込んでやがった。

 俺はボロ儲けだな。


「ちょっと揉めたが終わったぞ」

「お、ありがとうございます」

「あのボッテム商会はほんとどうしようもないな」

「あぁ、帰る時までずっとですよ」

「これはわしのもんだと叫んでいたが、国の規則だというとそれなりのものを自分から買い取るといいだしたよ」

「あははは、ざまぁですね」

「だな」

 その顔を見たかったな。

「母親の形見などは返したがいいか?」

「そこはいいに決まってるでしょ」

「そうだよな、お前がいい奴でよかったよ」

 残りは俺のもので、賞金と討伐金、あと買い戻し金が俺の懐に入る。

 カバンが血だらけだから生活魔法のクリーンをかけておく。革の鞄だから汚れはすぐに落ちた。


「おうクリュナ、世話になったな。これは世話代だ」

 俺は百万ゼルを渡す。

「いいのに、まぁ、商売人だから貰っとくよ」

「おう、あとはこれにサインな」

「はいよっと!また機会があればよろしくね」

「おう!」

 ギルドの依頼完了書にサインしてもらい別れた。


 久しぶりの宿に帰ると女将さんにすぐシャワー浴びてこいと言われ、部屋に戻り服を脱ぐと返り血で、真っ赤だった。

 今頃気持ち悪くなって吐いてしまったが、あの時はどう殺すかしか考えてなかったからな。


 サッパリして下に降りると怪訝な顔で女将に睨まれる。事情を説明してわかってもらえたのでよしとしよう。

「ッカー!」

 冷たいエールが沁みる。

 今日は酔いたかったのでエールをお代わりしてしまった。

 度数は低い様だが俺はそんなに酒に強くない。


「はぁ、殆どが魔法だったが人を殺してしまったな」

「なんだい!盗賊をやっつけたんだろ?胸を張りな!悪い奴ってのは死んでもしかたないもんさ」

 女将に励まされ、酔って自分の部屋に戻る。

 グッスリ寝て所で朝の鐘で目が覚める。

「ふあぁぁぁぁー!」

 昨日のことだがもうスッキリしてるかな、俺は悪い奴をやっつけただけだし。


 下に降りて朝メシを食うとギルドに向かう。昨日はギルドに行く気力も無かった。

「えぇ!盗賊を?それで怪我はしてないんですか?」

「えぇ、まぁ、大丈夫ですね」

 受付で渡した紙を持って受付嬢が右往左往している。

「ハル様はCランクに昇格です。異例ですよ?」

「へぇ、なんで?」

「賞金首を取って来るなんてDランクじゃありえないからです。ギルマスにも確認しましたがCランクでいいそうです」

「そっか、ありがとうございます」

 Cランクかよ。まぁ、これ以上はいいや。

「でこれが賞金の五百万ゼルと討伐金の百万ゼルです。あと買い戻し金で二百万ゼル」

「おぉ、そんなにでるんだ」

「そりゃそうですよ、なんたってボッテム商会の商会長が捕まってたんですからね」

「あぁ。それであんなに威張ってたんだな」

 お金を仕舞い込んで冒険者証を貰う。


 お金持ちになっちゃった。

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