第6話 クリュナ


「……」あまりよく眠れなかった。

 部屋の片隅で泣いてるあいつのせいだな。

「よし、今日は読んでやる!」

 錬金術の本は思ったより絵が多く解説が少ない。やってみろってことなのかな?

 全て読み終えるのに三時間くらいか。

 俺の中に入って来る。

 これで俺も錬金術師だな。

 まだ昼前なので古本屋に行ってみると、また大量に仕入れてあった。

「おっちゃん、何この量」

「おう。おまえが買うから仕入れて来たぞ」

「あ、ありがとう?」

「いいってことよ」

 スキルの横の数字はたぶんレベルみたいなもんだろう。だから同じ本でも読めばレベルが上がるんだろうな。

 魔導書はまた空間魔法と重力魔法、錬金術まで入ってるとか凄えな。どんだけ人気ないんだ?

「おっちゃん、魔導書あるだけ全部でいくらだ?」

「マケにマケて一万ゼルだ」

「…か、買った!」

 代金を支払ってマジックバックに入れていく。あれ、おかしいな、涙が止まらないぞ。

 指南書は全部百ゼルで全部買うって言ったら千ゼルでいいと言われた。


 俺。こんだけ読み切れるのか?

 帰ると取り敢えず錬金術から始めて途中休憩を挟みながら読み進めていく。

 パラパラとめくっていくだけだが、身体が受け付けなくなって来た。

「はぁ、あとどれくらいあるんだよ」


「はぁ」

「なんだい溜め息ついて!」

「勉強中なんだよ」

 女将に背中を叩かれる。

「偉いじゃないか!もっと頑張んな!」

 とエールを奢ってくれた。

 エールを飲んで!よし!頑張ろう!

 とはならず寝てしまった。


「…もう読めません」寝言で起きた。夢でも読んでたみたいだな。

 いや。全部読み切るんだ!

 半ばヤケになって読んでいるとようやく最後の一冊になった。


「おわったぁー、あぁー」

 疲れたぜ。でも、そのおかげで俺のステータスは、


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 近藤 春こんどう はる21歳

 レベル11

 力 D

 体 E

 速 D

 知 E

 魔 D


 スキル 火魔法2 風魔法 水魔法 生活魔法 付与魔法 空間魔法4 重力魔法4

錬金術2

剣術7 槍術5 盾術5 拳術7

 ユニーク 書庫の管理人

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「うおぉぉ!やってやったぜ!」

「うっせぇ!」

「すいません」

 壁ドンされた。


 でも、こんだけ本を読んだのに上がってなかったら凹んだな。まぁ、あがったからいいんだけどねー!


 明日はどうしようかな?古本屋には今行きたくないし。ギルドで依頼でも受けるか。


 朝からギルドに来ている。

 昨晩はテンションが上がって眠りが浅かったような気がするが、絶好調だ。


 Eランクに上がったからオークの討伐でもやろうかな?それとも隣町までの護衛依頼?

隣町までいってみるのもいいかな!


 受付で聞いてみる。

「あの、一人なんですが隣町までの護衛依頼ってありますか?

「ちょっと待ってくださいね」

 どーせないだろ。

「あ、ありましたよ。一人募集の護衛依頼!」

「ほんとですか?ならそれ受けます!」

「明後日から隣町までの護衛です」

「了解しました。明後日の朝でいいんですよね?」

「はい、朝、門に集合です」

 良かった!これでランクがあがるわ。


 隣町もマップで確認できたし、しかも一人でだからな!


 次の日は、買い物だ。必需品を買ってバックにしまっておく。そして魔導書店に行き雷魔法と氷魔法、あと索敵魔法の魔導書を買って読んだ。一応念のためだ。

「よし!あとは明日がんばるのみだ」


 朝早く起きて門のところに行くと馬車が並んでいる。どれかな?

「護衛一人の馬車の人いますかぁ?」

「はーい!わたし私!」

 なんか聞いたことのある声だな。

「今日はよろしくおねがいしますね」

「はい!ちゃんと守ってくださいね」

 栗色の髪、ボブカットクリクリお目目の童顔の小さな子だ。

「はぁ、よかった、この前みたいにゴブリンに追いかけられなくて済む」

 あ、こいつが追いかけられてたやつか。

「俺はハル」

「あ、私はクリュナだよ」

「じゃあクリュナ、さっさと出ようか?」

「うん!隣町までレッツゴー」

 馬車の荷台に座って索敵魔法を使う。


「クリュナ!前方からゴブリン、止まれ」

「はい!」

「ウインドカッター」

 二匹のゴブリンを蹴散らし、また荷台に戻る。

「クリュナ、オッケー」

「は、はい」

 索敵で近づく敵はわかるからな。

 それから隣町まではゆっくりと進み、無事到着した。

「依頼完了です。あのよければ帰りもおねがいしたいんですが」

「いいぞ、どうせ戻るしな」

「分かりました、じゃあ明後日の朝門前で!」

「おう!」

 クリュナと別れてギルドに報告する。

「はい、Dランク昇格おめでとう」

「おぉ、これでレベル上げが捗るぜ」


 次の日は朝から門の前でクリュナを探すと、

「おはようございます」

「おう、おはよう」

「今日もよろしくです」

「こちらこそよろしくな」

 また荷台に乗って索敵魔法を使う。

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