第10話 騎士


「と言うわけで盗賊に取り上げられたバックをこいつが捕りやがったんだ!」

「こいつがカバンをしているところを俺は見ているんだがな?」

 兵士長は俺の味方だ。

「そんなことはない!それはワシのじゃ」

「じゃあ、このバックの中身をとれるのか?」

「当たり前だ!ワシのバックじゃぞ」

「なら触ってみろよ」

 俺はバックを机に置いてやると、鷲掴みした。

「もっと丁寧に扱えよ」

「へへっ!この中身から、アババババ」

 ボッテムが中身に触れようとすると電気が流れた。へぇ、そうなるのか。

「あへぇー」

「これで俺のものだとわかったろ?」

「んじゃ、強盗の罪で刑は逃れられないからな」

 まだ痺れてるボッテムは連行されていった。

「渡り人はやはりトラブルが多いな」

「そうなのか?他の渡り人っているのか?」

「帝国の方では勇者として召喚された渡り人がいるらしいぞ?」

 勇者?そんなもんがいるってことは、

「魔王がいるのか?」

「いるわけないだろ、モンスター討伐に駆り出されてるらしい」

「なーんだ、いないのか」

 いたらいたで怖いけどな。

「お前もそのうち国王に呼ばれるんじゃないか?」

「へ?俺が?」

「渡り人がでたら話が行くようになってるからな」

「う、売りやがったな!」

「人聞きの悪い、ちゃんと百万ゼルも渡したしちゃんと生活できるように案内しただろ?」

 それはしてもらったな。

「それが渡り人への対応なのか」

「そうだ、そうしないといけない規則になってるんだよ」

「じゃあ俺の自由は?」

「それは王との会話でなんとかしろよ」

「助けてくれよ」

「無理に決まってんだろ」

 はぁ、王様に会うのかよ。


「俺は一般市民だぞ」

「そう言えばいいだろ?」

「勇者なんかにならないからな!」

「だからそう言えよ!」

 兵士長とさんざん言い合って結論。

「まぁ、なんとかなるか」

「だな」


「王都って近いのか?」

「馬車で二泊はするな」

「ならそう遠くはないか」

 馬車で二日ならなんてことはないだろう。

「まぁ、まだお呼びがかかってないしいくのはまだ、だろうがな」

「なんだよ、ビビらせんなよ」

「勝手にビビってんじゃねーよ」

 笑って兵士長と別れる。


 つか、そもそも日本だったら、やっぱり総理なんかと会うんだろうし、そう言うことだよな。

「うへぇ、やだなぁ」

 まぁ、そんな凄いユニークスキルじゃないし、なんとかなんだろ。


 だが、唐突にその時がやって来た。

「渡り人のハルだな、王様の勅命だ。一緒に王都に来てもらう」

「…はい」

 兵士長の野郎、昨日の今日じゃねえかよ。

8

「テメェ兵士長!昨日の今日じゃねえかよ!」

「悪りぃな!俺も知らなかったんだよ」

 手を合わせてごめんと言う兵士長。

「ではな」

「あとで覚えとけよー!」

「忘れたーー!」

 くそ!あの兵士長め!

 俺は馬車に乗せられて周りは騎士に囲まれている。


「あの、俺はこれからどうなるのですか?」

 目の前の騎士に聞くと王様に謁見してもらうらしい。

「うへぇ」

「そのような言葉遣いはするなよ」

「へい」

 堅苦しいな。

 窓の外を見ると平凡な道をただただ走っている。

 

 つまらないので騎士に話しかける。

「給料はどれくらい貰ってるんですか?」

「それは言えん」

「暑いですよね」

「我慢しろ」

「……ひまなんだから喋り相手になってくれよ!」

「ぶっ!あははは」

 隣の奴が笑い出した。こいつとは気が合いそうだ。

「団長、もうちょっと柔らかく言わないといけないっすよ」

「仕事だから仕方ないだろ」

「それにしても面白い奴だな、俺はキースだ」

「俺はハル!良かったキースがいて」

「んで?渡り人はなんでこっちに来たんだ?」

「それが俺も分からないんだよ。暗い中歩いてたら森にいてさ」

 

 それからキースと喋りまくってたが、団長は無視だった。

「おいハル、ここで泊まるぞ」

「おー、街だな」

 思ったより街に着いていた。

 野宿かと思ってたがちゃんとしたところに泊まるらしい。

「ここで一泊する。お前らちゃんと警備をしろよ」

「「はい」」

 宿に着くと二人部屋だった。

「え?団長と一緒?」

「そうだ、何か問題があるか?」

「いえ。ありません」

 あるなんて言えないだろうよ!

 軽鎧を脱ぎ剣帯も取る。

「随分と手慣れているな」

「だって冒険者ですからね」

「そうか、なら剣帯は外すな、いまから下で飯を食うぞ」

「へーい」

 剣帯をまたつけて下に降りる。

「ハル!ここだ!」

 キースが四人席をとっていた。

「キース、と?」

「ウェイドだ」

「よろしくな」

「あぁ、よろしく」

 騎士兜をとったキースは若くて金髪のチャラそうな見た目でウェイドは茶髪短髪のガタイのいいおっさんだった。

 騎士兜をとった団長はどこのイケメンだよってくらいイケメンでビックリしたぜ。

「団長の名前は?」

「ライドだ」

「うっす」

 飯を食いながらキースと喋り、ウェイドもエールを飲んで少し砕けてきた。団長はエールに手をつけない。

「団長はエール飲まないんすか?」

「仕事中だからな」

「そっすか」

 団長の堅物。

「キースはなんで騎士になったんだ?」

「俺は剣術が得意でな、一応は子爵家の三男坊なんだぜ?」

「げ、貴族かよ」

「貴族って言っても三男だからな、そこらの男と変わらんのよ」

「そんなもんかね?貴族って難しいな」

「そうでもないぞ?親の脛齧りから卒業したら次男までは家督を継ぐかもしれないからな。三男は何処かでやってくしかないってことだ」

「ふうん、んで騎士になったのか」

「そうそう、まぁ団長みたいに騎士爵になれば別だがな」

「キース、言い過ぎだ」

「はい!すいませんでした」

 キースも上司には頭が上がらないようだな。

「まぁ、だいたいわかったよ。ありがとな」

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