第2話 渡り人
「やっと着いたな」
なんとか城壁のあるところまでやって来た俺は剣を四本、本を一冊抱えてパンツ一丁だ。
「中に入れてもらえるかな?」
と思ってたら、兵士の人が来て、
「渡り人か?その格好は追い剥ぎにでもあったか?」
「渡り人?ってのは分からないけど、気づけばパンツ一丁で森の中にいたんだ」
納得した様に兵士の人が連れていくと言うか連れて行かれる。出来ればこれも持って欲しい。
「渡り人だと思われます。兵士長を呼んでくるので」
と言われて門の前に置いていかれる。
並んでる人達の目が恥ずかしいが、カッコつけたくてもパンツ一丁じゃカッコつかない。
「渡り人、こっちに入れ」
「は、はい」
呼ばれるがままガチャガチャと音を立てて中に入ると持っていたものをそこに置いていいと言われて、ようやく重さから解放され背伸びをする。
「この部屋に入れ」
「はーい」
なんと言うか石造りの簡素な部屋に机と椅子があり、すぐに椅子にすわる。
「ゔあー、疲れたぁー」
「疲れてるところすまないが話はいいかな?」
入って来たのは兵士長だろう。角刈りに鎧を纏っている。そしてそのまま向かいの椅子にドカリとすわる。
「渡り人なんだろ?」
「たぶんそうだと思いますが」
「ずいぶんとゴブリンをやったみたいだな」
「やっぱりゴブリンなんですね!異世界だと思ったんですよ」
人と話すのがこんなに楽しいなんて、
「で、馬車が追われているのをサッと避けると四匹もゴブリンがいて!」
「倒したんだな」
「そうなんです!」
「渡り人確定だな」
兵士長はうんざりした様な顔で何かを書いている。
「さて、そのままでは風邪を引くからこれを着ろ」
渡された服を着ている間に兵士長は何処かに行ってしまった。
「おぉ、着心地は悪いけどしっかりしてるな!」
「それが一般の服だ。あとこれが証明書だ、無くさない様に」
「はい!」
ポケットにしまうと今度はズタ袋を渡される。
「渡り人には百万ゼルを渡す事になっている。使いやすい様に鉄貨や銅貨もはいってるから無くすなよ?あとはゴブリンの剣と魔導書はどうする?」
「剣はあったほうがいいですよね?」
「買ったほうがいいな」
「魔導書とは?」
「火魔法だし、あった方がいいな」
「ならいります」
「ほれ、銅貨四枚で引き取ってやるよ。あとこれもやる。剣術の指南書だ。」
指南書と銅貨を四枚渡されたので袋にしまう。
「よし!あとは冒険者登録をして終わりだ」
「冒険者!すげぇ!」
「凄くない、とりあえずだ」
兵士長に着いて街の中に入ると中世のような石畳みで馬車が走っている。建物も含めてすべてがファンタジーだ。
「ここがアポーンの冒険者ギルドだ、入るぞ」
「アポーン?」
「この街の名前だ」
「はーい」
中に入ると凄い目つきで睨まれるが兵士長だと分かり目を逸らす。
「渡り人だ、冒険者登録を頼む」
「はい、わかりました、ではこちらに手を置いて下さい」
「はい、わかりました」
小声で喋っているので俺も小声になる。
水晶の様なものを触ると少し光って消えた。
「はい、登録完了しました。Fランクからですのでこの冊子を読んどいて下さいね」
「はい!」
「あとは、宿だがなにか要望はあるか?」
「シャワーはついてますか?」
「シャワーくらいついてるぞ」
「なら安全なところで」
安全ならどこでもいいかな。
「それより、軽鎧と剣くらい買わせるか。着いてこい」
兵士長に着いていくと防具屋で軽鎧と武器屋で片手剣を買う。五万ゼルもした。
「安いほうだぞ?そしてここに泊まれ」
「錆猫の居眠り亭?」
「そうだ、安いし安全だからな」
中に入ると女将と兵士長が何か喋ってるが、こっちこいと呼ばれる。
「こいつが、えーと、名前は?」
「ハルです」
「だそうだ、とりあえず一週間よろしく頼むな」
「あいよ!私は女将のモニカ、よらしくねハル」
赤髪の恰幅のいいおばさんだ。
「よろしくお願いします」
腰を曲げて挨拶をする。
「あらちゃんと礼儀がなってるじゃないか、一泊朝食付きで五千ゼル、一週間で三万ゼルでいいよ」
「やった!一泊分ういた」
「あんた計算が早いね」
「これくらいはできますよ」
四則演算くらいはできるさ。
「なら俺はこれで、あとは問題を起こすなよ」
「はい!あ、名前は?」
「俺はゴズだ」
「ゴズさんありがとうございました」
「いいってことよ」
手をひらひらさせて宿から出ていく。
「よし、前金だから三万ゼルね」
「あ、はい!」
ズタ袋から三万ゼル、大銀貨三枚を払う。
一ゼル=鉄貨
十ゼル=銅貨
百ゼル=半銀貨
千ゼル=銀貨
万ゼル=大銀貨
十万ゼル=金貨
その上もあるらしいが、まあ目にする事はないそうだ。
「部屋は二階の突き当たりだよ。201号室ね」
「はい!」
部屋に入ると窓を開けて空気の入れ替えをする。ズタ袋をテーブルに乗せ、ベットに横になって。
寝てしまった。
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