第5章 ドライブデート
第28話 女子高生「おっぱい見たの、バレてますよ?」
あくる日曜日。
「五十嵐、お待たせ!」
レンタルしたプリウスで五十嵐宅の最寄駅に乗りつけた俺は助手席の窓を開けて声を張りあげる。ロータリー脇のベンチに座っていた教え子はぴょこんと立ち上がり、飛び跳ねるうさぎみたいに駆け寄ってきた。
本日の服装はロゴTシャツとタイトなデニムスカート。先日のシックな黒ワンピと違いポップさのあるお出かけスタイルである。五十嵐の元気でお茶目な一面を表現したコーディネートだ。
「全然待ってませんよ、先生! 乗ってもいいですか?」
と尋ねつつ返事を待たずに助手席に乗り込む五十嵐。分かりやすくはしゃいでるなぁ。
「後ろの席でもいいんだぞ? そっちの方が広いし」
本日の天気は清々しい五月晴れ。おかげで日差しが強く助手席では眩しいだろう。ちなみに俺は薄い色のサングラスで対策済み。視力矯正はコンタクトレンズだ。
「いえ、助手席がいいです!」
俺の勧めを固辞してむしろそう所望した。快適なリアシートを遠慮する様子はなく、むしろ望んで座りたいという感じだ。
車から見る景色好きなのかな? ドライブしたいと言い出したのも五十嵐だし。
まぁ、俺は運転に集中するから好きにすればいいけどさ。
「シートベルト締めた?」
「バッチリです!」
気合い十分にガッツポーズしてシートベルト装着を報告。
目視で確認すると確かに黒いベルトが彼女の肩から腰にかけてを押さえつけている。必然、そのベルトは乳房の間に挟まり、元来少女にしては大き目な膨らみを強調している。
いわゆる『
「センセイ、今胸見ましたね?」
五十嵐が細めた目で勝ち誇ったような微笑みを浮かべた。やばい、視線に勘づかれた。違う、不可抗力なんだ。
「見てない」
「ベルト見てただけですか?」
「そう、ベルト見てた」
「ふぅん。じゃあわざと胸見たわけじゃないんですね」
「うん、わざとじゃない! 不可抗力!」
「やっぱり見てたんだ!」
しまった。誘導尋問か!?
だってしょうがないじゃないか! 不意打ちで目の前に強調されたおっぱいが出現したらつい見ちゃうのが男の性なんだもん!
「ふふふ、しょうがないですよね。男の人だとどうしても視線が向いちゃうものですよね?」
うっ……見透かされてる。
「でも、普段の先生からはあまり視線を感じないような気がするけど、なんでだろう?」
独り言のように疑問を呟く五十嵐。名誉のために一応答えておこう。
「生徒をそういう目で見ないように気をつけてるんですぅ」
女性は視線に敏感だからね。失礼の無いよう自分を律しているのだよ。もちろん女性の教職員に対しても気を遣っている。
もっとも、つい視線が引き寄せられることもある。例えば忙しくて欲求不満な時に美墨先生のデカパイが急に飛び出してきた時なんてもう……。
って、俺は何を考えてるんだ。
「あはは、やっぱりセンセイって紳士ですね! 同年代の男の子はジロジロ見てくるから嫌なんですけど、センセイなら安心です」
コロコロと笑う五十嵐からは信頼を寄せている証が含まれている。だがなぜか素直に喜べないのは手玉に取られている気がするから。
これから五十嵐は俺のことを「我慢しておっぱい見ないようにしてるんだなぁ」とか見透かして学校生活を送ると思うと恥ずかしくなってきた。
羞恥心に悶えるのをグッと堪える。そんな俺に五十嵐はふふっと優しく笑む。
「でもね、センセイ。今日はそんなふうに我慢しなくても良いと思いますよ? せっかくの休日ですもん。イキヌキ、しましょう?」
どこかアンニュイさを孕む緩い微笑み。元気さやお茶目さ、この頃ふと見せる大人びた色気とも違う、心にするりと入り込んでくるようだ。
もうこの子は子供じゃなくない。そんな顔をされると締めていたものをつい緩めてしまいたくなる。
「一緒に、楽しみましょ?」
シフトレバーに置いた左手の甲をツンとイタズラに突かれる。
その意味はただ戯れているのか、あるいは誘っているのか――。
「てい!」
「あでっ!?」
判断しかねた俺は彼女のつむじにコツンと手刀をお見舞いした。
「変なこと言わない。君を出先から家まで送り届けるまで気を抜けないんだよ、俺は」
五十嵐は茶目っ気たっぷりに笑って誤魔化した。反省しているのか怪しいなぁ。
変な意味に取るな、俺。どうせおちょくってるだけだ。
妙な気を起こすと壊れるぞ、何もかも。
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