第6話 「どこに連れて行く気だ?」(第一王子視点)

「――起きろ」


 いつの間にか眠っていたらしい。目が覚めた時、既に異母弟の姿はなく、代わりに見慣れない牢番二人が立っていた。


「出ろ」


 牢屋の鍵を開け、無遠慮に牢番が入ってきた。手足の鎖は外れ、代わりに首輪と、手首には縄を括られた。錆びた首輪は酷く重く、鉄の臭いがやけに鼻をつく。特に手首は牢番がこれ見よがしにきつく縄を括り着けてくる。


 一瞬、痛みを堪えた。


「ざまあみろ」


 こちらを嘲る牢番の顔は酷く醜かった。


「来い」


 強引に首輪を繋ぐ鎖を引っ張られたせいで、立ち上がることができず、無様に倒れ伏す。


「――ッ」

「おい、何をやっている?」


 言いながら、牢番達は笑っている。

 王族だった男が今や自分より格下になったことが余程嬉しいと見えた。


「さっさと歩け」

「どこに連れて行く気だ?」


 なおも鎖を引こうとする牢番に、私は言った。

 ただ、牢番の目を見た瞬間、


「民衆がお待ちだ」

『国王陛下がお待ちでございます』


 下卑な笑みが、憐れみすら籠った目を向けてきた使用人と何故か重なって見えた。


「私の処刑日か」

「ああ、急遽決まったからな」


 故意に言わなかっただけだろう。気付きながらも何も言わない私に、牢番二人は白けた様子だった。


「さっさと来い」

『国王陛下がお早めにとのことでした』


 半ば引き摺られる形で立ち上がり、私は牢獄を出た。繋がれた首輪は酷く重く、歩くことが殊更遅くなる。


 けれども、命じられるがまま、国王の私室に向かっていた足取りよりかは軽く思えた。


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