第一七〇話 兵法は扱うには先入観を捨てるのが大事かもしれない
私は
姓は
これよりニ七年後のニ一一年、曹操に対して涼州で反乱を起こした
その後、
以上の功績により夏侯淵は
「あれ……ちょっと待って……」
私は横で
夏侯惇も夏侯淵も曹操の挙兵時に付き従った人間だ。だが、曹操はまだ挙兵してない、今の肩書きだけ見れば宮仕えの高官だ。
元々、曹操の父・
私がこの時代に転生したことで些細な変化が起きてるのはすでに承知しているが、もう些細な変化では済まなくなってきた。
「
「ええ」
色々と思慮していると劉備がこの場を去るように促してくれた。
「待て、敵がいないと決めつけるのは時期尚早であろう」
曹操が予想外のことを言ってきたので私達は足を止めた。
「
「そんなところだ」
夏侯淵に応じた曹操は歩き出す。
「お前達も来い」
次に夏侯惇が曹操の背中に顎を差し、私達に移動するように促す。私以外は半信半疑ながらも曹操に付いて行った。一方、私は本来の歴史での曹操の実績を知っているため、疑いはしなかった。
「敵影を見かけないどころか、隠れる場所も無いように見受けられるが?」
「俺もそう思うが孟徳が判断を間違えるところはあまり見たことないな」
「ほう……まあ、拙者の主である兄者も
関羽がなんか張り合っている。
「だが、孟徳の方が上手であることには変わりないがな、なんせ俺達が気付かない異変に気付いたのだから」
「いやいや、兄者の方が」
「いやいや、孟徳の方が」
なにやってんだ。主を使ってマウントの取り合いを始めてるぞ。
「やめぬか
「むむむ……」
関羽は劉備に注意されて口を噤んだ。何がむむむだ。
それから、しばらく歩いたとき、私は思わず口を開く。
「この場所……確実におかしい」
「確かに妙だ」
劉備は私の言葉に同調していた。その後、黄龍も「なるほど」と言って唸っていた。
「気付いたか? この場所は人が立ち入らん。故に鳥類や昆虫が辺りにいるが不自然にもこの場所を避けるように鳥が飛び、地面には虫の姿が見かけん」
曹操の言う通り周囲の地面を避けるように鳥が両側に降り立っていた。また、先程までよく見かけたミミズやタンゴムシもいない。その不自然な点を除けば、草木の生えた地面でしかない。
引き続き曹操は状況を説明する。
「兵法書に書いてある『鳥立つは伏すなり』という言葉は知っているだろう」
私と劉備は頷く。
彼が言ったのは『孫子』の行軍篇に記載してある言葉だ。簡単に言えば鳥が飛び立てば伏兵がいる証拠という意味だ。
「つまり、鳥類が寄ってない場所に人間がいるということだ」
曹操はそう言い切ると地面を見つめる。
その後、張飛と夏侯淵はハッとした顔をして口を開く。
「じゃあ、この下に黄巾賊がいるってことじゃねぇか!」
「なんてこったあ!」
兵法書通りに『鳥立つは伏すなり』という言葉を受け取ると鳥が飛び立つ様子を見れば、数里先にいる敵を発見できるという意味だ。それに関する逸話として日本では平安時代に
私も『孫子』の記述を頭に叩き込んでいるが、周囲に隠れる場所がないという先入観に捉われていた。まさか、地面の下に隠れているとは思わなかった。
まだ、敵の姿を確認できてないので敵が隠れていると決めつけるのは早いかも知れないが、十中八九、間違いないだろう。
というか……張飛と夏侯淵が大声出したせいで地面の下がなんか騒がしいんですけど!?
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