第一六九話 気になるところには人が集まるらしい
野営の準備を終えたあと、私は愛刀を後ろ腰に携え、火が付いてない松明を帯に差して移動した。
向かう場所は野営近くにある高所だ。どうにも、敵の気配がないのがきな臭いので
私が高所を見上げて腕を組んでいると「待たせたな」という黄龍の声が聞こえたので背後を振り向く、
「おお……」
小さな声で感嘆してしまった。黄龍は
「よう
張飛が駆け寄って、拳を繰り出した。夜なのに元気な人だ。
「うぇい!」
とりあえず、張飛のノリに合わせて、私の拳を張飛の拳にぶつけると――――私は軽く後方に吹っ飛んだ。
「
張飛が繰り出した拳の勢いが強すぎて思わず尻餅をついてしまった。私は右手をひらひらと宙で仰ぐことで痛みを緩和させていた。
「
劉備が注意すると、張飛は申し訳なさそうな顔をした。
「
「なんで!?」
私は吹き出しそうになりながら言葉を吐きだす。
「田ちゃんなら大丈夫かなって思って」
「結果、大丈夫じゃなかったですけどね」
私は立ち上がりながら体に付いた土を両手で払う。
「
その間に関羽と黄龍はすでに高所へと上っており、劉備に急かされたので私達も高所へと上った。
草木が生えた緩やかな斜面の上で歩を進めると、辺り一面は背の低い雑草が生えた平坦な場所だった。
「何もありませんな、鳥類や昆虫ならいるが」
関羽は周囲を見渡す。彼の言う通り人の姿はない。
「地面を見るとミミズやらダンゴムシばっかで人が立ち入った形跡はないようにも思えるぞ」
次に関羽は顎を擦りながら考え込んだ。
黄龍は溜息を吐きながら口を開く。
「杞憂だったか……ん?」
言葉を詰まらせて横の方を見る。
斜面から三人の男が上ってきていた。そのうち二人は
もう一人は誰か分からないが只者ではない雰囲気だった。男はおでこを晒し、肩に届くか届かないぐらいの髪の長さだ。不敵な表情から好戦的な一面が窺える。また、恰幅が良く、腰に矢筒、背中に弓を備えていた。そして、今の夏侯惇同様、
「劉備に田豫か……目的はわしらと一緒だな」
曹操が私達を視認するとおもむろに近づく。
「
劉備が曹操に応じていた。
「うむ、そんなところだ。ここは一見すると何もないようには見えるな」
一見? つまり、よく見ると何かあるということなのだろうか?
私と劉備は頭上に疑問符が浮かぶような表情をしていた。経験の違いというべきなのかもしれない。曹操は年上で、宮廷に仕えている人間だ。知識だけではなく経験則による知見を得ているはずだ。
「若いのにちっから強いなあ!」
「へへっ!」
気付くと張飛と曹操が連れて来た名前の分からない男が手押し相撲をしていた。
「
曹操は張飛と遊んでいる男に声をかけると、男は慌てて曹操の下へと戻る。
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