第一五四話 抜け道の先には……お宝!?
「開けるぞ」
「ええ、お願いします」
田疇は勢いよく横開きの戸を開けると、
「えっ」
目の前には黄色い鉢巻を巻いた若い黄巾賊がおり、私達を見て声を漏らしていた。
そして、賊は戸をそっと閉じた。その様子を見た私は田疇と向き合う。
「戸を蹴破ってください」
「分かった……はっ!」
田疇が気合を吐いて戸に向けて前蹴りをすると、戸はぐにゃっとひしゃげた。さらに彼はもう一度、蹴りを食らわせて戸を室内へと吹っ飛ばした。
「ひぃ!」
室内にいる賊は腰を抜かしたのか尻餅をついていた。
「お前がこの城に巣くっている黄巾賊の指揮官か!」
田疇は両刃の剣を相手の首元に突きつける。
「ち、違う! 俺じゃない!」
「どう思う
「とりあえず連行しましょうか」
「そうだな。おい、こっちに来い!」
「ひ、ひぇぇぇ~」
賊の指揮官と思わしき男は田疇に連れていかれた。
これでこの
なんの変哲もない部屋だ。広さは八畳程度で床には木板が張ってあった。そして、壁には丸い窓があった。
「違和感がある、なんでこの部屋には何もないんだ。」
私は部屋の中央に立つ。
空き部屋に賊がいたのはなんでだ?
身を隠す場所がここしかなかったからなのか、それとも何か別の目的があったからなのか?
「!」
私は思わず真上を見てしまう。何故なら、顔に砂粒サイズの何かがかかったからだ。
「木くず……天井の破片が落ちてるのか」
天井は幅一尺(約三〇センチ)の木板が列になるように張ってあり、木板の隙間からポロポロと木くずが落ちているのが見えた。
「まさか……」
とあることを思いついた私は直刀を鞘ごと後腰から抜き、右手で柄を握る。そして、部屋の隅まで下がって、
「はっ!」
走りながら、部屋の中央で跳躍し、鞘の端で天井裏を突くと――ガタッと天井の木板が簡単に浮いた。
おそらく、この天井裏には抜け道か隠れ部屋がある。何もない空き部屋に賊がいたのは天井裏に行こうとしていたからに違いない。
もし、隠れ部屋なら何か大事なものを隠している可能性がある。
私は期待に胸を膨らませて他の部屋から足の踏み場になるものを探しに行った。幸いにも四足で木製の卓が隣室にあったので、それを持っていった。隣室で物色している兵士には怪訝な目で見られたので「卓が欲しかったんですよ」と適当なことを言っておいた。
次いで、元の部屋に戻った私は卓を部屋の中央に置き、
「よいしょっと」
卓の上に乗って、ぴょんと跳んで手のひらで木板を浮かしながら、天井内部に投げ飛ばした。同じ要領で私は木板は剥し続けた。外すことができる木板は三枚だった。
三枚で三尺(約九〇センチ)の幅なので十分に人が出入りできる隙間ができた。
「さて何が出るやら……」
機密情報や貴重品があるかもしれないという期待に胸を膨らませて私は再び跳躍し、木板に手をかけ、なんとか天井裏へと侵入した。
「え?」
思わず声を漏らしてしまった。天井裏に到達した私は、人が二人分入れそうな穴を見つけた。
何が出てくるのか分からないので躊躇してしまい、思わず生唾を飲んでしまった。しばらくして、意を決し、這いつくばりながら穴に入った。
ほふく前進していると、緩やかな傾斜がついてきた。方向的に宮殿の中心に向かっているような気がする。
しばらくして、
「はぁ……はぁ……地味に疲れた」
緩やかな傾斜を這いつくばりながら上ると、進んだ先に日の光が差し込んでいた。
外に繋がっている!
私は光に向かって進むと、抜け穴の終わりが見えた。
進んだ方向からして抜け道はないと判断したので隠し部屋があるに違いないと確信している。
私は勢いよく穴から飛び出した。
その部屋には天井がなく、上空に太陽が見え、石が壁と床に敷き詰められていた。どうやら宮殿の中央に屋上があったらしい。宮殿の外側からは屋根に阻害されてこの場所は見えない。不思議な構造だ。
っと、それよりこの部屋にきっとお宝がある――
「なんだ、てめえは!」
――否、黄色い頭巾を被ったおっさんがいた。
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