第一三五話 本気?それとも軽い手合わせ? 田豫vs程全、閻柔
私の背後には未だに尻餅をついている
さていい戦いを演じたうえで負けてみせようか……とはいえこの二人相手に気を抜いたら負けそうだ。
「そこだあ!」
程全が前へと足を踏み出し低空姿勢からの横薙ぎを繰り出す。
「そい!」
さらに横から閻柔が槍を振るう。
「くっ!?」
私は冷や汗を掻きながら程全の攻撃に対しては背中をのけ反り、閻柔の攻撃に対しては首を捻ることでよける。
(て、手加減しろ……)
小声で文句を言いながら、フラフラと後退する。
「ふぅ……」
私は覚悟を決めたように前を見据える。
ならば。
私には三つの武器――逸脱した空間把握能力、筋力の出力上昇、視覚認知能力の向上がある。そのうち二つを併用しよう。
「制限解除、筋力の出力を二倍に――」
「――知覚力の向上」
私は筋肉の出力を二倍に抑えることで視覚認知能力にも気を配る。そして普段から備わっている空間把握能力と合わせることで一段階上の攻撃、防御、回避を行える状態となった。
名付けて万能モード……いや、この時代っぽくないな。
「万全形態」
こんな感じでいいだろ。
「雰囲気変わったな!」
と言い終わるや否や、閻柔は槍を足元に突き出してくる。
私は槍の柄を踏みつけようとしたが閻柔は槍を引っ込めた。
「釣りか!」
私は何もない地面を踏みつける。
「はっ!」
「うわっ!」
後方から程全は太刀を振ってきたので地面に手をついて避ける。それから私は横に転がって立ち上がる。
殺す気か。
いやでも程全は私が避けると思ったのだろう。にしても
「せいや!」
「ぐっ!」
立ち上がったところに閻柔は槍の柄をぶつけてくる。私は肘を立てて防御するがヒリヒリと肘が痛む。
さらに迫ってきた程全と得物を五合ほど打ち合ったあと、閻柔は槍を突き出してくるので、回り込んで回避する、それを三度ほど繰り返す。
「ふぅ……はぁ……」
私はゆっくりと呼吸する。
「はぁ……」
「なんかこの前より強くなってないか?」
溜息をつく程全と疑問を抱える閻柔。
ここ最近、腕の立つ者と戦ってきたせいで急成長しているのは自分でも分かるが。
「さすがにキツイな……」
私はぽつりと呟いたあと、頷く。
この頷きは二人に対するサインである『ここでそろそろ幕引きにしよう』という。
「「とう!」」
程全と閻柔は持っている得物を振り上げてくる。それに対して私は愛刀を振り下ろす。
「ぐっ!?」
刀は私の手元を離れ、頭上を越えて吹っ飛ばされる。
「ウワアアー」
私は尻餅をつき、
「マ、マイリマシタ!」
降参の意を示す。何故か私の言葉に怪訝な顔をする二人。
(お前棒読み過ぎるだろ)
程全が小声で突っ込んできた。
(それは言うな)
私は口を尖らせた。
「そいやあ!」
「うがっ⁉」
ここで閻柔が首後ろに槍の柄をぶつけてきたので気絶するフリをするが、
「うっ……がっ……
予想以上に痛いので苦しみ悶えてしまう。
「…………」
とりあえず顔を歪めながら目を閉じた。
後のことは程全と閻柔がなんとかしてくれるだろう。
「へっへっ! 痛い目に合いたくなかったら持ってるもんで一番高価なもん出しやがれ!」
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
何故か賊のロールプレイが上手い程全と恐怖してそうな左豊の声が聞こえる。
「こ、これを!」
「なんだこれ
左豊は何かを程全に渡したようだ。
「馬鹿、これ
「あっ」
閻柔に間違いを訂正される程全だった。
「か、夏舎先生! 私はどうすれば!」
左豊は倒れているであろう夏舎に声をかけていた。しかも先生と呼んでいる。
「ろ、
夏舎は声を振り絞った感を出していた。
「す、すみませんでした
誠意の籠ってそうな左豊の声が辺り一帯に響き渡っていた。
それから何故か左豊は真っすぐ
これで一安心だ。私もさっきの手合わせで体の状態が戻っていることを確認できた。これで黄巾賊との戦いに専念できる……と思ったのだが戦場で異変が起ころうとしていた。
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