第一一八話 乱勃発から三ヶ月経つので独白してみた
黄巾の乱勃発から三ヶ月が経過した。
今に至るまでの状況を整理しようと思う。
少し遡って乱勃発から二ヶ月後、つまり
現皇帝である
派遣されたのは三人の
そして私塾時代、時折、勉学を教えてくれた
皇甫嵩、朱儁、盧植は後漢末期の名将だ。特に皇甫嵩は二人より軍事面の才能が抜きんでている。とはいえ、三人とも
朝廷の動きは前の世界線と変わらない。
変わったのは私がいる
次々と黄巾賊を撃ち破ってきたせいか南の冀州から黄巾賊が北上してくることはなくなった。そして数十万にも及ぶ流民が幽州へと流れてきたのだ。
そしてこれと同じ現象が起きている場所もある。皇族である
だがそれは
そして、それに連なって私こと
ちなみに劉備は没落した皇族として国を憂い旗揚げしたという話が伝聞し、民から尊敬され希望の象徴となった。そして彼は一つの地方を守り抜いた義勇軍を率いていた男として『
私が劉備に
一方、私は相変わらず『黄巾殺し』の田豫という物騒な異名のまま全国に知れ渡ってしまった。
三人の頭目――
正直、今、挙げた三人より
話は巻き戻り現在、義勇軍達はかつて黄巾賊に占拠されていた広陽郡最南端の県――
「
私は県城内にある宿舎の一室におり、兵法書を読んでいると戸の外から声をかけられた。
「入ってください」
戸の外にいる人に呼びかけると勢いよく戸が開かれ、私は兵法書は卓に置く。
「どうもどうも!」
官軍なのに腰が低い男、
「どうかしました?」
私は周琳の方へ寄る、彼は手に
「これ、あの劉備って人宛てなんですけど、俺あの人どこにいるか分からなくて」
「私が届けますよ。丁度、この先ここに留まるべきかの話を彼としたいと思ってましたし」
「幽州から出るってことか」
周琳は少し間の抜けた顔をする。
「ええ、義勇兵は戦わなければならない立場ですからね。ずっとタダ飯を食っているわけにはいきません」
「でも田隊長ならもうずっとここにいても食っていけるって!」
「義勇兵は私と劉備殿が率いているの合わせたら八〇〇〇人はいますからね。全員を食べさせようと思ったら敵を討伐し続けて官軍や民から施しを受けるしかないんですよ」
「世知辛っ!」
率直なことを言ってきた。
「周琳も義勇兵になりますか?」
私はおとぼけてみた。
「うーんどうしてもって言うならだけど! でもな……給料出ないしな」
「ですよね。周琳は今の立場を守って生きた方が楽ですよ」
「田隊長が言うならきっとそうだな」
うんうんと頷く周琳。
言ってしまえばフリーの傭兵より正規兵の方が安定してお金を稼げる。当たり前の話だ。
現代風に例えると正社員が安定して一番楽に決まっているということだ。人によって大事なものが違うので一概には言えないが。
それに周琳も昔からの知り合いだし、下手に危ない橋を渡ってほしくないという思いもある。
「では私は劉備殿のところに行ってきます」
「じゃ、またな!」
私は竹簡を持って劉備のところに向かったのだった。
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