第四六話 なんとなく劉備の人柄が分かった
「じゃあな
「また明日、
彼らは私と劉備の真向かいに位置している。また、私の右手はさっき拾った
「仮に
意味の分からない冗談を横にいる劉備が言いだす。
「いやいや、俺のお父さんが学費負担してるから来いよ。また怒られるぞ」
劉備の連れの一人――
「それもまた
「そんなわけあるか!」
劉備の言葉に劉徳然がツッコむと、
「「はっはっは」」
劉備ともう一人の連れ――
劉徳然と高誘も文献に名が残っている人物だが仲良くなっても大して旨みがなさそうなので私塾ではそこそこ話せる程度の仲になっておこう。
「では行こうか。着いてくるといい」
腹黒いことを考えていると劉備は私に移動を促す。
「ええ、ありがとございます」
「なに礼には及ばん」
私は仔馬の
劉備とも交流を深めれるし公孫家の邸宅にも訪れることができる。是非とも
私達は西門から出て、整備された道を歩いていく。左右には田畑が広がっている。
「
「安心せよ。そう遠くはないはず、五里歩いた先にある」
「それなら良かったです」
五里……二キロ近くということか。
前世だったら二キロでも歩くのが嫌だったが今の私はこの時代の厳しい環境と積み重ねてきた鍛錬により、肉体的にも精神的にも成長しているので数キロ程度は嫌とは思わない。
「おお、劉。県令様の家へ向かうのかい?」
「そんなところかな」
歩いていると農作業をしている男性が劉備に話しかけていた。さらに年配の女性が私達に近づいてきて、
「劉ちゃん柿いるかい? そこの坊主もどうだい?」
竹籠いっぱいに入っている柿を見せて言う。
「タダなら貰いますよ」
でた、一言多い劉備ジョーク。
「あ、はは。お金なんか取るわけないだろ」
女性は劉備に柿を渡した……籠ごと。
「こんなにいいんですか?」
「別にいいさ」
私の問いに女性はあっけらかんと答えたあと、別れを告げて去っていった。
「ブルルルッ!」
仔馬は劉備が持っている竹籠を見ながら鼻を鳴らす。
柿が欲しいのだろうか?
「よかろう」
何がよかろうなのか分からないが劉備は右手で柿を取り出して仔馬の口に持っていくと馬はムシャムシャと食べだした。
「馬って柿食べるんですね」
「余も初めて知った」
「えぇ……」
知らずにあげたんかい。
「ただ、馬は臆病な生き物で初めて見る食物に対しては警戒するであろうから躊躇せずに食べた辺り、柿を食べたことがあるに違いない」
「なるほど」
少し生物の知識に欠けているところがあるので勉強になる。
――四里ほど歩いただろうか、視界の先には大きな邸宅が見える。あそこに公孫瓚がいるに違いない。
「ところで
歩きながら私は気になったことを訊く。
農夫といい柿をくれた女性といい、ここに来るまでに劉備はやたらと声を掛けられていた。
「あちらこちらに歩き回っておるからな。体動かすために農作業を手伝ったり、賭け事で知り合った人と話が盛り上がったりと、自然と仲良くなってる気がする」
コミュ強ってやつか。
さらに劉備は言葉を紡ぐ。
「あとは高名な人と話したり、商人と話していると勝手に人脈が広がっているという感じだろう」
「さすがですね」
「そういう
「ま、まぁ、勉強しましたからね」
しどろもどろに答えてしまう。
「そなたは子供なのに年上の様に感じる時があるな」
「そ、それぐらい凄いと思ってくれてるってことですかね。いやぁ、照れますよ」
私は後頭部を右手で掻いて劉備の目を見ずに言う。
本当に照れているわけではなく動揺していた。
私の内面を見抜いているのだろうか?
流石に、転生して田豫になりました! なんてことは分からないと思うが私の異様さに気付いているのかもしれない。そういえば、文献を読む限り劉備は人を見る目がかなりあったような。
実際に彼と話してみると人と交わることを好んでいて冗談も言うが、ただ何も考えていないわけではないのが分かる。おそらく、その人柄、つまり彼の魅力が人々を引きつけることになるのだろう。
長年、流浪したのにも関わらず軍を持ち続ける人物になるから当然の帰結かもしれないが。
「この家が公孫瓚の邸宅だ」
そう言って、劉備は右手のひらで前方をさす。
いつのまにか公孫瓚の邸宅が目の前にあった。
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