第三一話 これから流行るパン食について
小麦を見つけた後、一旦、場を離れて高家の人々を厨房に集めることにした。彼らに私の案を進言して、有用性を語ってやる! という事だ。
今、周囲には当主である
「
先程、私は「
「小麦を使ったものが本当に売れるのか?」
「庶民はともかく舌の肥えたお偉いさんには売れないだろ」
なお、高家に仕えている者達は懐疑的な目を私に向けていた。無理もない。現在、小麦は粗悪な食品として扱われているのだから。
だが、彼らの言葉は覆せる! 前世の知識で!
「実は、
現皇帝――
「おお……」
周囲の人達は感嘆する。どうやら絶大な説得力があったみたいだ。凄く良い気分だ。
「しかし、どうやって洛陽の情報を手に入れたのかね?」
高輔は最もらしい疑問を口にする。転生者だから知っていました! なんて言える訳が無い。なので――、
「家の近くに寄った商人から聞きましたよ。他の商人も同じ事を言ってたので間違いありません」
というか、高輔、ちょろ過ぎる。
「どんなものが流行ってるの?」
「
玲華の質問に答えると、彼女は小首を傾げていた。
「聞いたことないんだよ」
「それを今から説明します。ちなみに先程言った、霊帝が好んだ主食が
「そんなの本当に作れるの?」
玲華が不安そうに言うと周囲の人達が思案顔を浮かべる。皇族が好む以上、高価値なイメージがあるのだろう。恐らくコストパフォーマンスの面で心配しているに違いない。
「皆さん、安心して下さい。小麦を小麦粉にするには少々、手間がいりますが
私は
二一世紀の言葉を借りるなら
どのようにして作るかというと、植物油とお湯で小麦粉に水分を浸透させた後にこねて『
ちなみに、三世紀頃――約一二〇年後には発酵技術が確立されてパン食は膨らんだものになる。もちろん私はその発酵法を知っているが、ここで持っている手札を惜しげもなく切るのは勿体無いので言わないでおこう。
「ただ、
私は思いつく限りのアイディアを出す。
「これはいけるかもしれない!」
「主食そのものを変える考え方が凄い!」
「うちの養子になって、娘と結婚してくれ!」
高家の人達は興奮し、私の案に賛同していた。わけの分からないことを言う人もいたが。
「お主を呼んで良かった……助かる」
「高当主、お褒めに預かり光栄です。ただ、まだ何も成し遂げてないので、感謝の言葉は事が終わった後でお願いします。この田豫、しばらく力添えできるよう尽力してあげましょう」
ここで謙遜するのがカッコいいと思ったのでやってみた。
「おお。お主は本当に素晴らしいの」
簡単に当主は感激した。これで私の人格面も評価されたに違いない。よしよし。
「田豫君、そんなキザだったけ……? もしかしてカッコつけてるの?」
「うっ……いや、違いますよ。思ったことを言っただけですよ……はは」
私の心を見透かすような玲華の発言にドキリとしてしまう。彼女は父親に「こらこら」と
今日のところは小麦を小麦粉にする作業に取り組むという事になり、翌朝、高家オリジナルの
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