第76話星を理解した一族
本日は大学もバイトも休みだった。
いつもより遅く目を覚ますと既にカグヤは起きていた。
「朝食の用意しておいたよ」
「ありがとう。助かるよ」
「うん。食べながらでいいから話を聞いて欲しいな」
「ん?大事な話」
「そう。とても大事な話」
それに頷くと一度立ち上がり用を足しに行く。
洗面所で顔を洗うとしゃきっとして部屋に戻る。
「では。どうぞ」
対面に座るカグヤに話を促すと彼女は一から話を始めた。
「うちの一族は代々嫌われ者の家系なの」
「でもカグヤのお母さんには友達が居るんでしょ?」
「うんん。友達が居るって言ったのはお父さんのことなの。お父さんが唯一の友達でそのまま結婚した」
「なるほど。嫌われ者の家系に婿に入ったってこと?」
「そう。周りに完全に否定されてお父さんは逃げるようにうちに婿に入った」
「今の僕の状況に似てるね…」
「そう。お母さんは知ってたの。いいえ。私も知っていると言ったほうが良いのかもしれない」
「どういうこと?何を知ってるの?」
「うちの一族の話をするね。遠い昔の先祖が好きな人と結ばれることが出来なくて星に願ったの。運命の人と出会わせて欲しいって。その人以外には嫌われても良い。私にとって唯一の存在に出会わせて欲しい。その強い想いを星は叶えてくれた。先祖は運命の人と出会い自分にとって唯一の存在と出会う。でもその代わり…周りからは忌み嫌われるようになった。星はしっかりと全ての願いを叶えた。その人以外には嫌われて良い。なんて願いまで叶えてしまった。そして、その願いは私達子孫にまで受け継がれている。願いと言うよりももはや体質に近い。先祖代々嫌われ者の一族は夜になると独りだったから星ばかりを眺めていた。血が濃い人は星の声が聞こえる。これから起こることを予見してくれたり、将来のビジョンを見せてくれたり。ずっと言ってなかった私の名字は
カグヤの話を最後まで聞くと何度か頷いて応えた。
「つまり僕はカグヤと結婚することになるのかな?」
カグヤは僕の言葉に迷いもなく深く頷く。
「でも僕の家族は絶対に反対すると?」
それにも同じように彼女は頷いて応えた。
「だからカグヤのお母さんは僕に良くしてくれたの?」
「それもあると思う。それに私の運命の相手、つまりは将来家族になる雪見はお母さんのことを嫌わなかった。お母さんも理解したんだよ。将来義理の息子になる相手だって」
「そっか。じゃあ僕は遠回りをしてたのかな」
「というと?」
「今までの人付き合いは無駄な気がしてならないよ」
「そうね…それは悪いと思ってる。でも出会っていきなりこんな話をしても信じられなかったでしょ?」
「そうだね。カグヤの置かれている状況を知ってやっと理解できる感じだよ」
「今がタイミングだと思ったから…」
カグヤの話に頷くと僕は破れかぶれではなく話を理解すると口を開く。
「じゃあ結婚するしか無いな。カグヤは運命の相手なわけだし」
「良いの?」
「運命の相手以上の存在なんて居る?」
「いない」
「だから結婚する。不満?」
「むしろ喜んで」
「じゃあGWにでも挨拶に行くよ」
「うん。その前に雪見の両親に会っておかないと。駆け落ちのように星解に婿に来るんだから。一応話は通さないと。必ず勘当されるけどね」
「もう大人だから好きにするよ」
「良かった。雪見が本当に運命の人で」
カグヤが用意した朝食を取り終えるともう一度洗面所に向かい歯を磨いた。
「早く子供が欲しい。早く家族になりたい」
カグヤの誘いに乗るように僕らは朝から気が済むまで身体を重ねるのであった。
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