第60話五月雨とデート1

さらりと別れてから女子からの連絡は多くなっていた。

「先輩!見てください!帰り道にいた猫ちゃんです!可愛くないですか?」

唐津から写真つきのメッセージが送られてきて返事を送る。

「かわいいね。野良猫にしては人懐っこいみたいだけど」

「そうなんですよ!昔から何故か猫に好かれやすいんです!」

「そっか。唐津さんの優しい性格が猫にも伝わっているんじゃない?」

「そうだと嬉しいです。あと、そろそろ名前呼びにしてもらえませんか?」

「五月雨さんって呼べばいいの?」

「はい!そう呼んでくれると嬉しいです」

「わかったよ。これからそう呼ばせてもらうね」

「ありがとうございます。そう言えば今週の土曜日って空いてますか?」

「予定はないから勉強するつもりだよ」

「邪魔しないので私も一緒していいですか?」

「良いけど。何処で勉強する?」

「喫茶店にしませんか?穴場を知っているので」

「わかった。じゃあ土曜日に」

「はい。正午集合でお願いしますね」

五月雨とメッセージのやり取りを終えると彼女は最後に喫茶店の住所を送ってくる。

本日も自宅で本番を想定したテスト勉強をすると土曜日を待つのであった。


土曜日。

目を覚ますと朝からシャワーを浴びて身支度を整えると荷物を持って家を出る。

五月雨に指定された喫茶店まで歩いて向かうと入店する。

店内は静かな雰囲気に包まれており客の年齢層も高めで落ち着いた場所だった。

奥のテーブルで五月雨は僕に手を振っておりそちらへと向かった。

「ごめん。待たせたよね」

「いえいえ。早く着すぎたのは私ですから。楽しみだったんです」

「そうなの?ただの勉強会で悪いけど…」

「良いんです。先輩と一緒に居るのに意味があるんですから」

「そう言ってくれてありがとう」

五月雨の対面の席に腰掛けるとウエイトレスにアイスカフェラテを頼みテーブルに参考書を広げた。

「勉強の方はどうですか?捗ってます?」

五月雨はコップを手にするとストローで中身を啜った後に口を開く。

「ん?まぁ普通だね」

「さらりさんと別れたショックで勉強にも手がつかない状況かと思っていました」

「いやいや。そこまで弱ってないよ。僕自身の性格を嫌われたわけじゃないし。現在の状況が僕らに別れを迎えさせたに過ぎないし」

「そうですけど…受験が無事に終わって同じ進学先に行ったら復縁するんですか?」

「いや…そんな約束はしてないよ」

「そうですか。先のことはわかりませんけど…とにかく今は勉強に集中ですね」

「そうだね」

返事を終えた所でウエイトレスがアイスカフェラテを持ってきてテーブルの上に置いた。

そこから僕は五月雨の存在を気にせずに勉強に集中していく。

テストを想定した勉強を続けていくと一区切り付いた所で手を止めた。

「凄い集中でしたね。かっこいいです♡」

五月雨は可愛らしく微笑むとどうやら勉強中の僕の姿を凝視していたらしく満足げな表情を浮かべた。

「そうかな…そんなこと初めて言われたよ」

「そうなんですか?何かに集中しているときの先輩は昔からかっこよかったですよ」

「そう…ありがとう」

店内の時計を確認して現在の時刻が15時過ぎなことに気付く。

「気を使えなくてごめん。お昼って食べた?」

「お昼は食べてないですけど朝食を遅めにしてきたのでお腹は空いてないです」

「そっか。じゃあ食事は次の機会かな」

「え!?またデートしてくれるんですか!?」

「これがデートかはわからないけれど…食事ぐらいだったらいつでも」

「やった〜!じゃあ次の予定を決めましょう!」

五月雨ははしゃぐとスマホを取り出す。

そのままスケジュールのアプリを開くと僕らは次の予定を決めるのであった。

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