第49話GW明けの風評被害
GWが明けた月曜日。
街には真夏並みの暑さが飛来していた。
学校へと向かう学生の中には衣替えをして夏服に変更しているものもいる。
半袖のシャツを着ている生徒と長袖のシャツを腕まくりしている生徒の二つに分類されている。
中でも長袖のシャツを腕まくりしている生徒は選ばれた目立つ生徒だけだった。
簡単に言うと人気があり、その格好を許されている生徒だけが長袖のシャツをおしゃれに着こなしている。
もちろん僕とさらりは大人しく半袖のシャツを着ていた。
「おい…何であの二人は半袖なんだ?」
「真田ハーレムのメンバーが半袖だと…私達が長袖を着てるのお門違いじゃない?」
「ってか真田先輩は何で謙虚なんだよ…。学年の人気者を二人も射止めているんだからもう少し偉そうにしてほしいよな」
「確かに…そうすれば男子からの攻撃の的になるのにな…」
「いや、そんな事したら南雲さんも黙ってないかもしれないぞ?俺たちは大人しくしておこ」
学校中の生徒がヒソヒソと声を潜めて僕らの会話をしていることを知りもしない。
知らない所で勝手に話は進んでいるらしく僕らはこの学校では特別枠の生徒として扱われかけていた。
「先輩!おはようございます」
さらりとともに教室を目指していると後ろから声が聞こえてくる。
唐津も半袖を着ていて他の生徒達は困ったような表情を浮かべていた。
「おはよう。あれ?美容室行った?」
「はい。この間、遊んだ帰りにカットモデルに誘われて」
「そうなんだ。髪色も変わってない?」
「はい。カットしてみたら髪色も変えたほうが似合いそうって言われて」
「へぇ。商売上手な美容師さんだね」
「いやいや。カット代だけでカラーもしてくれたんですよ。お得だったので助かりました」
「そうなんだ。凄く似合ってるよ」
「ありがとうございます。先輩に一番最初に見せたかったんです♡」
僕らの会話を聞いていたさらりは僕の脇腹を軽く小突く。
「彼女の前で他の女子とイチャイチャしない」
「イチャイチャだなんて…感想を口にしただけだよ」
「それでも。他の女子を褒めないでよ」
それに呆れたように苦笑してみせると唐津は悪い表情を浮かべた。
「束縛が強い女子は嫌われますよ?」
「うるさい。貴女も雪見くんを誘惑するようなことしない」
「はいはい。この程度、誘惑の内に入りませんよ?ただ本心を口にしただけですから」
「その方が余程質悪いじゃない…」
校舎の中で僕らのやり取りを見ていた生徒たちは再びヒソヒソと会話を始めていた。
「本当に一年まで真田ハーレムに入ったんだな…」
「噂は本当だったみたいね…」
「二年はどうなるんだ?大丈夫かな?」
「僕らのアイドルは毒牙にかけられないよな?」
「白ちゃんなら平気なはず。男子にまるで興味がないから。簡単に突っぱねるよ」
「だよな。本当に大丈夫だよな?」
僕らには聞こえない程度に会話を進めていた生徒たちの噂話は一気に学校中に広まっていくのであった。
二年生のアイドル的存在の生徒である
と言うよりも恐れに近い感情を抱いていた。
「私も真田ハーレムに入れられちゃうの…?汚される…」
清瀬はまだ起きてもいない出来事に頭を悩ませていた。
僕の知らない所で少なからず風評被害的なものが起きている。
その事実を知ることになるのはまだ先のことなのであった。
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