第47話完全休養日のGW

星の観測会が成功に終わり、各学年の雰囲気も良好なものになってから一週間ほどが経過した頃。

世界にはGWがやってきていた。

僕とさらりは久しぶりに完全休養日を取ることにすると二人で街をぶらついていた。

「夏休み以来だね。こうやって無目的にただぶらぶらするの」

さらりは僕の手を握りながら破顔するので僕もそれにつられてしまう。

「三年生になっていきなりトラブルのようなものに巻き込まれて精神的にも疲れたから今日の休養日は助かるよ。思う存分リフレッシュしたい」

「そうだね。今日は邪魔が入らないでほしいね」

「それってなんかフラグっぽくない?」

本日のさらりは完全におしゃれな姿で美少女に変身していた。

冗談めかした会話を続けながら彼女の美貌を目にして心が踊っていると突然後ろから声を掛けられる。

「先輩?」

その声を耳にして僕らは後ろを振り返る。

「やっぱり先輩だ。隣りにいるのは誰ですか?もしかして浮気ですか?」

唐津はさらりの変身した姿を見たことがないのか訝しんだ表情を浮かべていた。

「いや、さらりちゃんだよ」

「え!?学校と全然姿が違うじゃないですか!別人ですよ!」

思わず大きな声を出す唐津に声を落とすようにジェスチャーを送ると彼女は口元を掌で隠した。

「すみません。あまりにも違ったので…つい…」

「唐津さんは一人?買い物か何か?」

その問いかけに唐津は首を左右に振る。

「姫野さんと待ち合わせ中なんです」

「かがりちゃんと?仲良くなったんだ?」

「はい。妹さんが中学生になったばかりらしくて洋服の買い物に付き添うらしいんですが。私も誘われました」

「何で唐津さんが誘われたの?」

「何でも私のセンスを借りたいとか。姫野さんの私服はダサいんですか?」

「全然。普通に学生らしくおしゃれだよ」

「そうなんですね。私の今日の格好はどう思いますか?」

唐津からの急な質問に僕らは彼女の全身コーディネートを確認する。

「可愛いと思うよ」

まずは僕が簡単な感想を口にする。

「うん。甘い系だね。少しだけ幼く見えるけど、そういうジャンルなんだろうし。普通におしゃれだと思うな」

さらりも正直に感想を口にすると一つ頷いた。

「中学生女子の買い物に付き合うわけだから唐津さんのファッションを参考にしたいんじゃないかな」

続けて口を開いたさらりの言葉で納得した唐津は何度か頷いた。

「さらりさんは…何ていうか凄く大人っぽいですね」

「そう?ありがとう」

余裕のありそうな格好に余裕のある発言。

今日のさらりは唐津の目には非常に大人っぽく映ったことだろう。

「私もさらりさんみたいになりたいです」

「う〜ん。唐津さんには唐津さんの武器があると思うけど。得意なジャンルを伸ばしていったほうが良いと思うな」

「先輩は大人っぽいほうが好みなんですよね?」

不意に話題を振られた僕は少しだけ頭を悩ませると口を開く。

「似合っていれば何でも良いと思うな。さらりちゃんは色んなジャンルのファッションをするんだけど…どれも凄く似合うんだ。ファッションのことならさらりちゃんを参考にすると良いよ」

僕の余計な一言が引き金となり唐津は食い気味に口を開いた。

「じゃあ今日も一緒に買い物に付き合ってください。姫野さんの妹の洋服を選ぶの手伝ってほしいです」

「褒めてくれたのは嬉しいけど…雪見くんのせいで折角の完全休養日が潰れそうだよ…」

さらりは嘆息すると少しだけ俯いた。

「先輩。お願いします」

懇願するような唐津に僕とさらりは仕方なく頷くと唐津の提案に応えることにする。

「じゃあ皆でかがりの妹の服を選ぼう」

さらりは仕方無さそうに応えると姫野姉妹を待つのであった。

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