第45話真田ハーレムの仲間入り

カバンを持ってかがりの後を付いていくと生徒会室に入室する。

そこには唐津の姿があり、少しだけ落ち込んでいるような困っているような表情を浮かべていた。

「何かあったの?」

僕の問いかけにかがりも困ったように口を開いた。

「それが…二年生のことなんだけど…」

かがりは問題が起きたことに嘆息すると口を開く。

「二年生の馬場小実ばばこのみって生徒知ってる?」

それに首を左右に振って応えると彼女は説明をしてくれる。

「二年生で一番目立つ女子生徒なんだけど…当然のように彼氏持ちなの」

話があまり見えてこずにただ頷くだけの相槌を打つとかがりは面倒くさそうに口を開いた。

「その彼氏っていうのが唐津さんに一目惚れしてしまったらしくてね…遂にはこの間、直接告白されたんだって」

「彼女がいるのに?唐津さんに告白したの?」

「そう。それで彼氏を寝取られるって思った馬場さんが…ちょっと激しめの注意をしてきたらしくて」

「激しめの注意?」

「まぁ有り体に言えば二年生の女子グループが唐津さん一人を囲んで威圧してきたんだって」

話を理解すると頷いて応える。

「早いこと解決しないとこのままいじめに発展しそうじゃない?」

かがりは心配そうな表情を浮かべていたが、さらりが話に割って入った。

「大丈夫。見た目を変身させて私達と行動すれば良いだけでしょ」

「私達の誰も直接関わりがない二年生にも噂は広がるかな?」

かがりの言葉で僕らは少しだけ思考を巡らせると先程の九条の話を思い出していた。

「そう言えば…天文部が一年生を中心に星の観測会を計画してるんでしょ?それに数名の二年生も参加させるっていうのはどう?会長権限でねじ込むことは出来ない?」

僕の言葉を受け止めたかがりは何かを思いついたようで両手をポンと合わせた。

「天文部の二年生と生徒会の二年生に噂を広げてもらおう。イベントに参加した生徒なら噂もしっかりと信じてくれるだろうし」

かがりの閃きに納得すると当事者である唐津に顔を向けた。

「勝手に話が進んで申し訳ないけど…唐津さんはそれでも良いかな?何というか…その建前として真田ハーレムの一員になるって話なんだけど…嫌だったら言ってね?」

「全然嫌じゃないです!むしろ光栄です!」

唐津は食い気味に言葉を口にして、それを目にしたさらりとかがりは首を傾げた。

「光栄?どういう事?」

さらりが話に割って入るとかがりもウンウンと頷いて話の続きを待っていた。

「中学生の頃から先輩のこと好きだったんです!告白もしたことあるんですよ」

「え?そうなの?」

素っ頓狂な声が出ると失礼な言葉を唐津に投げかける。

「はい。先輩は中学の時から女子に人気だったので毎日のように告白されていましたよね?私もその一人です」

「あぁ…あの頃は他人に興味がなかったから…本当に誰のこともあまり記憶にないんだ。ごめんね」

「仕方ないですよ。数多く告白されていたんですから私のことを覚えていなくても当然です。でも形だけでもハーレムに入れてくれるのであれば…これから私のことも覚えてください」

「わかった。僕なんかのハーレムに入るのは不名誉かもしれないけれど…自分の身を守るためだと思って甘んじて受け止めて欲しい」

「不名誉なんかじゃないです!光栄なことですよ!」

それに数回頷くと僕らには新たな仲間ができる。

「恋人は私だからね?」

さらりは釘を差すように唐津に口を開く。

「友達第一号は私だからね?」

続いてかがりも釘を差していた。

「はい。分かってます。では私は後輩第一号ですね♡」

唐津は満面の笑みを僕らに向けてくる。

彼女らは呆れたように嘆息すると早速行動に移っていた。

「じゃあモブ女子の見た目に変身させるから。明日から自分で出来るようにちゃんと覚えてね?」

さらりは鏡とメイク道具や小物をカバンから取り出すと早速変身の手ほどきを開始した。

「どうにか丸く収まりそうだね」

僕の言葉にかがりは深く頷く。

「私が会長の代で問題が起こったらって思うと夜も眠れなかったよ…」

かがりは完全に疲れ切った顔をしていたが安堵したのか椅子に腰掛けると目を瞑った。

そのまま眠りについたらしく完全下校時間が来るまで僕らは生徒会室で過ごすのであった。

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