第44話星の観測会に参加予定

「一年生の唐津五月雨さん。至急、生徒会室に来てください」

全校放送でアナウンスをしているのは、かがりだった。

早朝の勉強会の時間に決定した話を彼女は早速実行するようだった。

「繰り返します。一年生の唐津五月雨さん。至急、生徒会室に来てください」

アナウンスが終わると生徒は気にした様子も見せずに放課後を迎えていた。

各々が向かうべき場所に向けて歩き出す。

僕とさらりもカバンを持つとそのまま廊下に出た。

「あ…真田くんに副嶺さん。久しぶりだね」

廊下に出ると偶然、同級生の女子生徒と鉢合わせる。

「九条さん。会長選以来だね。久しぶり」

言葉を交わすと九条は僕らに様子を窺うように口を開いた。

「かがりは一年生を呼び出して何を企んでるの?」

どうやらアナウンスの内容をしっかりと聞いていたらしい彼女は僕らに問いかけてくる。

「今、一年生がギスギスしてるんだって」

「あぁ〜。なんか天文部でもその話題でたね。一人の女子生徒を巡って生徒間の関係が最悪なんでしょ?」

「そうそう。だからその渦中の女子生徒を僕らの輪に入れようって話になっていて」

「真田ハーレム?」

「九条さんもその呼び名を知ってるんだね」

「知らない生徒はいないんじゃない?副嶺さんにかがりを引き連れている男子なんて最高に目立つでしょ」

「どういうこと?」

意味が分からずに問いかけると九条は何でも無いように事実を告げてくる。

「副嶺さんは上手く擬態しているけど…ちゃんと見たらめっちゃ美少女って分かるし。かがりは普通に美少女だし。三年生の人気女子二人を引き連れてるんだから真田くんが有名人なのは当たり前でしょ?」

「知らなかった…自重しようかな…」

「いや、その必要はないよ。どちらかと言うと男子生徒は羨ましがっているだけだし真田くんの境遇に憧れているようなものだよ。恨みのようなものは買ってないから安心して」

「そうなんだ。色々教えてくれてありがとうね」

「いえいえ。何か困ったことがあったら言ってね?少しかもしれないけれど力になるよ」

「ありがとう。九条さんはこれから部活?」

「そう。今度、一年生を中心としたイベントを考えていてね」

「へぇ。どんなイベント?」

「夜の屋上で星の観測会を計画してるんだ。生徒会には既に了承を得たから後は中身を詰めていく感じだね」

九条の話を耳にして僕は何度か頷く。

僕らの話を聞いていたさらりはそこで口を挟む。

「それに私達も参加していいかな?」

「え。良いよ」

「ありがとう。件の一年生も連れていくつもりだから。よろしくね」

「分かった。イベントが成功するように頑張るね」

「うん。頑張って」

九条はそこで僕らに手を振るとその足で部室に向かうようだった。

残された僕らは廊下を歩くと放課後の図書室に向かう。

「何か考えがあるの?」

さらりに問いかけると彼女は一つ頷く。

「丁度いいイベントだから活用させてもらおうと思ってね」

「どういうこと?」

「だからそのイベントでその女子を私達が匿っているって見せつけたら、きっと騒ぎは治まるよ」

「真田ハーレムに入ったことをお披露目する的な?」

「そういうこと」

それに納得すると図書室にて放課後の勉強会は始まる。

しばらく勉強に集中しているとかがりが図書室に姿を現した。

「二人共。ちょっと生徒会室に来て」

僕らは顔を見合わせると大人しく生徒会室に向かうのであった。

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