第40話謎のサークルの話

卒業式が過ぎていった週末のこと。

僕は南雲完美に呼び出されていた。

待ち合わせ場所はファミレスだった。

入店して店内を見渡すと先に訪れていた南雲の席に向かう。

「ごめんなさい。お待たせ致しました」

対面の席に腰掛けると南雲はドリンクバーを注文していたらしくコーヒーを飲んでいた。

「いや、私の方こそ急に呼び出してすまない。恋人には叱られなかったかい?」

いたずらっぽい笑みを浮かべる南雲に苦笑すると、

「少しだけ叱られました」

などと冗談めかして言って茶を濁した。

「お昼でも食べながら話をしようか。奢るから」

「悪いですよ…ちゃんと自分の分は払います」

「いやいや。急に誘ったのは私だ。それに頼みもあるんだ。下心があっての奢りの提案だから受け取って欲しい」

「頼みを聞くかは内容次第ですけど…」

「あぁ。それで構わない」

「では大人しく奢られます」

メニューを開くとハンバーグステーキのランチメニューとドリンクバーを注文した。

南雲はチーズをこれでもかというほど使ったエビドリアを注文していた。

ドリンクバーでジュースを注いで席に戻ると南雲は早速口を開く。

「来年の生徒会のことなんだが…」

その話の始まりで僕は少しだけその先を予想することが出来た。

「姫野のことを気にかけておいて欲しい。きっと無理をすると思うから。生徒会長になって初めてのテストで2位になっただろ?あれはもう既に無理をしている証拠なんだ。中学の時もそうだったらしい。前年の会長はいつも私だから無理をしないといけないと思い込んでいるんだ。姫野には姫野の良さがある。あいつは柔軟に物事を考えることが出来る。会長選で学校の動画配信サイトを使って人気を獲得する案も姫野が出したんだ。私は堅苦しいところがあるから頑張ることでしか結果を出せなかった。だが姫野なら柔軟に物事を進めることが出来るはずなんだ。本来の姫野の良さを忘れそうになっていたらアドバイスしてやって欲しい。頼まれてくれるか?」

後輩思いな南雲に思わず感心していると彼女はその隙を突くように続けて口を開いた。

「それともう一つ。君たちは揃って私と同じ進学先に来るつもりなんだろ?」

「はい。まだ勉強を頑張らないといけませんが…本番もまだ先ですし…」

「分かった。もしも入学したら、あるサークルを尋ねて欲しい」

「あるサークル?何故ですか?」

「うん。そのサークルは団員の推薦でしか入ることを許されていないんだ。私も去年の生徒会長に誘われていて既に入ることは決まっている」

「なるほど…。なんというサークルなんですか?」

「クリティカル。多くの芸能人も在籍していた由緒あるサークルだ。ここに所属しているだけでキャンパス内では一目置かれると言われている。必ず尋ねてくれ。これは約束だ」

「分かりました。二人にも話しておきます」

「あぁ。頼む。話は以上だ」

南雲の話が終りを迎えると同時に注文していた料理が運ばれてくる。

それを食しながら僕らは他愛のない世間話をして過ごした。

「私は少し先で待っている。君らよりも少しだけ大人になって来年また歓迎することだろう。再会できるのを心待ちにしているよ」

「えぇ。先輩は大学でもそのカリスマを発揮するんでしょうね」

「どうだろうな。大学には猛者が集まるからな。私とて埋もれる可能性はある」

「そんな姿は想像できないですよ」

「そう言ってくれてありがとう。きっと期待に答えるさ」

そんな会話をしながら食事も終りを迎えると南雲は宣言通りに奢ってくれて店の外に出た。

「私はまだ諦めたつもりはないからな」

意味深な言葉を投げかけられて曖昧に頷くと彼女は何がおかしいのか笑っていた。

「では。また来年に会えることを願っている」

「はい。また来年」

その場で別れを告げるとそれぞれの帰路に就く。

帰宅すると南雲からの話をさらりとかがりにも伝えるのであった。

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