第37話テストと変わりゆく関係性

浮かれていたバレンタインデーも遠い昔のように過ぎていくと期末テスト当日がやってきていた。

「どう?結果出せそう?」

教室の隅で教科書とにらめっこをしている僕にさらりは問いかけてくる。

「大丈夫。今まで沢山勉強してきたから」

「そうね。自信持ってやりましょう」

それに頷くとチャイムが鳴るギリギリまで教科書の内容を確認して過ごすのであった。


「プリントは全て行き届きましたか?届いていない人」

担任教師が生徒に確認を取ると教室中を見渡した。

「問題無さそうですね。チャイムが鳴ったらプリントを表にして始めてください」

そこからしばらくの静寂の後にチャイムが鳴るとテストは始まった。

(ここはさらりちゃんが必ず出るって予想してたところだ。凄いな。ちゃんと言い当てるなんて大事な要所をちゃんと理解してるんだな…。これなら余裕で解ける)

テストの内容を目にして、その様な感想ばかりが頭に浮かんでくるとあっという間にテストを解き終えてしまう。

もう一度見直しをしてミスがないか確認をしていると45分のテストの時間はすぐに終りを迎える。

「やめ。では後ろから回収してきてください」

チャイムが鳴ると担任教師はテストを回収して一度教室を後にした。

次の科目の復習をギリギリまでして過ごすと10分間の休憩時間はあっという間に終わる。

担任教師は再度戻ってくるとプリントを配った。

「では先程同様にプリントは配られましたか?」

クラス中を見渡した担任は一つ頷くと腕時計を確認した。

「後数分でチャイムが鳴るのでそれまでプリントは裏返しておいてください」

少しの静寂の後にチャイムが鳴りテストは再び始まる。

(あ…この公式の展開の仕方はカグヤさんが鍛えてくれたっけ…ノータイムで解けるのはカグヤさんのおかげだな。元気にしてるかな?帰ったら連絡してみよ)

そんなことを思いながらテストを進めていくと終了時間ギリギリでどうにか解き終えることが出来る。

(最後まで見直ししないと…)

そこから出来るだけ速いスピードで見直しを済ませるとチャイムは鳴った。

一日で五教科のテストを一気に終わらせると期末テストは無事に終了するのであった。


放課後のこと。

HRが終わるとさらりは僕のもとにやってくる。

「テストどうだった?」

「自己採点してみないとわからないけれど…手応えは十分にあったよ」

「ホント!?私も!」

二人でキャッキャしていると姫野は珍しく落ち込んだ表情を浮かべて一人で教室を出ていく。

心配に思った僕らはカバンを持って彼女を追いかけると校門を出てすぐの所でやっとの思いで捕まえることが出来る。

「どうしたの?元気無くない?」

さらりの言葉を受けた姫野は情けない表情で弱音を吐く。

「今回は…ダメだったわ…確実に全教科満点じゃない…」

「まだわからないじゃない」

慰めるような言葉を口にするさらりに姫野は首を左右に振って応える。

「いや…分かるのよ。数学の最後の問題が解けなかったから…」

「嘘でしょ?何で?」

「時間配分を純粋に間違えたわ…最終問題は式を展開した所で時間が来ちゃって…答えは空欄で提出したのよ…」

「そう…でもまだ順位はどうなるか分からないでしょ?結果もわからないのに落ち込まない。それに学校のテストは本番じゃないでしょ?大学入試の時には時間配分を間違えないようにこれから鍛えればいいじゃない。私達だって力になるわ」

「副嶺さん…ありがとう…」

今にも泣き出しそうな姫野を見たさらりは困ったような表情を浮かべていた。

本来だったら全力でライバルと競い合った先に勝利を手にするはずだったさらりもこれでは少しだけ肩透かしだ。

例え勝ったとしても素直に喜べない。

初めて姫野にテストで勝ってドヤ顔をするはずだったさらりも今は少しだけ苦々しい表情を浮かべていた。

「お互いに健闘したんだから。落ち込まないで。二人で握手でもしてみたらどう?」

姫野を慰めるように優しい口調で言葉を投げかけると彼女は一つ頷いてさらりに右手を差し出した。

「三年生になってもライバルで居てね…?」

姫野の弱気な発言にさらりは握手を受け取るとそっぽを向く。

「落ちぶれたらライバルだなんて思わないから」

ツンデレのようなさらりの一言で姫野は元気を取り戻す。

「じゃあ切り替えていこう!これから喫茶店で採点しない?」

姫野の提案に僕らは頷くと近くにある静かな喫茶店で採点をして過ごすのであった。

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