第35話完全休養日の遊園地

本日は久しぶりの完全休養日。

三学期が始まってから休日のデートも勉強をして過ごすという味気ないものばかりだった。

しかしながら煮詰まって取り組むよりも時には休みも必要と言うことで久しぶりに外でデートとなっていた。

駅で待ち合わせをするとさらりは約束の時間5分前に姿を現した。

「こんにちは。待った?」

さらりの方を向くと彼女は普段のモブメガネ女子では無く完全におしゃれをしていた。

しかしながら本日はファッションの系統が違うように思えた。

「なんか今日は異常に大人っぽく見えるね…」

そんな感想しか出てこずにさらりに見惚れていると彼女は恥ずかしそうに口を開く。

「最近マンネリ化しているような気がしたから…もっと雪見くんの視線を釘付けにしたくて努力してみた」

「凄く似合ってるよ。普段のおしゃれな格好も好きだけど…今の大人っぽいお姉さんみたいな格好も好き」

「ありがとう。早く大人になりたくて背伸びしているように見えない?」

「全然。本当に凄く似合ってる。かっこいいとかわいいを混ぜて二乗した感じ」

「何その感想…でもありがとう。嬉しいよ」

意味の分からない感想を口にしてもさらりは美しく微笑んで僕の手を握った。

「じゃあ久しぶりにデートを楽しも」

それに頷くと改札を抜けて都心に向かう電車に乗り込んだ。

数十分電車に乗ると目的地の最寄り駅で降車する。

駅に降り立つと目的地の雰囲気がかなり漏れ出ていた。

僕らは本日遊園地に向かっていた。

天気も良好で過ごしやすい日だった。

遊園地の入り口でチケットを買うと入園する。

「まずは何から乗ろうか?」

「えぇ〜っと…ここが良い」

さらりはパンフレットの地図を開くと目的地を指さした。

「じゃあこうやって周っていこうか」

「うん。ここに美味しい食べ物売ってるんだよ。寄って行こ」

それに頷くと僕らは地図の順路に従って目的地を目指した。

途中でさらりが求めていた食べ物の露店に寄ると軽食を取る。

食べ終えるとその足で目的地のアトラクションに向かった。

「30分待ちだって。結構空いてるね」

「そうなの?普段はもっと混んでる感じ?」

「多分。噂では60分待ちが普通らしいから」

「へぇ〜じゃあ僕らはラッキーだね」

そんな他愛のない会話を30分間繰り広げると僕らの順番がやってくる。

アトラクションに乗り込むとそれを十分に楽しむ。

「凄いスピードだったね!浮き沈みも激しくてめっちゃ絶叫した!」

珍しくテンションの高いさらりに頬が緩むと頷いて同意する。

「次はこれ!」

彼女は再び地図を広げると目的地を指差す。

再び園内を歩くと目的地まで向かう。

「ここも20分待ちだって!めっちゃついてる!」

「ここも普段は混んでるの?」

「そうだよ!目玉のアトラクションの一つだから!」

「へぇ〜じゃあ今日は完全にラッキーデーだ」

「ホントそれ!勉強頑張ってるおかげじゃない?」

「そうだったら嬉しいね」

「きっとそうだよ」

さらりは本日の服装を反映するように大人っぽく微笑んだ。

それにドキリと胸が高鳴ると一つ唾を飲み込む。

20分があっという間に過ぎると僕らの番がやってくる。

そのアトラクションも十二分に楽しむと閉園時間がやってくるまではしゃいで過ごすのであった。


「リフレッシュ出来たかな?」

帰りの電車内でさらりは僕に伺うように問いかけてくる。

「凄く出来たよ。次のテストが楽しみ」

「私も。そうだ!次のテストで10位以内に入ったらなにかご褒美上げる」

「ホント?それなら僕もさらりちゃんが1位になったらご褒美上げる」

「ホント?俄然やる気出てきた!」

「お互い頑張ろうね」

「うん。明日からまた勉強漬けだけど…合格するまでの辛抱だよ」

「大学生になっても勉強は続くよ。ゴールはそこじゃないからね」

「よく分かってるじゃん。大学に入っても一緒に勉強しようね」

「もちろん、喜んでだよ」

そんな会話を繰り返すと自宅の最寄駅で降車する。

「送っていくよ」

「ありがと」

さらりの住むマンションまで彼女を送っていくと玄関で別れを告げる。

「じゃあまた明日」

「じゃあね」

その場で別れると僕は何事もなく帰宅する。

自室に入ると思った以上に疲労を感じていたらしくベッドに倒れ込むと翌朝まで眠りこけているのであった。

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