第34話会長選

「ありがとうございました。次の候補者の応援演説に移ります」

本日は会長選当日である。

5,6限を使って応援演説と候補者演説を全て行うと投票の時間になる。

今から南雲の応援演説が始まろうとしていた。

「候補者、姫野かがりの応援演説をする南雲完美だ。話は短く分かりやすいのが一番好ましい。来年の生徒会長には姫野かがりをオススメする。きっと在校生には有意義で自由な学生生活になることを保証しよう。四の五の言わずに姫野かがりに投票を。迷ったら姫野かがりだ。以上で応援演説を終了とする」

南雲は簡潔に応援演説を終えると堂々とした歩き方で壇上から降りていく。

「ありがとうございました。続きまして候補者の演説に移ります」

司会の言葉に従って姫野が壇上に上がると一つ礼をした。

「候補者、姫野かがりです。学校のサイトでコメントなどをくださった全ての生徒に感謝します。動画のように全生徒が自由に楽しく伸び伸びとした学生生活になることを約束します。何か要望があればコメントでも直接でも良いので私に伝えてください。元会長が言うように話は短く分かりやすいほうが良いので、これにて演説を終わります。ありがとうございました」

姫野が壇上を後にすると全ての候補者の演説は終了する。

「これにて候補者演説を終了します。教室に戻り次第、投票をお願いします」

司会の言葉を合図に生徒は体育館を後にして各々の教室に戻っていく。

担任教師が用紙を配ると生徒はそれを記入していった。

姫野かがりと書いてある下の欄に丸を付けると投票箱に入れていった。

そこから6限目が終わるまでは自習の時間だった。

その間に集計を取るらしくふわふわとした空中分解中の前期の生徒会主導で集計は行われた。

「集計が終了しました。掲示板に次期生徒会長の名前が張り出されています。候補者は必ず確認するように」

アナウンスが流れてきて僕とさらりは姫野の席に向かった。

「どうしたの?行こうよ」

さらりが声をかけると姫野は少しだけ震えているようだった。

「なに?怖いの?自信持ちなさいよ」

「だって…落選したら…」

「しないわよ。絶対に大丈夫だから」

ライバルであるさらりから励ましの言葉を貰った姫野は決意したような表情で立ち上がるとそのまま廊下に出た。

僕らは姫野の後を付いていき掲示板がある場所まで向かう。

姫野は僕らよりも少し先を歩いており目的地に到着するとその場で蹲った。

「まさか…落選?」

僕の言葉を隣に居るさらりは受け流すように首を左右に振る。

「違うよ。安心して力が抜けたんでしょ?最近張り詰めていたみたいだし」

「よく見てるんだね」

「当たり前でしょ。これでもライバルなんだから…」

不器用な言葉を口にする恋人を可愛らしく感じると姫野の元に向かう。

掲示板にはさらりの言った通り姫野の名前が張り出されていた。

「おめでとう。会長頑張ってね」

安心したように立ち上がった姫野にエールを送ると彼女は嬉しそうに微笑む。

「会長職が激務だからって成績が落ちないと良いわね」

さらりは不器用な言葉を口にして彼女なりのエールを送る。

「二人ともありがとう。これからも頑張るね」

僕らはそれに頷くと教室に戻っていく。

「今日から生徒会の仕事に取り組まないと…まずはメンバーを決めないとね」

姫野はそれだけ言うと帰りのHRが終わるとすぐに生徒会室に向けて歩き出す。

僕らは図書室に向かい本日も勉強会なのであった。

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