第28話年末年始の予定
お互いに贈りあったクリスマスプレゼントは偶然にも同じものだった。
高価なものではないのだが…マフラーを贈り合い冬の間はそれを着用する予定だ。
そんなクリスマスが過ぎていくとあっという間に年末の慌ただしい状況が訪れていた。
さらりの家の大掃除を二人で行い、この一年間の汚れをきれいにしていった。
「別に手伝ってくれなくても良かったよ?両親も年末は流石に帰ってくるだろうし…二人が掃除するはずだよ?」
「いやいや。毎日さらりちゃんのために忙しく働いてくれているご両親に感謝の意味も込めて…それに勝手にお邪魔しているんだから掃除ぐらいさせてよ」
「私のために働いているわけじゃないと思うけどな…手伝ってくれるのは嬉しいけど…。二人がその感謝を感じるとは思えないんだよね…」
「そんな事無いと思うな。さらりちゃんのご両親だし、きっと優秀な人達だと思うんだ。僕の勝手な理想を押し付ける気は無いけれど…暇を感じることもなく働き続けているのは、さらりちゃんに何不自由感じさせないためだと思うんだよね」
「………そうかな…?」
それに深く頷いて応えるとさらりは少しだけ気まずそうに俯いた。
「大事にされているんだと思うよ。さらりちゃんに興味ないんじゃないと思うな。きっとどうやって娘と付き合えばいいかわからないだけな気がするよ」
「どうしてそう思うの?」
「ん?だって付き合う前のさらりちゃんも不器用な性格していたじゃん」
「どういう意味?」
「わざわざモブ女子に擬態してクラスに馴染もうとしていたし。告白するなら普段通りに美少女の姿ですればよかったでしょ?その方が成功率上がりそうじゃない?それなのにモブ女子の姿でした。きっとさらりちゃんはご両親に似て不器用なんだよ」
「そんなことは…」
さらりは困ったように歯切れ悪く言葉を口にすると続きの言葉を探していた。
「姫野さんに冷たく当たるのも、どうやって関われば良いのか分からないだけだと思うな。今はライバルって関係に落ち着いているけれど…いつかちゃんと友達になれたら良いね」
「………もう良いから掃除しよ」
さらりは話をぶった斬ると掃除道具を持って各部屋の掃除に取り掛かった。
僕も普段はあまり掃除のしない箇所を中心に徹底的に汚れを落としていく。
ほぼ半日の時間が経過したときに大掃除は終了してリビングのソファで寛いでいた。
「そう言えば…大晦日から正月にかけて僕の家で過ごさないかって両親がさらりちゃんを誘っていたけど…どうする?」
「うーん…何ていうか…さっきの話を聞いて自分の両親と過ごそうかなって思ってる」
「分かった。じゃあ時間が出来たら連絡してよ。年末年始はそれぞれの家族と過ごすとしよう。また三学期になったら勉強の面倒を見てください」
「何言ってるの?勉強は冬休み中も続くよ?」
「え?でも家族と過ごすんでしょ?あぁ…そっか。勉強は一人でも出来るもんね」
納得したように頷いて応えるとさらりは首を左右に振る。
「違うよ。夜は時間が空くだろうから通話しながら勉強しよ?ちゃんと教えるから」
「あぁ…良いの?」
「もちろん。私だって冬休み中ずっと雪見くんと話が出来ないのはキツイし…」
「ありがとう。じゃあ早速今日の夜からお願いできる?」
「もちろん」
さらりはそれに笑顔で応えてくれる。
大掃除に時間を割いていたため街には夜がやってきていた。
「そろそろ帰るね。また後で連絡する」
別れの言葉を口にするとさらりの家を出て帰宅するのであった。
もちろん帰宅して夕食を取り、風呂に入った後にさらりと通話をしながら勉強に励むのであった。
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