第26話クリスマス会は無事終了する

12月23日の昼頃から主催者側の高校生は体育館に集まっていた。

ケータリングが届くのは17時ごろ。

飲み物やケーキの類も同時刻にやってくる。

各役割の最終確認を南雲が一人で行うと時間はあっという間に過ぎていく。

17時に食事などが運ばれてきて僕らはそれらを机に配膳した。

18時に小学生が集まるとクリスマス会は始まるのであった。


クリスマス会が始まって一時間ほどで小学生は食事を済ませて手持ち無沙汰の様相を浮かべていた。

予定通りの進行でクイズに突入して少しずつ時間は経過していく。

「では最後にこの大きな体育館全体を使ってフルーツバスケットをします」

南雲の進行により小学生は椅子を円形に広げるとゲームは始まった。

始まって数分でトラブルは起こる。

「ぼくのほうがぜったいにはやくすわっていた!」

「わたしのすわっているめんせきのほうがおおきいもん!」

小学生同士のトラブルに僕らは準備していた文言を口にする。

「意見が噛み合わない場合はじゃんけんで勝敗を決めてください」

南雲の言葉に仕方無さそうにじゃんけんで勝敗を決めた小学生たち。

そこまでは良かったのだが負けた方の女の子が泣いてしまい進行が滞りそうだった。

子供が苦手な南雲はたじろいでしまい、あやす言葉を持ち合わせていなかった。

そこに颯爽と姫野が向かうと女の子を一生懸命にあやしていた。

「大丈夫だよ。こっちおいで」

女の子の背中に手を添えて目線をあわせる姫野はそのまま彼女を体育館の隅に連れて行った。

姫野は女の子と何やら話をすると彼女は急に笑顔になって泣き止んでいた。

それを不思議に思ったが、まだゲームは続いていた。

「それでは決勝に残った二人には嬉しい知らせがあります!優勝者には景品がありますよ〜!是非優勝目指して頑張ってください!」

そして音楽が流れてきて優勝をしたのは女の子と言い争っていた男の子だった。

少しのトラブルはあったものの概ね予定通りにクリスマス会が終了すると高校生は片付けを済ませて打ち上げ会場に向かった。

「そう言えば…あの女の子をどうやってあやしたの?」

僕は姫野に問いかけると彼女は何でも無いように口を開く。

「言い争っていた男の子がきっと優勝するよ。その男の子に殆ど勝っていた君が本当の優勝だね。とか言ってあやしてただけだよ」

「へぇ〜。凄いね。素直に感心した」

「まぁ。私は長女だから」

「兄弟居るんだ?」

「居るよ。普段は甘えられないから副嶺さんに甘えてしまうのかも…」

「そっか。思いの外にも可愛らしい理由だね」

「か…かわいい…?」

姫野は急に顔を赤くさせるともじもじと俯いていた。

理由は分からなかったのでそれ以上口を開くこともなく打ち上げを楽しむ。

「本日のクリスマス会で私の生徒会長としての仕事は終わります。クリスマス会が大成功して私も満足でした。後任の生徒会長に期待しながら私はこれから受験を頑張ります。では本日は解散です。今までありがとうございました」

僕らは拍手をすると会長を見送るのであった。


打ち上げが終わり店の外に出ると南雲は誰かを待っているようだった。

「ちょっといいか?」

それは思いの外にも僕だったらしく彼女の言葉に頷くと後をついていく。

「良い働きぶりだった。時期会長に立候補する気はないか?」

「僕がですか?」

南雲はそれに頷くので僕は首を左右に振って応えた。

「僕よりも姫野さんを推薦してください」

「お見通しだったか…。君はそれで良いのか?会長になれば内申ももらえるぞ?」

「いえ。僕は勉強に集中する必要があるので遠慮します」

「進路は決まっているのか?」

「はい…」

そう言うと僕は進学希望先を口にした。

「なんだ。私と姫野と同じ進学先じゃないか」

「そうなんですか?まぁ二人ほどの学力があれば余裕だと思いますが…僕はまだまだなので三年生になったら勉強三昧です」

「そうか。では推薦は姫野にするとしよう。急な話だったのに手伝ってくれてありがとう。何か礼をしたいのだが…」

「そんな…。大丈夫ですよ」

「だがそれでは私の気が済まないのでな…」

南雲は少しだけ困ったような表情を浮かべるとカバンの中に手を入れた。

そしてそこからきれいに包装された箱の様な物を取り出すと僕に差し出した。

「ではクリスマスプレゼントと言う形で受け取ってくれ。ただの菓子だが…世話になった。ありがとう」

僕はそれを受け取るとカバンにしまった。

「僕の方は用意がなくて申し訳ありません…」

「いいんだ。私の感謝の印だから。ではまたな」

南雲はそれだけ言い残すと帰路に就いた。

僕はそのままさらりの家に向かうと恋人同士が愛を育むクリスマスを迎えようとしていた。

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