第22話修学旅行

修学旅行当日がやってきていた。

僕ら生徒は一度学校に集合するとレンタルされた大型バスに乗り込んで空港に向かう。

「お願いだから三人掛けで座れる席を選んで」

姫野は僕らの顔を交互に見ると懇願するように口を開く。

「はいはい。最初からそのつもりだから。心配しない」

「なんだか最近優しいわね…なにか企んでる?」

さらりの答えを耳にした姫野は訝しんだ表情を浮かべていた。

「そういう事言うなら二人掛けの席に座るよ?」

「うそうそ!珍しいことが起きたから驚いているだけ」

「まったく…他人の善意はしっかりと受け取りなさい」

「急に大人ぶらないでよ…」

何でも無い会話を繰り返しながら三人掛けの席に腰掛ける。

生徒が全員着席をして点呼が終わるとバスは発進した。

朝早くからの集合だったため空港まで寝て過ごすと思った以上に早く目的地に着く。

そこから飛行機に乗り込んで修学旅行先に到着すると一度ホテルに向かう。

荷物を置くと貴重品を持って再度外に集合だった。

「ではこれから自由行動ですので班で固まってください」

担任の言葉に従って僕らは三人で固まっていると姫野はワクワクしたような表情を浮かべていた。

「旅行って幼い頃以来なんだ」

「私達はこの間したよね?」

「地元でだけどね。擬似的旅行だったけど」

三人ともそれぞれに口を開くと、ここから起こることに胸を高鳴らせていた。

「じゃあこれから班行動ですのでしっかりと班で行動してください。17時までにはホテルに戻ってくること。それでは解散」

生徒はそれに返事をするとその場で解散をする。

「まずはお昼からにしよ」

さらりの提案に僕らは昼食の内容を考えながら街をぶらつく。

そこで僕は行き先の近くにある海鮮のお店を口にすると彼女らは賛同してくれる。

バスに乗り込むと目的地まで急いだ。

お昼に海鮮丼を食べると満足したまま行き先に向かった。

そこら一帯の旅行地を巡るとあっという間に時間は迫ってくる。

「楽しい時間はすぐに過ぎるね…」

さらりの寂しそうな表情を目にして僕は軽く微笑んで口を開く。

「いつかまた来よう」

「そうだね。またいつでも来れるよね」

僕らの会話を耳にしていた姫野は少しだけ不機嫌そうに唇を尖らせていた。

「いいわね…二人は…恋人同士だからそんな約束もできて…」

「姫野さんもいつかできた彼氏と来ればいいでしょ?」

「私にそんな人出来るかな…」

「出来るでしょ。姫野さん美人だし」

「そう…なの?」

「無自覚って言うのが一番質悪いわね」

さらりは嘆息すると僕らはホテルまで戻っていくのであった。


ホテルに戻るとすぐにお風呂の時間がやってきて男女分かれて温泉に向かう。

その後は夕食の時間。

各自の部屋で消灯時間まで騒いで遊ぶ。

自由時間の間、僕とさらりは二人で星を眺めていた。

「なんか夏休みのこと思い出すね」

さらりは干渉に浸っているのか過去を懐かしむような表情を浮かべていた。

「まだそんなに過去のことじゃないよ」

「そうだけど…あの日々は楽しかったから」

「また来年もあるかもよ?」

「かも?私達が別れるかもしれないってこと?」

「そうじゃなくて。僕の両親がまた帰省するかもしれないし。さらりちゃんの家にお泊りにいけるかもしれない。ってこと」

「それもそうだね。来年を楽しみにしよ」

それに頷き手を繋いだまま夜の自由時間は過ぎていく。

消灯時間に各自の部屋で眠りにつくと翌日はお土産を買って空港に向かうだけだった。

一泊二日の修学旅行が終了すると翌日は振替休日だった。

その間も僕らは勉強をして過ごすのだが…。


振替休日が明けた翌日からのんびりとした平和な時間が崩れそうな音が聞こえてくるのであった。

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