第19話文化祭準備期間
現在は文化祭準備期間に入っていた。
体育祭がないことに不平不満を口にしていた陽キャたちも男女共同で作業のできる文化祭準備期間を楽しんでいた。
「なんだかんだ落ち着いたね」
僕とさらりは宣伝係なため現在は二人でポスターの制作中である。
「そうだけど…未だに根に持ってる生徒は居るんじゃない?高校生のイベントで体育祭がないっていうのは少し珍しいんじゃないかな?」
「そんな事無いでしょ。母さんが勤めている学校では体育祭がない代わりにマラソン大会があるらしいよ。しかも10kmも走るんだって。想像しただけで吐き気がする」
「それは…楽しくないね」
「それに比べたらうちの学校は良いほうでしょ?代替案として文化祭の日数まで増やしてくれたし」
「それはそうだけど…やっぱり体育祭は楽しみだったな」
「そうなの?なんで?」
「ん?雪見くんの活躍する姿を見たかったから」
「あぁ…ありがとう」
二人でポスターのアイディアを出し合いながら途中途中に他愛のない会話を挟んでいた。
「看板も作るんだっけ?」
「そうそう。文化祭中はそれを持って校内を歩くんだよ」
「僕らに自由時間はないの?」
「いや、その仕事自体が全部自由時間みたいなものらしいよ。好きなところに行って文化祭を楽しんでいいらしいし」
「そう言えばそんな話も出てたっけ。役割が決定してからは、その後の説明を聞いてなかった」
「聞いてなかったの?自分の仕事なのに?」
「あぁ…参考書を開いてた…」
「そうなの?偉いじゃん」
「勉強は多少不得意だから。理解するまで他の人より時間がかかる」
「そう。わからないところがあったら教えるね」
「ありがとう。その時はお願いね」
ポスターを制作しながら文化祭マジックでも何でも無く僕らの他愛のない会話は続いていた。
「カップルで同じ仕事に就くなんて…イチャイチャしないで」
それを邪魔してきたのは、いつも通り姫野だった。
「また出たよ…」
さらりは困ったような表情を浮かべると文句を垂れた。
「人を不審者か幽霊みたいに言わないで!」
「不審者みたいなものでしょ。私達の居るところにいつも邪魔しに来る」
「邪魔なんてしてない!注意しに来たの!」
「注意?なんの?」
「イチャイチャしてるから!仕事に集中して!」
姫野の言葉を耳にしたさらりは丁度出来上がったポスターを彼女に見せる。
「これ見てもイチャイチャしていただけに見えるの?」
「それは…もう完成したの?」
「一応ね。会話しながらでも手は動かせるし」
「そうだけど…」
「あぁ。そっか。姫野さんは彼氏居たこと無いから経験ないもんね。ごめんね?分からない話しして」
さらりの嫌味を耳にした姫野は泣きそうな表情を浮かべるといつものように泣き声を上げて教室を後にした。
「いつも通りだけど…姫野さんを敵視し過ぎじゃない?」
「そんなことないよ。不穏分子は排除しないと」
「不穏分子?ライバルでしょ?」
「同じようなものなの」
「僕になにか隠してない?」
「そうだとしても知る必要はまるでないよ」
「そう。じゃあいいけど。次は看板作らないと」
「そうだね。ダンボールもらってくる」
そこから僕らはダンボールにクラスの催し物の内容と案内を記載して、それを完成させるのであった。
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